極東から極西へ25:カミーノ編day22(Leon2日目)
前回
レオンはお祭り真っ最中。
初めて2日間滞在することにして、1日目はお祭りを楽しむことにした。
前回
今回はレオン2日目。
大聖堂を観に行くぞ!
・レオンで朝ごはん?
偶にはこちらからと、カリマさんを大聖堂に誘ってみる。すると「勿論いいわよー!」とお返事が。その後、オーストラリアのエンジェルも交えて三人で朝ご飯にしない? と誘われた。
カリマさんのアルベルゲで合流してから、街を少し歩いた。エンジェルが昨日買ったケーキがあると言って、彼女のアルベルゲに取りに行ったりした。
再びカリマさんのアルベルゲに到着。
キッチンでお茶でも淹れて何か食べようと言うので、オスピタレラにこんにちはして中へ。
「……」
「……」
なんとなくエンジェルと目が合った。多分同じことを思っていたのだ。
宿泊客じゃないのに、キッチン使っていいのかな?
オスピタレラは寛大な方で、特に何も言われなかったけど、本来ならやっぱりダメだったんじゃなかろうか。
「彼女の荷物も置かせてもらっていいかしらー?」
「ええ、あっちの部屋に置けるわ」
私はチェックアウトしたのでザックを背負っていた。カリマさんはオスピタレラに私の荷物も置いてもいいのか軽やかに聞いていた。いいの!? とどぎまぎしたのだけれど、ご厚意に甘えて荷物を置かせてもらった。
朝ごはんはハーブティーと、私は昨日のお菓子。エンジェルとカリマさんはチーズケーキ二種という、おやつのようなもの。
「チーズケーキ、良かったら食べて」
「いいの? 私のお菓子も食べて!」
そんなやり取りをしながら食べる。
松の実のチョコレート菓子は、珈琲3杯必要なくらい甘かった。勿論一口もらって食べたケーキも甘い。唯一の良心はハーブティー。
大聖堂は夕方からだから後にしよう。ガウディミュージアムは午前中から開いているらしいから先に観よう、なんて相談しながら少しずつ食べる。
とても美味しかったけれど甘い、甘ーい朝ごはん? だった。
・朝ごはん〜Casa Botiners
朝ごはんの後、私が一泊したアルベルゲへ荷物を持って移動した。昨日と同じように、人が並び始めている。
料金は8€で使い捨てシーツ付き。悪くない場所だし、収容人数も多くあぶれる心配はない。強いて言えばシャワーの温度が安定しないことくらい。
ところでアルベルゲには基本的なルールが幾つかある。
その一、ザックをベッドの上に置かないこと
そのニ、洗濯は決められている場所で
その三、同じところには基本的には泊まれない
レオンは大都市なので、二晩滞在する人も多いのだけれど、その三ルールがある為、泊まれない可能性もある。
翻訳アプリでスペイン語をカンニングして「昨日泊まったのだけれど、今日も泊まれますか?」と訊ねてみたら、「泊まれるよ! 大丈夫だよ!」とのこと。よかった、一安心。
やがてロジャーお父さんがエンジェルの分の荷物も抱えて登場。
料金を支払い、ベッドはどこでも良いと言うので、昨日と同じ場所にした。
暫く日記を書いてすごしていると、下のベッドのカリマさんから声がかかる。
「ねー、ツネ、起きてる?」
「何? 起きてるよ」
「私達ガウディ、観に行くんじゃなかったかしら」
「あ」
あっ! と言って隣のベッドのエンジェルも起きる。
「みんなで落ち着いちゃったわねー。これって一体なんの時間? って今気付いたのよ」
「本当だね。行こうか」
「行きましょう!」
そんな訳で、ガウディのカサ・ボディネスへ皆で行く事にした。
カサ・ボディネス(ボディネス邸)は、ガウディの友人且つパトロンのグエイの勧めで建造された建物である。
グエイの取引先の生地屋さんの、住居兼倉庫兼会社として建てられた。
ネオゴシック建築と言って、ゴシック建築を見直した形式のもの。
地下を含めた4階建てで、換気を良くする為に堀を作ったり吹き抜けを作ったりしている。また、水捌けを良くする為の樋の仕掛けも、近代的だ。
ガウディはレオンに敬意を表し、各街のシンボルのステンドグラスが窓に遇らわれていた。
ガウディらしさは、建物の入り口にいる聖ジョージなどに現れている。聖ジョージと言うと、ドラゴンを倒す聖人のイメージ。ところが、この聖ジョージがやっつけているのはどう見てもトカゲ。しかも、アフリカの帽子を被っているらしい……。
塔部分から外を見たり、逆さ吊り実験の模型を見たり、手触りの良い手摺りの感触を楽しんだりした。
一通り見終わった後、カリマさんはもう少し見ていると言うので、大満足でアルベルゲに戻った。
・異国で困っていた人達
アルベルゲに戻り日中の暑さを避けてシエスタ。同じ部屋には、「muy bueno(とても良い)/西」とイチジクを教えてくれたスペインのおばさま方。随分前に別れたクラリッサ、そしてなんと、サアグンでお別れした韓国のご夫妻。
他に、先程着いたばかりのフランス人のご婦人がいた。そのフランス人のご婦人に話しかけられた。
「街……みにいった?」
「行きました。えっと、カテドラルはまだ開いてなかったので、ガウディのミュージアムに」
「その、ガウディなんだけど……(以下フランス語)」
おや? 解らない。
そりゃ英語だって完璧に聴き取りできる訳じゃない。スペイン語も漸く耳が慣れてきたくらい。ここまでハッキリ解らないとは。でも、「Qu'est-ce que je ……QR、co……」と言っているから何か困っているのは分かる。「あれは何?」と言う仏語が、ケスクセみたいな発音だったことだけなんとなく覚えていた。
「QR……QR……あ、QRコード?」
「そう、QRコード!」
ボディネス邸のチケットについていたQRコードからHPにアクセスできる。ところが、渡してみたけれど、何か違うらしい。更に何か一生懸命フランス語混じりの英語で言われた。
「おおう、フランス語……分からない、あ、待って! フランス語話せる人を知ってます」
フランス人で3カ国を話せる才女、クリスティーンも泊まっていたことを思い出した。部屋にはいなかったので、ワッツアップ(LINEみたいなやつ)で、「フランスのご婦人が困ってるんだけど、言葉が解らない。電話していい?」と連絡をしてみた。
クリスティーンはすぐにかけてくれて、携帯をご婦人に渡して話を聞いてもらった。
「ありがとう!」
とご婦人が言っていたので、多分なんとかなったのだと思う。私もクリスティーンにお礼のメッセージを送った。
ありがとうクリスティーン。
困っていた人を二人も助けてくれました。
急に電話してごめんね!
・レオン大聖堂
続いてレオン大聖堂。
もうすぐ開くみたいよー! とカリマさんから連絡が来たのでアルベルゲからのそのそ出発する。地図アプリを頼りに道を行くとレオン大聖堂が姿を現した。
元々はロマネスクの時代からの建造物。諸々の歴史の変遷を経て、スペイン・ゴシック建築の集大成とも言える形になった。重文。
穹窿は高く高く持ち上げられ、壁が極限まで取り払われて、ほぼ全ての面にステンドグラスが埋め込まれていた。
パイプオルガンは4つ。
身廊の中程に向かい合わせに設置されていた。
写真を撮ってみたけれど、光の加減か色が上手く発色されなかった。
側廊左は、回廊に続いていて、なんともオリエンタルな中庭があった。
色々、本当に色々観たのだけれど、レオンにいつか行く人の為にあまり語るのはやめておく事にする。カミーノじゃなくても一見の価値あり、大迫力のカテドラルだった。
・ジェンダー問題と、祭りの終わり
大聖堂見学後に、クリスティーンと、エンジェルの友達と遭遇。
「助けになった?」
「ありがとう! なったよ! 大助かりだよ!」
と、感謝の意を伝えた。
マーケットを回るという二人と別れ、ロジャーさんと合流してお茶にする。ふと見ると、ロジャーさんは足の指と踵に包帯を巻いていた。糖尿病の話を思い出した。
お茶をしながらジェンダー問題の話になった。日本はまだまだ厳しいんだよね? とロジャーさんに言われる。オーストラリアは日本よりは柔軟な考えらしいが、やっぱりカムアウトは勇気がいるらしい事が分かった。
日本かあ。
20年前よりは寛容になったとは思う。でも、中々難しい問題だ。もう20年くらいしないと「当たり前」にはならない気がする。
お祭り2日目は幾らか静かな気がした。昨日と違い、平日だからだろう。スーパーで勧められたデイツと、洋梨(美味しい)と、ミントティーを買ってアルベルゲに戻った。
明日は普通に歩き旅に出るので早めに就寝したい。
「夜食どう?」
「少し食べましょうか」
カリマさんに誘われて野菜ならと食べることにする。何か取ってくると言って消えたカリマさんを待つ間、ミントティーを淹れて飲んでいた。
すると、突然物凄い音が外から聞こえてきた。
教会の鐘があり得ないくらいの勢いで打ち鳴らされている。そう言えば、教会の周りに人だかりができていたし、なんなら警察も沢山いた。
「きっと要人がいるんだわ!」
と、カリマさんが言っていたけれど、なんだか様子が違う。慌ててお茶を飲み干し絶え間なく鳴る鐘の音の中、通りに向かって降りた。
来るぞ!
もうすぐだ!
沢山のスペイン語や英語が飛び交う中、かろうじて何かが来るという言葉が判別できた。通りには人だかりができ、皆何かを待っていた。
鐘は、一定のリズムになった。時を知らせるような澄んだ音ではなく、ジャン、ジャン、と地に響くような大きな音だ。
鳴り響く鐘と、喧騒。一方で厳かな空気が漂う中、抜き身の剣を携えた一群が鐘の音に合わせて行進してきた。続いて、香炉を持った少年がゆっくり通り過ぎる。
そして……ついに、キリスト降架の像が高々と掲げられて現れた。黒い服に身を包んだ人達が担いでいる。怒ったように鳴り続ける鐘に合わせて、担ぎ手達は、片手に持った黒い杖でガンッと音がするくらい強く地面を打ちながら一歩一歩進んでいく。
残念ながらスマホの充電が切れていたので映像を残せなかったが、身体がびりびり痺れるほどの体験だった。
後で聞いたのだけれど、彫刻を担ぐのはスペインのカトリック特異のものであるらしい。壁の街で見た新しそうな彫刻も、担ぐのだとしたら見方が変わる。
夜食を食べた後もすごいもの見た、という気持ちが収まらず、この夜は中々寝つく事ができなかった。
次の話
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