「ベルリンは晴れているか」を読んで
冒頭の一文がまずかっこいい……(うっとり)。
書店で表紙の少女に惹かれてから早数年。ヒトラーの言葉「パリは燃えているか」と対になっているのであろう題名も気になっていた。
noteで作者の深緑野分先生が取材写真をアップされていて、参考にしながら読む。
恩人の甥を探して旅をするアウグステ。道中、さまざまな立場の人たちと出会い、行動を共にする。ドイツ人だけでなく、ユダヤ人、敵国だった人間も、みんな思い出したくないような過去を背負って生きている。
物語はアウグステが甥を探す戦後のパートと、幕間と題された主に戦時中のパートが並行して進む。アウグステが大切な人を次々に失う幕間のパートから戦後に切り替わると、ベルリンの街や人は大きな傷を負っているものの、これ以上彼女が大切なものを失わなくて済むかもしれないと思いホッとしている自分がいた。
作中にはベルリンの集合住宅が登場するが、国は違えど、ロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテインの『話の話』という作品を思い出した。(『話の話』にはロシアの集合住宅や、徴兵など戦争を想起するシークエンスが登場する)。どういう理由であれ戦争のように大勢の人間が、殺しい憎み合うことは本当にしんどい……。
個人的にはウーファ撮影所で、ドイツ人のアウグステ、元俳優のジギと映画の音響技師ダニー、ソ連NKVDのベスパールイ下級軍曹が一緒に撮影所のモノクロ写真のアルバムをめくるシーンが好きだった。
昔、旅行でドイツ、ロシアを少しだけ旅したけれど、読書は旅に似ているなと思う。テレビの映像だけじゃ分からないことは沢山ある。例えばロシアを旅行中、アジア人である私に中指を立ててきた少年もいれば、こちらが恐縮するほど親切に道案内してくれた老婦人もいた。どの国にも親切な人、不親切な人はいるし、どんな人も両方の性質を持っている。戦争のような状況はそういったものを乱暴にかき回してしまうのだろう。
深緑野分先生、いつかロシアの小説も書いてくれないかナ……。
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