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サッカーでひも解く女性アイドル~乃木坂46は、マンチェスター・シティだった~

「そんなにサッカー見ていていったい何の役に立つの???」

ある人からそう聞かれたことがある。

僕つじーがサッカーを見ているのは、仕事でもなければ義務でもない、趣味だ。そもそも趣味は何かの役に立つためにするものではない。
極論言えば、役に立つから趣味をはじめるなんて、本末転倒だとすら思っている。

その反面、サッカーを見ることに僕は人生の多くの時間を割いている。
これだけ時間を割いているのだから、少しは何かの役に立って欲しいという思いもある。

例えば、サッカーのおかげで知り合いや仲間がたくさん増えた。OWL magazineのメンバーもそうだ。
僕のもう一つの趣味は読書だが、読書をすることで知り合いは一切増えなかった。

今回は、僕がサッカーを見続けたことがあることの役に立った話をしたい。

それは、乃木坂46を応援することだ。


病んでるときのアイドルは麻薬

僕が乃木坂46を応援していたのは、2014年頃から2017年2月20日までの3年間ちょっとだ。

あの頃を振り返ってみると、僕は病んでいたのだと思う。思考や認知が変に偏りを見せており、メンタルが不安定だった。

自ら立ち上げ、心血を注いてきたサッカー観戦サークルの運営に失敗したと思い込み、半ば追われるようにサークルを手放さざるを得なかった、と被害者意識にまみれていた。
後輩をはじめメンバーには、裏切られた思いでいっぱいだった。今はまったくそんなことないのだが。

サークルという軸を失った僕は、何にも力を注ぐことができず無気力な存在だった。自分の力量のなさと理不尽な思いをしたこと(と、当時は思い込んでいた)の狭間に思い悩んでいた。
そんな中で留年もしたし、就活もさっぱりうまくいかなかった。

そんな頃、僕の心を唯一の満たしてくれたのは、きらきらと輝く乃木坂46だった。

握手会にもライブにもめったに行かない「在宅」だったが、CDは毎シングル買った。
メンバー全員のブログや、雑誌のインタビューは、くまなく読み込んだ。
冠番組は当然チェックし、メンバーが出演するラジオ番組も探しては聴いた。

誰かが言ったかわからないが「病んでいるときのアイドルは麻薬」という言葉があるらしい。
間違いない。病んでる僕にとって、乃木坂46は麻薬だった。

あのとき僕を救ってくれたのはサッカーでも本でもなく乃木坂46だった。

サッカーもアイドルもチーム競技だ

乃木坂46を応援し始めて気が付いたことがある。

乃木坂46は、サッカーチームに似ている。

僕が応援していた当時の乃木坂46は、35~36人くらいだった。
これはちょっと規模が大きいサッカーチームの選手人数と同じくらいだ。

乃木坂46には、選抜制度があった。シングルの表題曲を歌うメンバーだ。
選抜に選ばれなかったメンバーのことをアンダーメンバーという。
また、選抜に選ばれたメンバーの中から福神と呼ばれるメンバーが何人か選出された。
福神は、優先的にシングルリリースの番宣に出演したり、ダンスのフォーメーションでは中心にいたりなど、シングル活動期間中は乃木坂46の顔として活動する。

福神、選抜、アンダーという序列は、サッカーチームに当てはめられると思っている。

福神=スタメン
選抜=登録メンバー入り
アンダー=ベンチ外

奇しくも、選抜メンバーはおよそ18~20人ぐらいだ。
これはサッカーの試合の登録メンバーである18人とほぼ一致する。
また福神も7~10人程度で構成されており、サッカーのスタメンである11人と数が近い。

乃木坂46のみならずアイドル、アーティストがシングルを出す目的を定義すると「より多くの人に自身の音楽を届ける」ことだ。

現代ではどれだけより多くの人に音楽を届けられたかを表す指標がいくつかあるが、一番分かりやすいのはシングルの売上枚数だ。
つまり乃木坂46にとっての試合は「どれだけシングルを売り上げられるか」という勝負になる。
そのためにメンバー総出で様々な活動をするのだ。メンバー間での協力も不可欠になる。アイドルはチーム競技なのだ。

対して、メンバー間では自分が選抜に入る、福神の入るための競争が水面下で行われている。アイドルは競争社会でもある。

サッカークラブも乃木坂46も勝負のためにチームとしてまとまらないといけない反面、チーム内で競争があるのだ。

これに気付いたとき、僕はサッカーの見方や応援するスタンスが乃木坂46を見たり、応援することに生かせるのではないかと思った。

人気だけでスタメンを決めていいのか

メンバーの人気を図る大きな指標の一つに、握手券の売り上げがある。

握手会には枠というものがある。
メンバーによって、どれだけ握手券が売られるか決められているのだ。
あまり人気のないメンバーが大量の握手券を売っても余ってしまい、実際の握手会で手持ち無沙汰になる。だから枠を調整することで、ある程度客の出入りをコントロールする。
つまりどれだけ握手券が売られているのかは、メンバーのファンからの人気を測る指標になる。

かつて、生駒里奈というメンバーがいた。現在は女優として活動しており、最近はドラマ『真犯人フラグ』に出演している。


ここからは、有料公開にさせていただきます。
旅とサッカーを紡ぐWebマガジン・OWL magazineでは毎月700円(税込)で個性あふれる執筆陣による記事を毎日読むことができます。
執筆陣には、OWL magzine代表の中村慎太郎、ノンフィクションライターの宇都宮徹壱さんの他、川崎フロンターレや鹿島アントラーズ、北海道コンサドーレ札幌、ヴァンフォーレ甲府、V・ファーレン長崎、東京武蔵野ユナイテッドFCなどなど全国各地のサポーターが勢ぞろいです。

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