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「ビジネススキル、オール4」人材の葛藤と存在価値

忘れもしない。
あれは、社会人4年目の上半期査定振り返りのマネージャーとの1on1だった。

「お前の強みは、全スキルが5段階中『オール4』。満遍なく良い、ってところだ。」

こうマネージャーに言われた。
何者かになりたいと思って、新卒から走り抜けてきて、「何かの項目で、突き抜けたいんです!」と面談で言った直後のフィードバックがこれだった。

この「オール4」という言葉のために、ビジネスパーソンとしての自分の立ち位置に悩み・葛藤し、存在価値を考えさせられることになった。


最初に少し自分語りをすると、私は2013年に新卒でリクルートに入社した人間だ。数多ある領域の中でも「住まいカンパニー=不動産SUUMO」の広告営業に配属された。そこはベテランが多く、人材や結婚・教育領域と違い、「住宅そのものに元から興味がある人は少ないが、『業界の不』が大きいだろうから面白そう」と集まるちょっと変わった人が多かった。(だからこそ「人」が魅力で、新卒入社してよかった企業ランキングでも、住まい単体で上位ランキングに入ることも多い。)

入社して少し経って気づいたのは、ちょっと変わった人たちは、営業としてものすごい成績を残す一方で、何かが究極的に欠けている、ということだった。

それは例えば、経費精算が全くできないであったり、平気でダブルブッキングのアポを入れるであったり、接待の途中でも気にせず寝てしまうであったり、プライベートの人間関係がだらしないであったり。
詰まるところ、それができなくてもビジネスは進められるし、世話焼きな人から可愛いねと思われる程度のことであるのは間違いない。ただ「完璧ではない」、私の目にはそう見えていた。レーダーチャートで言えば、1項目は5点満点だが、他の項目は全部1点、みたいな相当いびつな人柄だった。(だからこそ可愛げがあるのだが。)

一方の私、自分でいうのもなんだが、経歴だけはピカピカである。
三姉妹の長女で、中学校は生徒会長。伝統ある地方公立にも推薦入試で合格し、勉強も・行事も・友情も・恋も完璧な高校生活だった。さらに滑り込みとは言え、現役で東大文一合格。もっと自分の可能性を広げたい、そう思って第一志望だったリクルートにめでたく入社した。そんな経歴だった。

「なんでも良くできるね」と小さい頃から言われ続けた。
できる人でありたいと思った結果、努力を重ねることは、厭わなかった。
「通知表はオール5」であることが何よりも喜びだったし、いつも模範生・完璧である自分が自己肯定の源泉だった。


それが、社会に出たら、何やら違うのだ。
全部を完璧にしようとすればするほど、時間が足りない。
担当先が同時に15〜30件ほどあり、週刊誌の広告営業なので毎週何かの締め切りに追われている。後輩や異動者も多いので、そのサポートもいる。クライアントとの接待や、社内のイベント企画すら手を抜きたく無い(寧ろそここそ真髄)。完璧にやり切って、クライアント先にも、自分の会社にも、価値=成果・利益を還元したい。

完璧人間だから、どれかを「捨てる」ことができなかった。
代わりに、どの項目も爆速でキャッチアップする・期待する結果を期待以上のスピードで出す、ということをやり切った。

ただやはり、評価・表彰されるのは、分かりやすく期待以上の結果を出す同期や先輩・ひいては後輩たちだった。そして多くが、「完璧じゃないけど、可愛げのある人」ばかりだった。上司にも「お前の仕事は、組織にとっては良い仕事ばかりだけど、表彰に上げづらい。比較すると突き抜けた部分が弱く見える」と言われた。

そうか、リクルートの営業で突き抜けるには、何か突き抜けた部分がないといけないのか…。そう思って冒頭に書いた半期振り返りの1on1を迎えたのだった。


先に結論をいうと、このマネージャーとの1on1がきっかけで私は転職活動を始め、半年後に大手外資IT企業に転職した。そして転職を通じて、マネージャーの伝えてくれた言葉「オール4こそ私の強み」ということを自分自身で痛感し、今ではこの言葉がキャリアの指針の一つになっている。

※誤解のないように伝えておくと、このマネージャーは今でも飲みに行き人生相談をするくらい仲良しで、心から尊敬する先輩の一人だ。転職活動状況も逐一報告する程、心理的安全性の塊みたいな懐の深さだったし、何よりものすごく応援してくれた。(あとで役員からはめっちゃ怒られてたらしいけど笑)会社の枠組みがなかったとしても「人」として尊敬/信頼できる人たちが多いから、私はリクルートの古巣が大大大大大好きだ。

実はマネージャーの言葉にはもう少し続きがあって、
・お前のすごいところは、オール4に仕上げるスピードの速さ
・どの環境(クライアント、チーム、PJ)でも一定の成果が出せるので任せる安心感がある
・全員突き抜け人材ばかりでは、組織としても困る
と言ったことを、きちんと丁寧にフィードバックしてくれた。でもその時は、「何で突き抜けたい、って言ってるのに認めてくれないんだよぅ」という反抗心の方が勝ってしまっていた。

結果、次の転職先としては、個人成果主義の大手外資IT、かつ新規開拓と括れる広告営業の部署に身を移すことにした。

「個人のスキルを身に付けて突き抜けるぞ!」と意気込み、とにかく最初は結果を出すことを意識しまくっていた。架電文化があまりないフロアで1人、持ち前のデカイ声で話すものだから、「あのずっと電話かけてる営業っぽい人、誰?」と言われる程。ただやはり、しばらく経つと気づいてしまった。自分1人の成果を目指すだけでは、全く面白くないと。自ずと、チームに必要なツールや資料、データの整備を始め「チーム・組織での成果最大化」を意識した動きを、ボーナスにはほぼ影響がないのにやり始めていた。

ただリクルートの時と変えたのは、「より意識して人を頼る」ようになったこと。リクルートの時は、とにかく全部自分でやって武器を増やす、という意識が強く、人に頼るのが確かに少し苦手だった。(いつも改善点としてフィードバックされていた)
転職先の社風として、Diversity & Inclusionに非常に重きを置く文化があったことも大きい。バックグラウンドも多様で、営業以外の領域・データ分析が得意、スタートアップに強い/動画に強いなど、ある意味画一的な人が集まりやすいリクルートにはなかった人・スキルの多様性が、「得意な人に任せる」ということを助長できた。


通じて気づいたのは、自分はやはり
・全体を把握、キャッチアップするスピードには長けていること
・勝ち筋や今やるべきことを見つけるのは早いこと
・誰に協力を仰げばいいかの目利きと関係構築が得意なこと
・汎用性や型化にして組織生産性を高める志向が強いこと
・圧倒的当事者意識の名のもとに、必要とあらば守備範囲以外でも何でも厭わずやれること

だった。

逆に
・案件の大きさ(受注額や受注先)が、自分の満足度には直接寄与しないこと
・ビジョンを描く側よりは、そのビジョン実現の最速達成のために必要なことを、着実に最高の形で整えていく仕事の方が好きなこと
も、自分の仕事ぶりを多視点で評価できるようになったからこそ気づけたキャリア観だ。


結果、私は、「プロフェッショナルなオール4人材」を目指すことにした。

突き抜けられる人たちが、より突き抜けられるように。
組織として足りない部分を、自分のジェネラルな行動力で補えるように。

世の中、特に今後関わりたいスタートアップの世界では、突き抜け人材がめちゃくちゃ多いけど、そんな人たちを尊敬し愛しつつ、ハッパをかけられる希少性の観点ではこんな人材も魅力的なんじゃないかな、って。

とは言え、スペシャリストのスキルにも依拠したオール4の強さを発揮したいので、今までの経歴×成長期待の最大値が得られそうな「広報」の領域を自分の専門性と言えるよう、副業とプロボノ活動を通じて、爆速で日々実践・勉強中である。

また副業やプロボノ活動を通じて、「最初から完璧じゃなくても良い」というマインドの変化が起こってきてるのも日々感じている。本業で所属している(た)大きな組織では、リスク精査に時間がかかりすぎて前に進められないことが多々あったが、今はユーザーの声や日々の情勢を踏まえて、いかに早くアジャストできるか、先手を打って「まず世に出してみる」、違ったらすぐ変えるという、完璧な正解を出すんじゃなくて、正解をみんなで作っていくプロセスがすごく心地よい。

もし、このオール4のレベルを信じられないくらい高くできる日がきたら、そのこと自体が自分の「5点満点」の項目になるのかもしれない。

その日が来るまで、努力を続けよう。
人生まだまだこれからだ。



その後、スタートアップに転職した私の入社エントリー記事はこちら💁‍♀️

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