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言葉の意味を知りたい、その根底にある想い (舟を編む/三浦しをん)

松田龍平さん主演で映画化もされた名作「舟を編む」。
私はあらすじを全く知らないまま読み始めたのですが、読み終わって、辞書作りに必要な膨大な労力とその熱意に圧倒されると共に、”言葉”を使うことについて改めて考えさせられました。

自分が作品を通じて考えたことを、印象に残った言葉たちと共にごしょうかい。


言葉を自分のものにする

自分のものになっていない言葉を、正しくは解釈できない。
(文庫 舟を編む p71)

これまで恋をしたことがない主人公馬締が香具矢を好きになった時、初めて「恋」という言葉が自分のものとなり、語釈を綴るシーンが印象的です。

本を読んでいると、自分が初めて知る言葉が結構あります。
これまで知らなかった言葉も本で繰り返し出てくると知ったような気になり、試しに生活の中で使ってみたりする。だけど、いまいちしっくりこない。
この言葉ってどういう気持ちで使うんだろう?想像力を働かせながら、いつか理解できた日に使えるよう、自分の引き出しに仕舞っておく。
いつかその言葉が自分のものになったら、あの時本で読んだ気持ちはこういう気持ちだったんだと、その本が当時とはまた違った意味を与えてくれる気がします。


人と繋がりたくて、言葉を紡ぐ

私は本を読み終わった後、実写化された映画も鑑賞しました。
松田龍平さん演じる馬締、宮崎あおいさん演じる香具矢。その他のキャストもイメージにぴったりで、原作の読者を裏切らない素晴らしい作品でした。

その映画の中で、松本先生が”言葉”について語っている内容がとても心に残っています。

言葉の意味を知りたいとは、誰かの考えや気持ちを、正確に知りたいということです。それは、人とつながりたいという願望ではないでしょうか。

引用元:https://www.eiga-square.jp/title/fune_wo_amu/quotes/3

全くその通りだと思いました。
人に何かを伝えたいと思ったとき、相手に気持ちを正確に伝えたくて、自分の中から言葉を一生懸命選んだり、上手く表現できなくて色々な言葉を使っているうちに話が長くなってしまったり。
それでも、一つ一つの単語の意味を相手が同じように感じているのかはわからない。でも伝えたい。その根底にあるのは、”繋がりたい”という想いなのだと、改めて考えせられました。
完全に理解してもらうのは難しいと分かっていても、この努力は多分一生続けてしまう。それくらい、人と繋がりたいという気持ちは、自分の根底にある強い想いなのだと思います。

本の中では、辞書編集者の作業内容が本当に事細かに表現されています。辞書を完成させるために、実際に編集者がこれほどの時間と労力を割いているのだと知ると、今後辞書を読むときに背筋が伸びる想いでした。
一方で、辞書作りの大変さがこれほどまでに読者に伝わるように作品を書き上げている筆者さんも本当にすごい。この作品を作り上げるためにどれだけの取材をされたのだろう、とその努力を想像せずにはいられません。


読み終わった後、自分の使う言葉一つ一つの意味を改めて考え、自分に合う辞書を探しに行きたくなる一冊:)


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