極東から極西へ16:カミーノ編day13(Cardenela Riopico〜Burgos)
前回の粗筋
楽々ポーターサービスを使ってみた。
前回
今回は、とうとうカミーノの中でもかなりの大都市に到着した話。大聖堂に感動する。
・Cardenela Riopico〜Castanares
リオピコ村のアルベルゲを出たのは6時45分くらい。まだ真っ暗の中を出発する。昨日見たへとへとの巡礼者の絵を見てこっちかな? と進んだけれど、黄色の矢印やモホンが見つからない。
そう言えば、リオピコ村に来る時に少し道を外れなければならなかった気もする。1人誰かが先行していたけれど、やはり不安になったのか、戻ってきた。
「道、分かるかい? 矢印が無くて……」
「私も道をロストして……」
ってよく見るとサイモンさん!
2人で探したけれど見つからず、結局アルベゲの人に聞くことになった。どうやら真っ直ぐで良いらしく、足の速いサイモンさんに先に行ってもらって、1人で歩く事にした。
昨夜の夕飯の時に、飛行場手前で曲がって、リバーサイドを行くといいと言う話題になったのを思い出しつつ歩く。
流石に大都市手前とあって、車通りが激しい。地図を見ると飛行場がもうすぐだ。そろそろ左折の場所があるはずだけれど。
「ハロー、ツネ!」
「わっ、ハロー、カリマ!」
カリマさんが後ろから現れた。
今日は16kmの短距離なので、荷物を背負っている。
「ここを左よ!」
「本当だ、矢印があった!」
「あったわね!」
ペースがほぼ同じだから毎日会っている。
飛行場のそばを左折して、どんどん真っ直ぐ。その内に工場地帯が見えてきた。
今までと違って空気が少し悪い。咳が出始めた。子供の頃少しばかり喘息を起こした事もあり、多分、人より気管支が弱いのだ。
「空気、悪いね」
「ここはあんまり好きじゃないわ」
そんな事を言いながら、通り過ぎた。
・Castanares〜Burgos
片道2車線ずつの大きな道をかなり大胆に渡ったり(みんな80km/hくらい出してなかったか? 高速じゃないけど、自動車専用道路だったんじゃ)、川沿いの道でちょいちょい犬に絡まれたりしながらいつの間にかにブルゴスに入っていた。
とは言え、多分正規のカミーノの道ではなく、道行く人にここを真っ直ぐだよ、とか右に曲がってね! とか沢山教えてもらいながら、旧市街に漸く辿り着いた。
何よりも高い建物が見える。
大聖堂だ。
まるで王冠みたいな尖塔が幾つも真っ青な空に刺さっていた。大聖堂にすぐに行きたい気持ちをぐっと抑えて、まずは公営アルベルゲに行くことにした。
朝ごはんは何処かで適当に食べればいいかと思っていたので何も食べていないし、ご飯とベッドの確保が先だ。
時刻はまだ10時50分。
アルベルゲはまだ開かないので、荷物を先の人に真似て並べて置いておいた。
すぐ前にカフェがあったので、ナポリターナ(チョコデニッシュ)とお決まりのカフェコンレチェを頼んだ。看護師になる前はレストランで働いていて(なんならサービス業のが長い)、エスプレッソマシンを使ったことがある。だからつい手元を見てしまう。
スペインではドリップコーヒーを見たことがなく、カマレロはいつだってあっという間にエスプレッソ(エスプレッソだけに)を淹れて、これまたあっという間に最適な温度でミルクをスチームしているように見えた。
そりゃあ毎日毎日淹れるからだろうけど、毎回神技のような手際の良さに魅入ってしまう。
タパスもあって、ナポリターナの後で追加でマッシュルームとししとう? を頼んだ。
ベルギーの女の子、サイモンさんもやってきて暫し話す。アルベルゲオープンの時間になって、皆でザックの元に戻った。
・Catedral de Burgos
シャワーと洗濯を終えて、私にはやる事があった。メセタを控えて帽子を買わなくてはいけない。
そして楽しみにしていたカテドラル見学も、わざわざ早く着いたのだから、行かなければ絶対に後悔する。
日記を少し進めるとカリマさんがやってきたので、一緒に出かけることにした。異国の地で誘ってくれる人や、挨拶し合える人がいるのは嬉しいし、心強い。私は聴き取りはできるけれど、すらすら喋ることが出来るほど英語は上手くないのだ。それでも、イタリア語やスペイン語混じりだったり、普通に英語だったりで話かけてくれる。
Sさんにも、友人が出来ているといいのだけれど。
まずはカテドラルへ。
入り口でクレデンシャルを見せると半額で見学できる。
料金を払い、案内のアプリのQRコードをもらう。アプリをインストールしたら、順番に中を回っていくのだが、多分じっくり見たら1日いても見足りないくらいのボリュームがある。それ自体が美術品なので、凄すぎてぞわぞわした。
・帽子とスーパーメルカード
次に帽子を買いに街に出かけた。
カリマさんもツバの広い帽子が欲しいと言っていた。
アウトドアショップを探して広場に行ったついでにアイスクリームを食べたり、面白そうな店を冷やかしたりして散歩をした。
その内に17時になり、シエスタが終わりお店の開く時間に。私はナショナルジオグラフィックのマークのある帽子を選んだ。
「私も好きだけど、父も好きな雑誌なんです」
「私も好きよ。良い写真いっぱいよね!」
スペインのセマナサンタはそう言えば、ナショナルジオグラフィックで知ったのだった。
「帰ったら父にあげようかな?」
「いい考えね。それ絶対喜ぶわ!」
帽子を買って、今度はスーパーへ向かう。朝ごはんや、どうせなら夕飯分も買ってしまおうと言う魂胆だ。
初めてのスペインのスーパーにおっかなびっくりカートを押して果物やチーズ、パンを買ってみた。
「チーズはね、これがクリーミーで美味しいわよ!」
「ヤギ?」
「そう、ヤギのチーズはお腹に良いのよ」
と言うわけでオススメのヤギのチーズをゲット。レジはベルトコンベアみたいになっていて、商品を置くとどんどん運ばれていく。支払いをデビットカードで終えて、アルベルゲに戻った。
食堂で、ガイさんとビンセントさん、カリマさんと一緒に買ってきた夕飯を食べた。ゴートチーズは美味しかった。
「お父さん、喜ぶと思うから、帽子は是非あげるといいよ。多分君が旅行で使ったって言うのも喜ぶ理由になるだろう」
ガイさんに新しい帽子について、そんな風に言われた。
あげたら本当に喜ぶのかな?
そんなこんなで1日が終わった。
寝袋に潜り込んで、おやすみなさい!
この時私はまだ知らなかった。
実はことが大きく動こうとしていた。
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