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アキのエッセイNo.27ー意味記憶による知識の暗記よりもエピソード記憶に基づく経験による学習を!

1.意味記憶とエピソード記憶とは?

こんにちは、アキです。

意味記憶エピソード記憶というものがあります。

前者は「特定の場所や時間に関係せず、物事の意味を表す一般的知識・情報についての記憶」です。

「地球は丸い」、「学校は勉強をする場所」など、一般的知識や情報、概念などがそうですね。教科書に記載されている内容を暗記で覚えることも、それら知識は「意味記憶」でしょう。

一方、後者は「個人的な経験や思い出のように、いつ、どこで、どんなことがあったか、といった出来事についての記憶」です。

つまり、エピソード記憶は「経験に基づいた記憶」と言えます。

※https://kotobank.jp参考


2.意味記憶による勉強の限界

意味記憶は1.にもあるように、一般的知識や情報、概念についての記憶であるため、それをそのまま「暗記」により覚えるしかありません。

もちろん、繰り返しその知識や情報について書字や言葉にして唱えることですり込み、記憶することは可能でしょう。

実際、私が学生の頃は、教科書や参考書、授業中ノートに書いた内容などを繰り返し復習して、テストに臨んだものです。そして、すり込んだ知識は一定の期間、頭の中に保存されます。

しかし、時間の経過と共に勉強したことが抜けて行ってしまい、いつの間にかほとんど忘れてしまったということがよくありまして。おそらく読者の皆様も経験があると思います。

刷り込みによる暗記では、記憶の定着が弱いということが明示されています。

ちなみに、自分は誰でここはどこかなど、毎日のようにその記憶について触れる機会があるものは割と忘れていません。それは、毎日その記憶に接することで刷り込みが強化されているからだと思われます。つまり、刷り込みによる記憶は繰り返さなければ定着できないということです。

また、いくら教科書等で分かりやすく解説してもらってもピンとこない。上手く理解出来ないといった現象も起こります。

医療系の大学の講義を例として挙げますが、とある疾患に対する治療手技について講義を受けたとします。図や写真を用いて解説してもらっても、いまいちよく理解出来ない。実際に実演してもらっても、後で自分でやってみると上手くいかない。というようなことが起こることがあります。

「見るだけの学習では、実際に行動に起こそうとしてもあまり効果を発揮しない」ということになりますが、それはなぜでしょうか?


3.エピソード記憶に基づく経験を通した学習の有効性

一方、エピソード記憶は経験に基づく記憶です。

百聞は一見に如かずと言いますが、まさにその通りだと私は考えます。

経験による記憶は、いつ、どこで、どんなことがあったか、といった出来事で構成されています。つまり、一般的常識や知識による記憶よりも「記憶を構成する要素が意味記憶よりもはるかに多い」という特徴があります。また、出来事を通して感じた印象や感情も付加されれば、さらに記憶が強化されるでしょう。

医療系大学の学生の臨床実習を例に挙げますと、脳血管障害の片麻痺患者さんをケースに持ち、関わることになったとします。教科書で習った症状を実際に見ることで、痙縮や関節拘縮、高次脳機能障害がどういうものかを体験します。筋の硬さや動きなど症状を出来事として記憶し学習します。その「見た経験」は「出来事で学習」したため、一般的知識として字面で内容がまとめられた教科書での学習よりもはるかに情報が多いことでしょう。そのため、記憶の定着が強いとも言えるのではないでしょうか。

ただし、「見る」という行為だけではまだ不十分と言えます。2.でも述べたように、「見るだけの学習では、実際に行動に起こそうとしてもあまり効果を発揮しない」からです。患者様の治療を行うということは、患者様の身体に触れて動きや状態を見るだけでなく触った感じや動きの抵抗感など、あらゆる感覚を駆使して臨まなければなりません。また、自分のあらゆる感覚を駆使し、関わりの中で起こった出来事(患者様との会話や、治療中の反応など)も含めれば、教科書等で学べる以上の知識や技術を、体験により習得できます

そして、様々なケースを体験することで、様々なパターンの患者様や、そのパターンに応じた対応方法についても学習出来ます。教科書で学ぶよりもはるかに多くの情報を得ることが出来る。経験に基づく学習が、教科書と睨めっこする学習よりもはるかに有効性が高いとは思いませんか?


4.実習においても学生に見学だけでなく、なるべく「体験」をさせるべき

ここまで、体験による、エピソード記憶に基づく学習の有効性についてお話ししました。

昨今の臨床実習では、「見学・模倣・実施」による順で学生に体験させるスタイルで臨まれていると聞きますが、見学中心になってしまい、上手く経験が出来ない学生もいらっしゃるのではないでしょうか?

私が実際そうでした。

指導者様との関係が良くなかったためか(とにかく私を全否定する方でした)、あまり患者様に関わらせていただけませんでした。

私も至らなかった点はあると思いますが、実習はいわば「臨床家になるための基盤作り」ですから、しっかりと体験させ、学習させる「義務」があると思うのです

「見ればある程度分かるだろう」とか、「患者様の治療を優先しなければならない」とか、学生をないがしろにするような考え方に私は賛同しません

リスク管理が上手く出来ず、関わらせるには危険だと言うならば、まず「リスク管理について教え、出来るようにその方法を実施させる」べきです。

きちんと患者様に関わり、セラピーが出来るように体験させること。まず、体験がなければ、十分な学習になりません

むしろ、学生に不十分な実習を受けさせて、世に放つほうがよっぽどリスクが高いです。

と、このような感じでまとめました。

いかがでしたでしょうか?

今回は「医療系の大学」、「実習」を例にお話しさせていただきましたが、他の分野でも「体験による学習」は有効だと思うのです。

読者の皆様

お読み下さりありがとうございます。




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