見出し画像

【アメリカ備忘録】銃を撃っても簡単なことしかわからなかった話【1月11日】

1月11日

銃を撃つ。

この日は旦那さんの息子さんと約束をしていた。(以前にしていたのだが書くのを忘れていた)
彼は敬虔なクリスチャンで、銃が好きらしくぼくを誘ってくれた。日本で銃を打つ機会なんてないから、これは大変貴重な体験である。
銃を打つ場所。想像ではガンショップのような場所で誓約書などを書いてから撃つのかな、と思っていたがどうやら違うらしい。
今朝、食事中に旦那さんから聞いた限り、彼の働いている会社のボスの私有地で撃つとのこと。
聞くに、ボスはお金持ちだ。一面見渡す限りの景色がボスの土地、みたいなところをいくつも持っているらしい。
今も建設中の建物がいくつもあり、あくまでも想像だがうかつなことを言ったら消されるかもしれないとか、そんなことを考えていた。
そして、そんな妄想のせいもあって、緊張していた。

また、全員で15人ほど来るらしい。しかも全員宣教師。そんなことってある?
ぼくは英語が得意ではない。そして初めて銃を撃つ。銃は映画や漫画の中でしか見たことがない、人を殺せるものだ。
おまけにその日の天気は雷雨、激しい雨だという。(前日夜の天気予報)

話の通じない15人の宣教師に囲まれながら、嵐の中、初めての銃を撃つ?


めちゃくちゃですごく面白いと思った。
ぼくはなんというか、そういう変なことがすごく好きだ。
変なことをする前はとても緊張する。
武者震いってこういう感覚なんだろうと思う。知らないうちに気が波立って座っていられない。
サンドイッチを食べた。少し落ち着いた。
緊張でソワソワとしているので母に怪訝そうな顔で見られていた。

お昼12時少しを過ぎた頃、息子さんが来た。
彼はぼくに「調子はどうだ」とお決まりの定型文を言った。
ぼくはこれまた「調子いいよ。昨日はぐっすり眠れた」とお決まりの定型文を返したが、それはある意味強がりで、前述の通り僕はとても緊張していた。
彼は「良かった。ちゃんと教えるから心配しないで」といったニュアンスのことを言った。
多分彼にはぼくの緊張がばれている。少し恥ずかしい思いをしながらも彼の車に同乗させてもらい、現地へと向かった。

車中で宣教師が来れない旨を聞いた。なんでも朝から気分が優れなかったらしく、先ほどキャンセルすると電話がかかってきたようだ。
「15人の宣教師全員が?」といったことを言うと
「15人は来るけど全員宣教師じゃない」と言われた。
ぼくは詳細について、旦那さんを通してしか聞いていない。情報の行き違いがあったのだろう。少し残念とおもったが安心もした。
そして現地到着10分ほど前、他の14人は午前中に銃を撃っていて、疲れたので帰ったと彼がぼくに教えてくれた。

なーんだ心配して損した!

これから銃を撃つのは彼とぼくだけである。
あーあ!みんなと話したかったなー!二人だけかー。残念だけどいないんならしょうがないよなー!あー残念だなー!大勢のほうが楽しかったのに残念だなー!。。。
ぼくは強く安心した。

現地に到着した。見渡す限りの土地が全てボスの私有地だという。
1000平米とかそんな次元じゃなかった。広い。
私有地に入ってから5分ほど走り、僕と彼は建設中であるボスの家に到着した。
扉のサイズが大きすぎて(3mはあった)、まるで試しの門だと思った。



画像1

ボス

ボスと対面した。ボスは女性だった。気の強そうな白人女性で、なにやら家のデザインについて母と揉めているようだ(隣に老年女性がいたのでそう思った)
息子さんが僕を紹介してくれた。
「父の再婚相手の息子で、日本からきた。今はそこに滞在している。」
ボスは表情を崩し、満面の笑みで
「とても素晴らしいことね。ようこそ。楽しんでいって」
といったあと、手を合わせ頭を下げた。ジャパニーズ合掌。
ぼくも笑ってお辞儀をした。ジャパニーズ合掌。サンキューフォーカミング。
僕たち二人は早々に退散し、銃を撃つ場所に向かった。

そんなこんなでやっと銃を撃つ。
銃は全部で4丁。ライフル2丁とハンドガン2丁。イヤーマフは必須品だ。
息子さんは僕に丁寧にレクチャーしてくれて、指を置く場所、セーフティーのかけ方、サイトの見方、ブローバックの解除、姿勢、その他諸々いろいろとお世話になった。
姿勢の矯正をされているとき、中学のバスケ部時代を少し思い出した。肘を押され、脇を締めるように。
初めてのライフルを撃つことにした。重い。
仮にぼくが息子さんの方を向いてトリガーを引くと彼は死ぬ。そんなことを考えると手汗がにじみ、肩はいっそう強張った。

撃った。

肩に衝撃がきた。的にあたった。僕は興奮のあまり高い声で叫んだ

全身に薄っすらと汗が滲んだ。心臓もどくどくと脈打っている。興奮していた。幾分緊張感は薄らいでいた。
そこから残りの3丁も順々に試し、気分はバイク屋で単車を試乗するときのそれで、つまり乗ってみたら不安より楽しさが勝っちゃったというわけである。

そのときに思ったこと。

結局、銃というものは一つのツールで、使う者次第だ。理屈でわかってはいたものの、実際に銃を撃ってみて、それを強く感じた。
コントロールすることが大事で、それは大きな力を持っている。
例えば大きな権力や大金であったり、包丁にしたって同じようなものだと思う。振り回すと危険。
結局は使うもの次第で善にも悪にもなるし、そう単純なものでもない。
息子さんは、銃の訓練をするのは家族を守るためだといっていた。
戦わなければならない時に備えている。そして、そのときに正しく行動できるようにしている、と。
ぼくは今まで日本で過ごしていた時間のことを考えた。そして、ぼくと彼は違うと感じたし、彼のことを尊敬した。

銃を撃ち、彼に家に送ってもらったあと、夕飯にパスタを食べた。
その後、薬を飲む飲まないで、母と旦那さんが激しく口論をした。
母は憔悴し、疲れて寝てしまった。旦那さんは泣いていたのでタバコを吸いながら話を聞いた。
4時間後に薬の服用時間だ。
色々あるが時間はいつもどおりに過ぎていく。

おやすみなさい。

励みになります。ありがとうございます。 サポートして頂いたお金は紛争孤児支援団体への寄付や、書籍やインディーゲームを買ったりするなど、個人的な使途に利用します。