父とコンビニ

 昨日は父を乗せて、病院だの薬局だのを巡った。父は余命宣告された末期がん患者である。両足がむくみ、歩くのもままならなかったのだが、昨日は少し調子が良かったようだ。

 父は「コンビニに寄る」と言う。あれ、さっき病院のローソンに行ったのに。「ローソンじゃいかんが?ファミマがえいとか。」「いや、どこでもかまん」別にからあげくんじゃなくファミチキが食べたいわけではなさそうだ。

 家の近所のローソンに立ち寄ると、ヨロヨロと出て来た父が手にしていたのは、何とロンピーの箱!そりゃ病院のコンビニには無いよね。ってか、この期に及んでまだタバコを吸うかよ?

 「まだ景色は冬やねぇ」父が言う。桜の咲く頃までに元気に生きてくれれば良いけれど。まだまだキャンプも行き足りていない。やりたいことは山ほどある。

 久々に外へ出て、父も良い気分転換になったようだ。訪問看護やリハビリの先生も来てくれるようになった。今だにタバコを吸っていることがバレたら腰を抜かされそうだ。父は「椿の様子を見てくる」と言い、どこかへ消えていった。

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