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極東から極西へ1:カミーノ編・0日目

サンティアゴ巡礼本番編
前回までは準備編でした。今日から本番編に移ります。9月12日〜13日。



・羽田第3ターミナルに想いを馳せる

 
 そわそわと前日から落ち着かず、夕飯に豚しゃぶを作ろうと決めていたのに、出来たのは春巻き。しかも気付いたら大量に揚げていて完全に上の空。

春巻きと焼き茄子乗せ朧豆腐。
春巻き好きなんだよなあと思ったら作っていた。

 心は既にスペイン……にいるわけではなくて。

「ああ、羽田から心配。飛行機に乗れるのかな」
 
 空も飛ばず、未だちゃんと地面に……というか、地元にいるのだった。羽田第3ターミナルとホテルまでなら、なんら問題ないのだが。

「そんな心配なら、行かなければいいんじゃない?」

 食後に淹れた珈琲を飲みながらぐるぐるねちねちしていると、呆れた母にすかさず言われる。

「はぁ、ここまで来て行かなきゃ馬鹿だよねぇ」
「さあ、馬鹿かどうかはねぇ。自分で用意したんだから、決めるのは自分よねぇ」

 人生は選択の繰り返し。
 仕事を辞めたのも、サンティアゴ巡礼に行くと決めたのも、ちまちま手間暇掛けて用意したのも自分。でもね、「空を飛ぶ」って普段しないことをする時は不安なの。

「今からくよくよしても仕方ないでしょ。早く寝とけばいいんじゃない?」
「そうする」

 食べて寝て、一度リセットは良い解決法。
 あまり夜更かしせずに、ベッドに潜り込んだ。


・羽田第3ターミナル

 
 翌日、あれやこれややっている内に出発の時間になった。一晩寝たらすっきりして、行けばどうにかなるかと思うようになった。
 パスポートよし。
 クレジットカード、ビザデビットよし。
 新幹線のチケットもあるし、書類もばっちりだ。

 都内から羽田第3ターミナルまでは昨日考えていた通り割とすんなり着く事ができた。そりゃ、最近国内線で九州まで行っていたからね。

 少し早いけどホテルにチェックイン。
 Sさんは夕方着なので、先にごろごろしながらesimのインストールを終えておく。
 アプリ通りに行ったので、多分大丈夫だと思うのだけれど、どうだろう?


富士山が見えた! 明日はいよいよパリに向かう。
じんわり実感が湧いてくる。

 やがてSさんが羽田に着く時間が近づいてきたので、ホテルからターミナルへと向かう。搭乗口や、チェックインカウンターの位置を確認しつつ、円をユーロに両替しておく。

「コンビニの前にいるね」
「分かりましたー!」

 Sさんも両替を済ませて無事に合流した。飼い犬が調子が悪いらしくお別れをしてきたのだと言う。

「それは、タイミングが悪かったね」
「国内旅行だったらキャンセルしたんですけどね……国外だし、長いし。天寿かなあって思ってますけどね」
「そうかもだけどさ」

 死に目に会えないのは、と言いかけてやめた。それを決断して来てくれているのだから余計な一言だろう。


・大きな荷物と小さな荷物


 ホテルの部屋に着いた私達。
 Sさんが私のスーツケースを見て何か考えている。

「でかいっすね」
「うん、もう少し小さくても良かったんだけど、親も使うらしいしね。帰りにお土産入れるだろうし」
「どうしようかな……私の、結構パンパンで。もう一回り大きいの、鍵が掛からないんですよ」

 そう言いながらスーツケースの中身を広げて見せてくれる。ほぼ巡礼で使うものが入っていた。

「うーん、大きいのにしようかな」
「大きいの?」
「売ってるかなあ」

 羽田なら旅行関係のものは大体揃いそうだけれど。ちょいちょいと検索するとスーツケースを売っているお店がある。

「あった。あるよ!」
「買うかあ」

 そして大きなスーツケースを手に入れる為に再び空港へ。無事に大きなスーツケースを手に入れた。ついでにスーツケースに貼るシールもゲット。
 にしても、空港でスーツケース買うなんてアイディア浮かぶなんてすごいな。

「なんでもあるねぇ」
「ですね」

 スーツケースを買った帰りにご飯を食べた。ラーメンを食べながら、暫く日本食ともお別れだなあとしみじみ思った。


チャーシューと煮卵は暫く食べられない。


 Sさんは小さなスーツケースの荷物を早速大きなケースに入れ直した。お守りをもらい、ベコちゃんをあげた。連れて来た先輩のカエル君を並べて記念撮影。そしてお互いシールをスーツケースに貼ってこれで荷物は完了?


おにぎりシールは私の
分かりやすいねこシール。Sさんらしい。


先輩のカエルくん色違い。

「あっ!」
「どうしました?」
「ザック、機内持ち込みギリギリかもしれない」
「えー!」

 ザックの高さが、雨蓋に色々突っ込んだらぎりぎりになってしまったのだ。というか荷物を抜いても測り方によってはぎりぎりのぎりアウト。

「……スペインのスーパーで使おうと思った買い物袋、使うかな」
「まさかこんなところで」
「この柄は私の趣味ではないから。違うの、家に偶々あったやつで断じて私の趣味ではない……」

 こうして、私はザックから機内持ち込み用の荷物を引っ張り出し、小さな買い物バッグに詰め込むことになった。

・パリへ

 
 朝食のあと、荷物を纏めてついに出発。
 Sさんは大きなスーツケースを転がし、私は買い物袋をスーツケースに乗せていた。


派手な買い物袋

「ロストバゲージしたら、私買い物袋で巡礼する人になっちゃう」
「いいんじゃないですか?」

 何がいいのでせうか。

 暫しうろうろ。パリ行きが見つからない。
 何故か二人ともJALに乗る気満々だったが、実際はANAだったからだった。
 当日までANAであることに気付かない二人!

 チェックインの機械にパスポートを読み込ませ、預け入れの荷物をのところを2にすると、無事に荷物のシールラベルと控え、搭乗券が発行された。
 シールラベルにCDG(シャルル・ド・ゴール)と書いてあるのを確認し、荷物を預けた。ベルトコンベアに荷物が吸い込まれて行くのを見守り、願う。

「また向こうで荷物に会えますように!」
「会えるといいですね」
「直通だから大丈夫だとおもうけど、そうじゃないと私買い物袋で巡礼」

 日本の会社だし、多分大丈夫だろうけど。

「帰りも直通ですもんね。フランクフルトから」
「!?  Sさん、フランクフルトはトランジットだよ。スペインじゃないもん。帰りは乗り継ぎあるからね。帰りはバルセロナからだよ」

 先行きが不安な二人組である。

・パリに到着

 
 13時間の空の旅。
 カムチャッカ半島を左に臨み、アラスカ・カナダ・グリーンランドの上空を進んだ。
 日本から出て暫くするとお昼ご飯が提供された。


魚のフライ丼。タルタルソースもついていた。


 美味しく食べた後、それまで本を読んでいた私はすぐに寝た。機内は程よく暗くなり、お腹もいっぱいで寝るには最適だった。途中で起きてRRRを観た。180分最高に楽しくて満足してまた寝た。Sさんはこの間映画を4本観たらしい。



 イギリス上空で朝ごはんが出た。
 日本では夜中
 イギリスやフランスではそろそろ夕方に差し掛かる時間(時差7時間。日本の時間を追いかける感じ)。何故朝ごはんなのかは、よく分からない。

 
 ロンドンの上を過ぎて、海峡を渡り、遂にパリに到着した。
 さあ、街に行かなくては。

・荷物ピックアップ

 出口方面へ向かい、パスポートを用意してと言っていたので用意。
 ユーロ圏と国外からの人とゲートが違ったが(すぐ隣だけど国旗が書いてあるし分かりやすい)、案内する人が親切で無事に辿り着く。機械にパスポートを読み込ませてこれでフランスに入ることができた。

 荷物も、案内が英語と漢字で書いてあるのでスムーズ辿り着けた。

 ところが。

「来ないねぇ」
「ですねぇ」

 荷物が出てこない。
 スペイン語とフランス語とアラブ系の言葉を話す人達に囲まれて呆然。

「買い物袋で巡礼……?」

 嫌なイメージが頭をよぎる。
 単純にレーンが違うだけだった。そりゃ周りに日本人がいないはずだ。

・タクシーに乗る


 ピックアップしたら、次はパリ市内に行かなければならない。タクシー乗り場は床にタクシーと書いてあるので、すぐに見つけられた。
 パリは中心地ならセーヌ左岸と右岸で定額。バスがない今は荷物も多いし夕方なので、乗ってしまうのが良いだろう。
 白タクがタクシー乗り場入り口で声をかけて来たが、Sさんが「何言ってるかわからないんで」と撃退。
 順番がきたので、事前に撮っておいたホテルの住所と地図をスクショしたものを運転手さんに見せて出発した。
 アグレッシブなライダーや車に、よく事故が起きないなと思ったら、しっかり起きていて道は渋滞していた。

 ホテルにチェックインしたのは日本時間で午前2時。

19時過ぎても外は明るい。


 パリに着いた感動もあったけれど、あんなに寝たのにすごい眠気に襲われる。
 

 荷物整理もそこそこに、死んだように寝たのだった。


次の話


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