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書道と書写(習字)の違い

書道とは何か?」に書いたように、
多くの書道にあまり関心のない方たちにとって、
「書道」「書写」「習字」は同意語ですし、それでよいと思います。

「書道を始めよう」という方には、まずこの違いをよく知ってほしい。
「書写」は「書道」のほんの一部なのです。

書道は中国4000年の歴史であり芸術

高校において、書道は芸術科目に分類されます。
書道は、音楽、美術と同様に、自分を表現するためのものなのです。

高校書道の教科書を開いてみると、そこにはまず、
漢字五体(楷書、行書、草書、隷書、篆書)とかな文字の説明があります。
書道は中国4000年、日本2000年の歴史の中にあります。

書道の学びは、文字の歴史を学ぶことと言っても過言ではありません。
先人たちが残した書(=古典)を真似して書くことを、
「古典臨書」と呼びます。

高校の書道教科書をさらに進んでみると、
自分の好きな言葉を表現しようというページも見つかります。
こちらを「創作」と呼びます。
書道が芸術科目に置かれる所以です。

つまり、書道には「古典臨書」と「創作」があり、
「古典臨書」が、「創作」が本番といった位置づけとなります。

先人たちから学んだことを自分の中で昇華し、
今に生きる自分を自由に表現するのが「書道」と言えるのです。

心のままに表現する書道においては、
「読みやすく書くこと」は「心を抑えること」という面もあり、
必ずしも読みやすさは必要とされない世界なのです。

書写は現代の文字を読みやすく書くこと

一方、書写は小中高校において国語科目に分類されます。
「言葉を伝えること」が第一の目的であるのです。

当然のことながら、書写において、文字は読めることが大前提です。
「丁寧に書きましょう」「整えて書きましょう」という先生の言葉は、
この発想が根本にあるからです。

「読めること」というのは、さらに言えば、
「21世紀の日本で読めること」ということになります。

戦前までは、日本で1000年以上、
手紙などの実用的な文書で使われていた「草書」も、
自由に書ける読める人がたくさんいましたが、
残念ながら、そのスキルはこの50年であっという間に失われてしまいました。

ですから、今の日本で読めるというと、
「楷書」がメイン、「行書」も少しやりましょうという感じです。
書写の世界で、「隷書」や「篆書」が学びの場にあがることは
とても珍しいと思います。

「習字」という言葉もありますね。
もともと寺子屋で「文字を習う」という意味で使われていただろう言葉ですが、
今では「書写」と同じような使われ方をしていると思います。

つまり、現代の文字を扱う「書写」「習字」は
長い文字の歴史を扱う「書道」のほんの一部ということになります。

自分に合ったテキスト選びを

書道は文字の歴史であり自由な表現、
書写は現代の文字を読みやすく。
自分で学びたいと思ったときには、まずこれをよく理解することです。

本屋さんに行くと、書道コーナーにはたくさんの本が並んでいます。
書道のものも、書写のものも混ざっています。
もちろん、両方の要素がmixされたものもたくさんあります。

古い文字の世界を学んで、アート表現ができるようになりたい!
と思う人は、さまざまな筆遣いを教えてくれる
「書道」のテキストを選びましょう。

今の日常の文字を、整えてきれいに書けるようになりたい!
と思う人は、「書写(=習字)」のテキストを選ぶとよいでしょう。

まずは、自分がどんな世界が好きなのか、よく知ることです。



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