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極東から極西に行くことにした15:カミーノ準備編・ガウディとサグラダ・ファミリア展

前回の粗筋。
HISの海外保険に入った。
サン・ジャン・ピエ・ド・ポーまでのタイムスケジュールを組んだ。



・ガウディとサグラダ・ファミリア展

 
 以前マティス展に一緒に行った友人と、今回は「ガウディとサグラダ・ファミリア展」に行ってきた。スペイン巡礼が終わった後、サグラダ・ファミリアを観る予定にしているので、予習のつもりで解説を見ておきたかった。

「近代美術館ってどこにあるんだっけ」
「皇居のとこだよ。東京駅で降りて、皇居に出たら桜田門じゃ無い方に歩いて行けばいい」

 父が新聞を読みながら言う。

「あー、神田とか九段下とか竹橋の方」
「そうそう、竹橋。そっちに周る感じ。桜田門じゃない方に……桜田、さくらだ・ふぁみりあ」
「……」

 地下鉄東西線の竹橋で降りることに決めた。

ごく最近、マリアの塔が完成したサグラダ・ファミリアが
プリントされている。

 サグラダ・ファミリアには、日本人の方が関わっている。外尾悦郎さんという方で、1978年より従事。現在は主任彫刻家として大聖堂の彫刻を担当している。
 今回の特別展、なんと外尾さん作の「降誕の正面」の上部に実際に飾られていた「9人の歌う天使」の石膏像が来ているとのこと。間近で見られるチャンス。石膏像は壊れやすいし、ひょっとしたらこんな機会二度と無いかもしれない。
 因みに外尾さんの奥様はピアニストの比石妃佐子さん。スペインの大ピアニストである、アリシア・デ・ラローチャに師事し、アルベニスの「イベリア」を師と共に10年かけて校訂した方。
 ご夫婦共に歴史に残る大きな大きな仕事をされている。


こちらが9人の天使。降誕の正面に飾られていた。産まれたばかりのキリストを抱くマリアと、ヨセフを見守る。
優しく柔らかな表情が印象的。


・教会建築について


 ところで、先程から書いている「降誕の正面」とは何か。
 それを説明する前に、簡単にサグラダ・ファミリアについて話すことにする。

 サグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会)はバルセロナにある、バシリカと呼ばれるタイプの教会である。寄付を募り1882年着工、未だに完成せず。世界遺産、「ガウディの建築群」に含まれる。
 バシリカとは、身廊が長く側廊が短いタイプの建築(十字架の腕の部分が短い感じ)形態で、更に大聖堂且つ、ローマ教皇の書簡により特権を付与された教会のこと。サグラダ・ファミリアは2010年にローマ教皇によりバシリカに認定されている。
 
 ガウディはサグラダ・ファミリアの二代目建築家として、交通事故で亡くなる1926年まで就任していた。携わったのは、地下礼拝堂と「生誕のファサード(建築物の顔。建物の正面の意味。趣向を凝らしたものが多い)」のみだが、今なお天才ガウディの遺志を継いだ職人達が日々建設と研究を続けている。
 ガウディは、逆さ吊り実験という、糸と錘を用いて自然な放物線を作り出す方法で建築物の設計を試していた。
 リブ(穹窿・肋骨なんて意味も)というカーブを用いて天井を高く押し上げるゴシック建築に、逆さ吊り実験はとても合っていたのではないだろうか。
 
 サグラダ・ファミリアは、度々の財政難や、スペイン内乱による設計資料の破壊と喪失(研究が必要なのはこの為)、コロナ禍と試練が相次いだ。そんな訳で、ガウディ生誕100年である2026年に工事が終わる予定が、まだまだ完成まで長くかかりそうである。

 サグラダ・ファミリアには三つのファサードがある。東が「生誕のファサード」西が「受難のファサード」、そして南の正面の「栄光のファサード(未完)」。教会建築は十字型をしているので、左右に生誕と受難、真ん中に栄光がくる形になる。ファサードとは、本来建築物の正面を意味する言葉だが、ガウディと工房の職人達は出入りのできる全ての場所にとんでもない規模のファサードを計画した。展示で観た外尾さんの石膏像は一体大人一人かそれ以上の大きさがあった。これらの彫刻は、ファサードのごく一部なのだ。どれだけ巨大なのか、その一端を知ることができた。
 いずれ正面に来る予定の栄光のファサードは凄いものになるのだろう。完成した姿も是非観てみたい。
 ……しかし、展示だけでも圧倒されるのに、実物のサグラダ・ファミリアなんて見たら魂が抜けてしまうのではないか、いい大人なのに泣くんじゃないかと、今から心配である。

 ところで何故ファサードは3箇所なのか?
 十字の頭にあたる北側には祭壇がある後陣+内陣という大事な場所なので、出入り口は無い筈。従ってファサードも無い、はず。10月終わりに観て確認してくる。


 話を戻して「降誕の正面」。
 これはガウディが手がけた石造りの「生誕のファサード」にある。「生誕のファサード」は三つの扉に分かれている。各扉に聖書の有名なシーンが彫刻で再現されている。

希望の扉口(左)
慈愛の扉口(中央)
信仰の扉口(右)

 希望にはマリアとヨセフの結婚、出エジプト、ヘロデの幼児虐殺。

 慈愛には聖母戴冠、受胎告知、キリスト降誕。
 この慈愛の扉の上に糸杉の塔が伸びている。

 信仰には、聖燭祭、法律学者と議論するキリスト、聖エリザベトを訪問するマリア、大工として働くキリスト。

 慈愛の扉にある、「キリスト降誕」のシーンを描いた彫刻群の、正面に位置する場所に置かれていたのが外尾さんの石膏像。現在は違う石の彫刻が置かれている。今サグラダ・ファミリアで飾られている外尾さんの彫刻の代表は「受胎告知」の15体の天使らしいので、是非探してみたい。


・2ヶ月分のカツ丼

 
 展示を見終わった後で、カツ丼を食べに行った。
 「カツ食べたいね」というやり取りを事前にしていたので、お昼はもうカツを食べる食欲になっていた。


友人オススメの丸七のたまごで綴じないカツ丼。

 
 丸七本店の方は予約制だとかで、池袋へ移動。少し並んで、テーブルについて、出てきたカツ丼に暫しフリーズ。思っていた2倍は大きい。

「うま、うんまい。うんまい。柔らかい」
「タレもいい味してるね」

 カツ丼の美味しさのあまり語彙が死んだ私。
 友人は、私がスペインに行ったら暫く日本食が食べられないだろうからと、ここに連れてきてくれたらしい。相変わらずさり気ない気遣いが上手い人だ。

「うま、うんま……………」
「………………………………」

 その内に二人無言でカツ丼を頬張ることになった。
 すごく美味しかったのだけれど、真剣に向き合わないと胃から溢れて口からはみ出そうになるのだ。見た目以上に多い。次はご飯少な目か、ハーフサイズでも良いかもしれない。

「2ヶ月分のカツだから」
「うん、確かに2ヶ月分食べた。これなら向こうで恋しくならない」

 会計を終えて、暫く腹ごなしに百貨店内を歩き回ることになった。



さらっと餞別を渡してくれるのだからかっこいい。


 別れ際に友人が手拭いをくれた。
 ザ・日本、というものを持って行くといいと聞いていたので、日本の夏も一緒に連れて行くことにする。

「スペイン歩く?」
「パリまでならね」
「途中からでもあり!」
「歩かねって言ってんだろ、行倒れるわ。巡礼中のつねのそばに私がいたとしたら幽霊だわ」
「ああ、きっと三寸ばかり浮いてるんだね」

 会話の中でさりげなく誘ったらまた素気無く断られた。この断る際の返しが面白いから、つい冗談で誘ってしまう。


 パリまでならいいらしいから、いつかフランスを一緒に旅行できると良いな。



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