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初の単著『the moment of SLOW LIVING 写真で紡ぐ、暮らしの時間』を出版します

はじめに

初めての単著である『the moment of SLOW LIVING 写真で紡ぐ、暮らしの時間』が2月17日にインプレスより出版されます。これまでも共著はいくつか出していますが、今回はコンセプトも内容もこれまでとは異なるタイプのもの。この本は、自分がこれまで向き合ってきたことをまとめた一冊とも言えます。その内容と背景を紹介したいと思います。

「暮らし」をテーマにした写真の本を作ろう

今回、いつものテーブルフォトとは少し違う視点で執筆しました。写真だけを見たらテーブルフォトに見えるかもしれませんが、テーブルフォトというのは、何もない状態から全てを作り上げるものだと私は思っています。今回の本は、スタイリングして作り込んだフードフォトを撮りましょう、ブツ撮りのテクニックを教えましょう、というものではありません。仕事の撮影スタイルを紹介しているページもありますが、大半が、そこにある暮らしを思い通りに切り取るためのちょっとしたコツを書いたものです。

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私がこれまで切り取ってきたのは、朝食、コーヒー、うつわなど、毎日家の中で目にする光景や、暮らしそのもの。私が暮らしを切り取り始めた9年前は、まだSNS上でそういう写真を撮る人は少なく、ブログなどで写真とともに暮らしを紹介する方が主流だったように思います。(私自身、SNSを始める前は、ブログで好きな料理やテーブルウェア、インテリアなど暮らしにまつわるものを紹介していました。)しかし今や当たり前のようにみんな自分の暮らしを切り取ってアップする時代になりました。ライフスタイルに関心を持つ人も随分増えたように感じています。ならば、それをテーマとした指南書があっても良いのでは、というのが今回のコンセプトの背景です。

暮らしを切り取り始めた理由

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私にとって、写真を撮る撮らないに拘わらず、「心地良い暮らし」は自分の人生のテーマでもあります。「心地良い」の基準は人それぞれで、自分にとって心地良いかどうかが大切なのですが、私はこれまで、空間作りから、体に取り入れる食材まで、自分にフィットしているものを選び、自分なりの心地良さというものを日々追求してきました。だから写真を撮る以前に、「暮らしそのものが大切」というのが大前提としてあるわけですが、そんな自分の暮らしを切り取り始めたのには理由があります。たまたま立ち寄ったインテリアショップの企画展での、中園晋作さんのうつわとの出会いがきっかけでした。本の中のコラムでも紹介していますが、中園さんのうつわに一目惚れして、うつわの魅力を自分の手で伝えたいと思うようになったのです。「魅力を伝えるためにオンラインショップを始めよう、そのために写真を撮ろう」 それまではただの趣味だった写真に、そこで初めて目的が生まれました。ただ写真を撮るだけでは魅力が伝わらないかもしれない... 自分の日常ごと切り取って、実際にそれを使うシーンを想像してもらえたらと思い、暮らしを切り取るようになりました。
お店も写真も、私にとっては、プロダクトか手仕事のものかに拘わらず、自分が良いと思う"もの"を伝えるための手段であると思っています。どういう手段を取るかは私にとってはそれほど重要ではなく、自分にとってできることを選んだ結果、一つの答えが「写真」だったように思います。だから、もしかしたら今後、その手段は変わっていくかもしれません。でも手段がどうあれ、ものづくりの良さを伝えたいしサポートしたいという気持ちは変わりません。そこに少しだけ自分の表現というものを加えて、伝えていきたいと思っています。

写真が暮らしをより豊かにする

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日記を綴るように暮らしを切り取り続けて9年。その経験から、写真と暮らしは親和性が高いものだと感じています。写真を始めたのは10年以上前ですが、日常を切り取るようになって、より写真が身近なものになったように思います。日常を切り取る楽しみを知るだけでなく、より自分の暮らしと向き合うようになります。写真を撮るということは、その対象をよく観察するということです。よく観察すれば、その対象により愛着を持つようになるものです。そうして写真が暮らしを豊かにし、暮らしを切り取ることで写真がさらに身近なものになり、もっと楽しいものになるのではないかと思います。この本は、日々の暮らしを楽しみたい、興味がある、という方にぜひ読んでもらって、役立ててもらえたら嬉しい、そんな思いで執筆しました。その他、料理や作陶など、暮らしに纏わるお仕事などをされているような方にもマッチする内容だと思います。

本の中身を少しだけご紹介

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それでは、本の内容を簡単にご紹介したいと思います。この本は1章〜4章の4部構成。1章は「暮らしを写すためのスタイリング」がテーマです。あくまで写真の本なので、写真を撮ることが前提になっているのですが、1章の前半はテーブルコーディネートの楽しみ方として見ていただける内容になっています。後半はコーディネートしたものを写真の中でどう見せるかという、スタイリングの話です。私が普段写真を撮る中で意識していることを紹介しています。1章は、スタイリングが苦手な方のヒントにもなると思います。飲食業の方にも見ていただけたら嬉しいです。
2章は光の基本的な使い方と構図の基本について。スティルライフフォト、特にテーブルフォトを学ぶ上で避けては通れないパートです。ここだけの話ですが、逆に言えば、暮らしに興味がないけれどもテーブルフォトを撮りたい!という方は、最低限ここだけ読んでおけば大丈夫という章でもあります。自然光で撮る場合にどういうところに気をつける必要があるのかなど、普段見落としがちなことにも触れています。配置が苦手な方、構図を作るのが苦手な方にも是非読んでいただきたい章です。すぐに使える配置のメソッドなどにも触れています。
3章はこの本のメインパートです。暮らしのシーンを切り口に、TIPSを紹介しています。この章は、興味があるページをめくり、レシピのように使ってもらえたらと思ってます。私の経験に基づいた内容で、どれも普段実践していることです。自然光は再現性が低い光です。シャッターを切った次の瞬間には光が変わっていることが多々あります。それでも、シーンごとに私が意識していること、大切にしていることなどは変わりません。暮らしを切り取るときのヒントになるようなことを書いているので、日々のカメラライフに役立ていただけたら嬉しいです。
4章は写真の基礎に関すること。苦手意識があってこれまで避けてきた方、なんとなく感覚に頼って撮ってきた方にも読んでいただきたい章です。面倒に思うかもしれませんが、基礎を知ることは、思い通りに撮るための近道になる場合もあるのです。私の機材やRAW現像のステップについても触れているので、ご興味があれば見てみて下さい。

おわりに

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最後に、本では触れなかった、写真を上達させたい方へのメッセージを残しておきます。毎日写真を撮っていると、その度に学びがあります。思い通りに、好きなもの、日々の暮らしを記録に残したいと思うなら、できるだけ沢山撮ること。暮らしを切り取るのに特別な被写体は要りません。本を片手に、身近なもので実践してみてください。そして思い通りに撮れたら、何が上手く行ったのか、どの部分が良いと思うのか、逆に思い通りに撮れなかったら、どの部分がだめだったのか、細かく記録しておくこと。自分の写真を分析して、記録をつけてみると、それが次回思い通りに撮るためのヒントになると思います。この本が皆様のお役に立てたら嬉しく思います。カメラライフがより楽しいものになりますように。そして、写真を撮ることで、毎日の暮らしがより豊かで愛おしいものになることを願って。

そして、この場をお借りして... 本の出版にあたり、企画段階から制作に関わり、多くの知恵をご提供くださったXICOの黒田明臣氏、編集をご担当くださり、丁寧に向き合ってくださったインプレスのW氏、拘りが強い私の我儘を聞き入れてご対応くださった細山田デザイン事務所の細山田光宣氏と奥山志乃氏、素敵なイラストを添えてくださったイラストレーターのShapre氏、温かいサポートをしてくださるXICOの皆様、撮影協力くださったdecoraさんや作家の皆様、応援や助言をしてくださる友人の皆様に、心より感謝申し上げます。


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