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極東から極西へ2:カミーノ編・0日目パリからSJPP


 9月14日。
 前日譚続き。パリで半日観光後、出発の街SJPPに向かう。


前の話




・荷物を預けてシテ島へ


 今回、半日時間があるのでSさんが見たいと言っていたサントシャペルへ行く予定になっていた。サントシャペルは、セーヌ川中洲のシテ島にある。パリの名前の由来となったパリサイ人がいたことから始まりの島とも呼ばれているらしい。

 6時50分にチェックアウトして、歩いて4分程の距離にある荷物預け場所にザックとスーツケースをお願いする。
 にしても、ホテルの人もタクシーの人も今のところ皆優しい。フランス語は耳慣れなくて聴き取りにくいのだけれど、察してゆっくり話してくれたり英語を交えてくれたりする。
 そしてすごく素敵な笑顔を見せるのだ。

 荷物を預けて身軽になり、さてどうしようか。絵に描いたように素敵な建物、映画で観たようなカフェがある。それに寝たからかなり元気だった。

カフェがいたるところにある。


 メトロ4で、シテ島までモンパルナスから行くことができるけれど、もう少し街を堪能してみたい。そんな訳で歩いてシテ島へ行く事にした。建物に興味深々の我々。Sさんは煉瓦の積み方なんかに詳しく説明を聴きながら通りを歩いた。


リュクサンブール宮の美術館


「なんか、やっとパリに来たって実感がわきましたね」
「昨日は、来たなーって思ったけど死んだように寝てたから。パリって香水の匂いするね」
「あと、タバコですね!」

 結構吸っている人が多いので、街はタバコと香水とカフェの匂いに溢れていた。

 セーヌ川を渡る時に、ノートルダムのファサードが見えた。シテ島にある、かの大聖堂は未だ工事中だった。


夕飯なバラ窓が見える

「残念」
「オリンピックに間に合わせるんですかね?」
「間に合うか……?」

 何せ、尖塔が丸っと無くなっている。
 厳しそうだけれど、ぎりぎり行けるかもしれない。


 朝ごはんを食べてから、9時にサントシャペルに入場。


サントシャペル入り口
並びにあった時計

 ここは裁判所が並んでいる。裁判所の列が右、サントシャペルが左である。入ると、検閲がある。
 入る前に、スマホもバッグも何もかも空港みたいにトレーに乗せて透視にかけ、本人もしっかりボディーチェックする念の入れよう。

 ルイ9世時代のゴシック建築。ばら窓と、高くリブボールト(クロスリブ)で持ち上げた天井。四方を囲む荘厳なステンドグラスに感動する。


召使の部屋だった場所のステンドグラス。
色が濃く、美しい。昔の硝子の色は再現できないので貴重。
後陣
四方を取り囲むステンドグラス
ばら窓

 続くコンシェルジュリーは、マリー・アントワネットが死ぬまでの最後の76日を過ごした監獄だった場所。独房や、ギロチンにかけられる前に髪を切った部屋などが見られる。2回逃走を企てたそうだ。革命の4000人の犠牲者の名前が壁一面に貼られていた。


衛兵の間
コンシェルジュリー入り口


 日本語の端末を借りられるのでかなり満足感があったが、中々に重たい。コンコルド広場までのルートや、コンシェルジュリーから出された時の服装なども知ることができた。

「常さんがお腹いっぱいになってる」
「うぅ、長崎の天主堂観た時と同じ感じ……」

 革命でも何百年前でもなんでも、人が殺されるのは苦手なのだ。


・TGVに乗りバイヨンヌへ


 徒歩で戻り、モンパルナス駅に着くとバイヨンヌ行きのTGVのホームが電光掲示板に表示されていた。
 OMIOのアプリでチケットを表示し、予約の16号車まで急ぐ。二階建ての車両の前から9号車までは、ボルドー・サンジャンで切り離されるらしい。


2回建の新幹線

「高崎線のさ、籠原で切り離されるやつみたいだね」
「あー、この車両は群馬には行かないってやつですね」
「そうそう」

 乗り込んですぐに座席は見つかったのだが、スーツケース置き場が一杯だった。皆、荷物をしまうのに難儀している。

「どうします? スーツケースの上に乗っちゃう?」
「いや無理だよ。一回出よう」

 結局、2階の荷物置きに収納できた。

 やがて動き出したフランス版新幹線。
 日本のと違うなと思ったのは、先頭車両に残ったままのワイルドなバードアタックの後(翼付き)と、車内アナウンス、そしてどこまでも続く畑の中を行くこと。景色はすっかり秋だ。

「外国に来て秋を感じるなんてね」
「まだ向こう暑いですもんね」

 時間が経つと段々車内アナウンスの聴き取りができるようになってきた。

「次はDAXって駅だって。そこからどこかへの乗り換えが出来るらしいよ。他は聞き取れなかった。あと最後にボン・ボヤージュだって」
「うへぇ、分からなかった」

 なんか、なんとなくだけど、英語やイタリア語やスペイン語とフランス語は似てるのだ。この単語はあれかな? と少しずつ、本当に少しずつ、耳に引っ掛かるようになってきた。
 けして話せる訳ではないのだけれど、言葉は不思議だ。

・バイヨンヌからSJPPへ

 TGVからバイヨンヌに降りると、バスクの街並みが広がっていた。漆喰の壁に茶色の屋根を乗せた可愛い建物が並んでおり、パリとはまた違う景色に楽しくなってくる。


駅の目の前の教会


窓が可愛い


 駅前にはザックを抱えた人が沢山いる。
 近くを一回りしてから少し話をするうちに乗り換えの時間になったのだが、皆荷物が沢山で乗り切らない。
 女性の駅員さんが、ドアの前で何か言っている。

「……バス。SJPPに行く人は、バスもあるって。案内するから着いて来てって言ってるみたい」
「ええ。なんで分かるんですか」
「なんでだろ」

 バスに案内され、無事に席に着くことができた。


窓が大きい。車内にラグビーの宣伝があった。

 バスはなだらかな丘陵地帯を抜けていく。羊や、馬や、牛が呑気に草を食んでいた。
 ピレネーが、見え始めた。
 走る事約50分。街中に入り路地を進みついに小さな駅の前で止まった。映画「星の旅人達」の冒頭に出てくる駅だ。


 出発の街、SJPPについに到着した。


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追記:裁判所ではなく法務局でした!

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