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自分の言葉で好きな作品の感想を述べるコツ~読書・恋愛・パートナーシップ①(三宅香帆さんゲストイベント書き起こし)

※この記事は文化系のためのオンラインマッチングサービス「猫Match!」のトークイベント『読書・恋愛・パートナーシップ』(ゲスト:三宅香帆さん)より、一部を書き起こしたものです。

語り手:三宅香帆(書評家)
聞き手:あじさい(文化系恋愛アドバイザー/猫Matchマネージャー)
    マヤ@文学淑女(猫Match!スタッフ)



【はじめに】

マヤ:それでは、三宅さん、よろしくお願いします。

三宅香帆(以下三宅):三宅香帆と申します。普段は私は書評家・批評家・作家として活動していて、本を書くことを中心に、本を紹介するようなコラムだったり、記事を書くことが多いです。
普段は読書についてや文章の書き方を中心にお話させていただくことが多いので、今日もそういう話からパートナーシップの話に繋げられたらいいなと思います。よろしくお願いしいたます。

マヤ:ありがとうございます。本日は特別に、私たちの恋愛マッチングイベントで使っているプロフィールカードを三宅さんに記入していただいております。

【三宅香帆さんのプロフィールカード】


猫Match!の読書会やコミュニティで使われているのとほぼ同一のものです!


あじさい(以下あじ):あなたを構成する 5 つの作品という、これが猫Match!のイベントでの特徴的なプロフィールカードの項目になっているんですけれども、これは骨身になってるっていうか、すごく自分に影響を与えてるっていう意味で「構成する」5つの作品なんですよね。

マヤ:はい、ではこちらを元にいくつかお聞きしていきたいなと思います。5つの作品に選んでいらっしゃる『なんて素敵にジャパネスク』という作品なんですけれども、こちらを選んだ理由のところに主人公の明るくざっくらばらんとした性格が好きって書かれているんですけど、三宅さん自身も主人公のような性格に近いんでしょうか?

三宅:全然近くはそんなにないんですけど(笑)憧れているって感じですかね? ずっとそんなに近くないから逆に憧れちゃうのかもしれない。

マヤ:性格に関してなんですけれども、続いている質問として、より深い関係になるとしてあなたについて相手が知っておくべき重要なことはっていう項目もあるんですが、こちらでご自身を「頑固で自我が強いという」風に表現されていらっしゃるんですけれども、具体的なエピソードはございますか?

三宅:会社員を去年の夏までやっていたんですけど、新卒一年目の時に部長から「自分は新卒一年目でこんなしっかりしている子今までで初めて見た」みたいなことを言われたりとか、友達からも「こんなに頑固なやつ見たことない」とか言われるので…たぶん私、今はそうでもないかもですけど、昔はとくに結構見た目がふわっとして見られがちというか、ぼんやりした感じの雰囲気なので、思ったよりでも頑固みたいなのが、わかってもらえなそうみたいのは、あります。

あじ:ギャップがあるっていうか。

三宅:そうですね。

あじ:三宅さんのパートナーの理想の関係「いいことがあった時にお互い褒め合えて、いやな気分になった時にお互い尊重しあえる関係(この両立って難しい)」とあるんですけど、両立が難しい。本当にそうですよね。

三宅:認められるって結局お互い興味を持ってるって事だから、嫌な気分になった時に干渉しやすくなると私は思っていて。逆に、なんか嫌な気分になった時お互い尊重し合える仲っていうのは、やっぱある程度ドライじゃないですけど……嫌なことあった時に距離を取ろうみたいに冷静に思えるのは、逆にいいことも気づいてもらいづらいみたいなところもある気がするので、両立が難しいと思っております。

あじ:今まで読まれてきた作品の中で、理想のパートナー像みたいなカップルが登場する作品ってありますか?

三宅:なんていうんですかね、この二人を見てるのがすごい好きみたいなのいっぱいあるんですけど、じゃあいざ自分がそれになりたいかって言われるとまた違うなと思って。なんかそこが難しいなってすごい思います。例えば『鋼の錬金術師』ってあの有名な漫画で、私はあの中尉と大佐の関係が超好きなんですけど、読んでない人には全くわからない…(笑)ロイとホークアイっているんですけど、二人みたいになりたいかって言われると、いやあんな戦場で出会いたくないという気持ちでいっぱいになるので、その辺が難しいですね。

あじ:例えば『きのうなに食べた?』とかでもシロさんとケンジの関係をすごい良いと思うんだけど、でも自分がシロさんだったとしてケンジを受け止めきれるかという。

三宅:そうそうそう。ケンジみたいにあんなに優しくもなれない気がするみたいな。そういう意味で難しいですよね理想って。

マヤ:今夢中になっているもののところに「仕事を頑張っています」という風に書いていただいてるんですけど三宅さんの著書の『人生を狂わす名著50』を読んでから私自身すごく三宅さんのファンになってしまって、連載中の記事とかも読ませていただいてるんですけど、結構読むのが追いつかないぐらい連載をいくつも同時に書かれていらっしゃって精力的にお仕事されてるんだなっていうのが伝わってきます。
東洋経済オンラインの名著連載もすごく面白くて、先日アップされた更科日記の回で書かれている女性キャリアの壁の話は本当に現代にも通じるテーマなので皆さんもまだ読まれてなかったら是非読んでみてもらいたいなと思ってます。

あじ:Twitterで今回は「恋バナ読書術」についてお話してもらえると伺いました。

三宅:ふふふ。友達と恋バナするのは大好きなんですけど、なんか公の場で話す機会って何もないので発散して今日は帰ろうと思います。


【花恋は同業者恋愛カップルの話?】

マヤ:それでは早速なんですが、三宅さんの恋愛&読書遍歴の中で、いかにも文化系らしいなーっていうエピソードってありますか? 例えばですけど、読書を好きな男の子に恋をした経験とか。

三宅:それでいうと私は同類を全然好きにならない人で。世の中には二種類いると思ってるんですけど、同業者と恋愛する人か同業者以外と恋愛する人かには分かれると思ってるんですよ。そういう意味で私は同業者には絶対恋しないタイプで。
なんでかって言うと、例えば読書好きだったり文化系の男の子だと自分が張り合っちゃうし自分の方が上だと思っちゃうんですよね。なのでそういう意味では絶対自分ができない理系とか、あと音楽系とか芸術系とか。絶対自分にできない分野の人を好きになるので、あんまり文化系女子エピソードはないかもですね…。本好きでとかすごい憧れるんですけど、映画の『花束みたいな恋をした』とかもああいうそのあれこそ同業者恋愛カップルなので、ああいう話に思い出がある人ってなんかいいなと思うんですけど、全くないんですよ…。

あじ:あの映画を見て死にそうになる人とノーダメージの人とくっきり分かれますよね。

三宅:分かれますよね! 私だったら一瞬で麦くんと別れてしまうと思って、仕事うまくいかなくなった時余計なアドバイスして一瞬で終わりそうと思いながら(笑)

マヤ:今の『花束みたいな恋をした』の例を挙げて『労働と読書は両立しない?』って記事も書かれていて、それもすごくわかるって思いながら読ませていただきました。

三宅:あの記事はすごく反響があって。私が最近書いた労働と読書の近代史を読むって副題がついた中のひとつなんですけど、「なぜ働いていると人は本を読めなくなるのか?」っていう。猫Match!の参加者さんにももしかしたらいらっしゃるかもしれないんですけど、そういう私も思ったことがある謎で。『花束みたいな恋をした』を見た時に、その主人公が働いてると本読めないってなるシーンがあって、そこにみんな反応してたのを覚えているんですよね。

あじ:パズドラしかできない。

三宅:そうそうそう。菅田将暉さんが死にそうになりながら会社で残業しつつパズドラをやるっていう シーンがあって、すごいいいシーンなんですよそれがね本当に…。
私ちょっとだけ用意してきたスライドがあるのでつけてもいいですか?


【自分の言葉で好きな作品の感想を述べるコツ】

1.自己紹介&「好き」を書く方法
2.伝わる文章の書き方
3.質疑応答

三宅:今回何話そうかなといろいろ考えて思ったことがあって、何かっていうと好きな作品の感想を述べるコツっていうのは割とよく喋ってるんですよ。それは自分が好きな本とか好きなものについて文章を書くことが多くて、その文章を書くときのコツみたいなのは喋ることがあるんですけど、それをいろいろ考えてると結構これはパートナー探しにも通じるのがあるのでは? とちょっと思ってて。その話をさせていただけたらなと。もし質問なりあれば途中でぜひ茶々を入れてください。

私は全然パートナーシップの専門家ではないので、そこについては話半分で聞いていただいて(笑)文章のことはいろいろ喋れるのでみなさん持ち帰っていただけたらいいなと思ってて。私の今日のまとめ的には好きなものについて文章を書くっていうことと好きな人を見つけてアプローチするって案外似てるプロセスなのではと思っていて。なので、今日はその話をできたらなと思ってます。

多分私のことを知らない方もいっぱいいらっしゃると思うので、ちらっと説明するとこの『人生を狂わす名著50』ってさっき紹介してくださった本でデビューをして、では いろいろ本を出していて。その本っていうのが表紙を見たらわかってもらえるかもしれないんですけど、「本についての本」だったり、 結局は割とこう”好き”について語る本っていうのが多いんですよね。で、そういう自分が文章を書く上で大事だよなと思ってる三原則っていうのがありまして。それが何かっていうとですね。

・「好き」の深堀りをする
・「好き」の具体例を挙げる
・「好き」を伝える文章術を使う

深堀りをして、かつ具体的に考えてから文章に落とし込むっていうのがすごい大事だなっていう思っていて。 かつ自分の中の好きなものとか感情とかの理由だったり、その具体例っていうのが深掘りされてないうちから文章を書いてもやっぱりわからない、上手い文章が書けないなと思っていて。そういう意味好きを伝える上でこの三原則が大事かなと思ってるんですね。具体的なことは後でお話するんですけど、このなんか三つのプロセスを考えると割とパートナー探しにもこの三つのプロセスが使えるんじゃないかなとちょっと思ったんです。

あじ:これって恋愛でしてることと同じ。

三宅:そうそう! 私自身はがっつり婚活した経験はないんですけど、友達が最近やっぱりアラサーなのでアプリだったりパートナー探しっていうのを結構やってる子が多くて。でそういう子の話を聞くと、自分が好きな本に出会うためにやってることと割と似たところがあるなっていうのを思ってるんですよね。

あじ:どの本についてどう文章にするとか、どんな人を深掘りするとかもそれを選ぶことからまず始まってるし。

三宅:そうです。だし、好きな本に出会う感度っていうのを上げていかなきゃいけないわけじゃないですか。そう考えるとやっぱり、好みのパートナーだったり相性のいい人と出会うっていうこともあんまり違わないのではって。言ったら本と人を一緒にするなって怒られそうなんですけど(笑)でもそれはちょっと自分的には思うんですよね。じゃあ私が普段どうやってるかっていうのを話せたらいいかなと思うんですけど、私は結構やっぱり「なんか好き」っていうと、じゃあなんでそれが好きなの? って聞かれても「なんか好き」しか答えられないみたいな時ってやっぱりあるんじゃないかと思っていて。でもやっぱり「なんか好き」の理由をちゃんと自分の中で言語化して落とし込むって作業が自分でも好きだし、やっといた方が良かったなっていうのはすごくあるんですよ。

で、その言語化っていうのをどうやってしたらいいのかっていうのを考えてみると、やっぱりまず一つは自分の体験と紐付けるのってすごい大事だなと思っていて。例えばさっきの場合は映画ですけど、『花束みたいな恋をした』っていう映画がすごい好きだった・刺さった時、何で刺さったのかって考えるとやっぱり同じように文化系の男の子と恋愛した過去があったからだとか、逆に私はなんか恋愛パートじゃなくてあの労働に打ちのめされてるところに共感したんだとか、自分の中で原体験となるようなものっていうのがあったりすることが私は多いなと。やっぱり特に刺さったもの、すごく好きだって思ったものについてはそう思っていて。
そういう意味ではさっき私が挙げた『なんて素敵にジャパネスク』がすごく好きって思ったのも、主人公が自分にとっての中高時代憧れてた女の子像みたいなものに近かったんだなっていうのがやっぱりあって。
そういう意味では自分の体験と紐付ける、照らし合わせてなんで好きかっていうのを考えるっていうのは案外大事かなと思っております。

あじ:「重ね合わせる」場合と「重ね合わせたい場合」とが多分あるから。『なんて素敵に~』なら重ね合わせたいっていう感じ。花恋だったら「重ね合わせる」って感じですよね。

三宅:そうですね。そういう部分を見つけることによって逆にここが好きなんだって言語化できるとかもやっぱりねあると思うんですよね。

あじ:自分の中にあるものと共鳴する。

三宅:元々持ってたものと共鳴って感じですね。

【好きの深堀りをする】


もう一つは、すでに好きなものとの共通点を探すっていうのも結構あるなと思っていて。例えばハガレンだとロイとホークアイのカップリングが好きみたいな。で、なんで好きなんだろうって考えた時に、あっ私の好きなあのカップリングと似てるじゃんみたいなことって考えてみたらあると思うんですよ。好きなパターンってやっぱり人によってそれぞれあると思うので。私の場合はなんか知らんけどこういうパターンが好きだなみたいな。とくに自分の中に現体験とかがあるわけじゃないけど、なんかこの構図が好きなんだとか。こういう話が好きなんだとかこういう時代のものが好きなんだとか。そういう共通点を探し出すことによって自分の好みの言語化ができるみたいな体験って、考えてみると思い当たることがあるんですよね。なので、自分の中に共鳴するものがなくても自分のすでに好きなものとの共通点っていうのも言語化の手かなというふうに思っております。

なので、そういう意味ではこれは読書についての言語化の話をしたんですけれども、パートナー探しにおいてもやっぱり好きの深掘りをした方がいい点は同じかなと思ってて。私はやっぱり言語化がすごく好きなので、能動的にじゃなくてもしちゃう方なんですけど、そうじゃない人も一回ちょっと自分の好きを深堀ってみるとか。結構あるあるなのが、「こういう人を好きになりがち」みたいな好みまでは見つかったけど、じゃあなんでかっていうの考えてみると意外とその親との関係に似てて、でもなんかそれって結局自分が慣れた関係に心地よさを見出してるだけだから、別にそのパターンじゃなくても好きになる関係性はあるんじゃないかみたいなことを友達と結構しゃべったりとか、案外そのなんか知らんけど今気づいたけど私こういう人好きになりがちだわみたいな、そういう言語化することによる気付きって女の子だったら友達と喋ってる中であったりとかする気がするんですけども、男性だともしかしたらそういう好みの言語化みたいなのをそもそもする機会が少ないのかなとか男友達と喋ってると思ったりするので。

あじ:表面的なことしかなぞらなかったりとか。

三宅:ね、なんか顔の好みは喋るがみたいな(笑)

あじ:根本的な、なぜその人のことを好きになるかっていうのは自分自身のことを掘らなきゃいけないことでもあるから、 男性は結構それは苦手な感じがしますね。

三宅:苦手というよりは、機会がやっぱり少ないんじゃないかなと思うんですよね。男女ではっきり最近は全然分けられるもんじゃないですけど、少女漫画と少年漫画とかもやっぱり、少年漫画はずっととにかく強くなるみたいな世界観だったり…今のはちょっと違うけど、昔の漫画とか読んでると特にそうだったり。少女漫画は逆に相手との関係性をひたすら深掘っていくみたいな漫画が多かったりとか傾向としてあるじゃないですか。

あじ:少年漫画は結構直線的にいくけど、少女漫画は円形でぐるぐる回りながら進んでいくみたいな感じですよね。

三宅:そうなんですよね。最近スラムダンクの映画を見てめっちゃそれを考えて。スラムダンクとか読んでるともうなんかこういう世界観で中高生男子って生きてるんだみたいな。とにかくどうすれば強くなるかしか考えてない。桜木花道が何で俺はバスケが好きなのかとか考え出したら終わりじゃないですか(笑)でもパートナー 探しっていうのをやってると、一瞬立ち止まってなぜこういう感情になったのかとかこういう関係性が心地いいと感じるんだみたいな言語化って、やっぱりやっといた方が後々困らない気もするので。

あじ:「なぜ自分はパートナーが欲しいと思うのか」とか。

三宅:そうですね。そこからの言語化も必要かもしれない。
そういう意味ではさっき言ってた自分の中の原体験だったり、あとすでに例えば昔好きだった人とか、なんとなく好きな漫画のキャラとかと共通点を見つけたりとか、でちょっとずつ言語化していくみたいなのって案外大事かもなあと思ったりしますね。

あじ:子供の頃に最初に読んだちゃんとした小説が村上春樹だったからそのあとアメリカ文学を好きになるとかつながりが出てきますよね。

三宅:そういうのなんですよね。というわけでなんか結構大事かなと思ったりした話でした。

<続きます!>

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(猫Match!もどうぞよろしくお願いします)

<8月のマッチング読書会>
8/9(水)39歳以下限定 青山美智子『木曜日にはココアを』
8/18(金)45歳以下限定 稲田俊輔『食いしん坊のお悩み相談』


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