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小川洋子・堀江敏幸『あとは切手を、一枚貼るだけ』を読んで

読んだら余韻に一晩浸れそうな幻想文学作品でした。

視力を失ってしまった少女と、研究家の男性。二人はお互いにお互いにしかわからない言語で文通をして、距離を縮めていく。その二人は「会う」ことよりも、思い出を共有したり、今自分が感じ取っている何ものかを伝えあうことでつながっていた。

このあらすじではまだまだ面白さが伝わりにくいんですが、

この小説、手紙文体で書かれているんです!!!

本当に、二人の手紙を盗み見てしまったような罪の意識もありながら、二人の文通の中身を読み取っていく。

女性パートを小川洋子さん、男性パートを堀江敏幸さんが書かれていると思うのですが、私が読んできた小川さんの作品のキーワード「まぶた」「ことば」「鋏」「鳥」も重要な要素を持ってきていて、とっても面白かったです。

手紙って本当は、誰しもが誰かに書きたいんですよね。

今はラインもあるし、他のSNSもメールもあるから、簡単にコミュニケーションできるけど、それがもう短い短い手紙のようなものだと思うんです。だからこそ人はSNSの投稿を誰かの一人語りとして読むし、一番手紙に今近いのはメールになってしまいましたね。

早さとか、既読してからの返信を気になる気持ちは本当によくわかるんですが、結構文通もいいものだったりします。いつ返ってくるかわからない手紙。もしくは、届いていないかもしれない手紙を書き続けること。

もしかしたら、それが小説や詩という文章なのかもしれません。

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