スキップ日和 #シロクマ文芸部
こどもの日の今日は学校が休みのため、僕はつい寝坊してしまった。
いつもより遅い朝ごはんを食べる眠そうな僕を見て
「こどもはいいわね」と、お母さんが言った。
僕のお母さんは時々「こども」である僕を羨ましがる。
正直その意味はよくわからないけれど、大人も色々あるのだろう。
だからこそ僕はずっと思っていたことをお母さんに言ってみた。
「じゃあお母さんもこどもに戻れば?」
するとお母さんは驚いた顔をして、それからちょっと困った顔をした。
僕にはお母さんが今どんなことを考えたのかは分からない。
でもそれでももう一度、お母さんに声をかけたくなった。
「僕と一緒にスキップ、する?」
お母さんはまた驚いた顔をしていたけれど
少し考えた込んだ後、何も言わずすっと立ち上がった。
「じゃあ僕の後についてきて」
まず最初に僕がスキップをする。
それに続いてお母さんもスキップをする。
それから僕らはただ一緒にスキップをした。
スキップをしたお母さんは息が上がってちょっと苦しそうだった。
それでもお母さんは珍しくはしゃいでいた。
そしていつもよりもいっぱい笑っていた。
そうか。
お母さんだって元々は「こども」だったんだ。
今は「こども」じゃない、お母さん。
でもたまにはこうしてスキップをして昔を思い出してみるはどうかな。
それにもしお母さんがこどもの頃の気持ちを思い出してくれたら
僕は今よりちょっとだけ、叱られなくなるかもしれないね。
それってすごくいいよね。
「そうだ、お母さん。今日の夜はハンバーグにしようよ」
「そうねぇ。お母さんもこどもの頃一番好きだったわ」
やった!今夜は僕の大好きなハンバーグだー!
僕は今日お母さんとスキップをした。
一緒にスキップをしたら大好物が手に入った。
どうやら今日はスキップ日和だったらしい。
ひと休みした後お母さんはもう台所へ、大人へ、戻っていた。
でもそのお母さんの後ろ姿が僕にはいつもと少し違って見えた気がした。
それから僕はひとりでもう一度、軽やかにスキップをした。
窓の外を見ると今日はスキップがよく似合う青空だった。
【おしまい】
***
今週のシロクマ文芸部でした🐨
最後に。
本日5月5日は「こどもの日」ということで
前回の記事で描いた鯉のぼりのイラストで締めさせていただきます🎏
ではまた。