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親子で通えるフリースクール「福岡てらこや あそび」

こどもと、おとなが、つながりあって 
“あそび” のある学びが生まれる。

たくさんの人を迎え入れられるよう、障子や襖を取り払った広間。畳に座って、同じ目線で語り合える場所。「福岡てらこや あそび」は、こどもやその親たちの居場所を作ろうと、代表の新里美帆(しんざと みほ)さんが幼い頃に暮らしたご実家を開放して始まりました。

“あそび” にこめられた意味は、余白。おとなたちが自らの能力的・時間的余力を持ち寄り、ムリなく協力し合って、こどもと向き合うこと。育児の課題を直線的にとらえず、ゆとりをもって見つめること。リラックスすることで思考の束縛から解放され、前へ進めるようになること。そうした“あそび”のある環境づくりを、集うみんなが目指しています。

「人が集まるだけで、そこは学びの場になるんですよ。」と語る新里さん。ここには、学育の先生、体育や書道や絵画の先生、教授、大学生、畑仕事を教えてくれるご近所の方など、さまざまなおとなが集まって、学びの場を築いています。「でもやっぱり、あそびこそが最高の学びです。あそびに関しては、こどもは優秀ですから、おとなのほうが学んでいます。」とおっしゃるとおり、おとながこどもから気づきを得るなど、有機的につながりあって豊かに学びあう関係ができているようです。

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自分がまるごと肯定される 
やさしい環境を提供したい。

てらこやの発足は、ヨーガ講師である新里さんへの周囲のお母さんたちからの働きかけがきっかけでした。そんな新里さんの原点にあるのは、ご自身がこどもの頃、学校になじめなかったという経験です。感受性が豊かだった新里さんは、小学生の時から学校に居心地の悪さを感じ、私立の中高一貫校へ。しかし、そこでさらにストレスを抱えることになります。先生からも同級生からも「変わっている」と言われる日々。ところが高校2年生の時、ダブルスクールで通い始めた美容学校の校長先生から「あんた、いいじゃん」と言われたことから、新里さんは変わりはじめます。自分をまるごと肯定されるという、初めての経験。似た価値観をもつおとなと出会い、好きな人とつながりあえれば生きづらさを感じないことに、新里さんは気づいたのです。

「こどもたちには、自分とフィットするおとなと出会ってほしい。だから、てらこやには多様なおとなにいてほしい。おとなが多様だと分かれば、こどもは生きかたの選択肢が広がるんです。」

集うおとなが個性的であれば、こどもだけでなく、その親にも気づきがもたらされると新里さんは言います。多くの親は、わが子が「普通」から外れることに気を揉みがちですが、充実して生きる個性的なおとなたちをたくさん見ると「普通なんてものは、ない。」「この子は、この子のままでいい。」と感じ、安心できるそうです。

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色とりどりの人々がいるから
「私は私のままでいい」と思える。

福岡てらこや あそび は、福岡市内の小中学校6校の出席認定が得られるフリースクールです。繊細な子、勉強への苦手意識を植えつけられた子、逆に勉強ができすぎる子、学校のシステムに違和感を抱いた子、いじめを経験した子など、何らかの理由で学校に行きづらくなり自信や意欲を奪われたこどもたちに、自分を立て直すための環境を整えています。

不登校により学習の機会を損失したこどもたちは、学校のカリキュラム通りの学習過程になく、字を書くことからも遠ざかっています。そのような状況では早急に勉強にとりかかるより、まず学びへの興味を引きだすことが大切だというのが、てらこやの考え方。ひとつの空間に勉強とあそびを共存させ、こどもたちが関心を持てそうな要素を散りばめて、その気になったら勉強できるような環境を揃えています。たとえば、耳から入る勉強が得意なら耳から、パソコンに興味があるならパソコンから、というように、多様な学習の入口を用意しているのです。

てらこやで主に学習指導にあたっているのは、「おさ塾」を運営している長洋平(おさ ようへい)・涼子(りょうこ)先生と、加藤雅人(かとう まさと)先生です。先生たちは、ゲームなどを通してこどもと打ち解けあい、前向きな思いを引き出してから、じっくり時間をかけて勉強に取り組むスタイルを守っています。無理に心の扉をこじ開けることも、高すぎるハードルを設けておびえさせることもありません。また、ホーム・スクリーニングのアドバイスも行い、親たちが抱える家庭教育の悩み相談にも乗っています。

一般的なこどもよりも興味関心が進行しているこどもには、福岡大学工学部の松隈洋介(まつくま ようすけ)教授が学びの刺激を用意し、量子力学や相対性理論などを、こどもにもわかりやすいようにお話ししてくれます。多様な人が集まるてらこやは、学習のありかたも多様。「この学年だから、これを学ぶ」という決まりからも自由です。

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こどもを支える親を、まず支える。
親子参加型のフリースクール。

こどもが学校に行けないとき、その親、とくにお母さんは365日24時間、休む暇のない日々が続きます。また、学校に行けない自分を責めつづけて苦しむわが子のようすに、お母さんの心は激しく共鳴して揺らぎはじめます。てらこやでは、不登校支援には親へのサポートこそ重要だという考えから、親子での通学を受け入れています。こうした親子参加型のフリースクールは、福岡市内では「福岡てらこや あそび」だけです。

長年ヨーガに携わってきた新里さんは、ヨーガを「カラダを整えることで、心を整える技術」ととらえ、悩めるお母さんたちに教えてきました。しかし、わが子の不登校に悩むお母さんたちには、ヨーガに向き合えるほどの心の余裕や時間はありません。そこで新里さんは、認知行動療法を本格的に学び、これに古典ヨーガの理論を採り入れた独自メソッド「スイッチマインド」を体系化して、お母さんたちの心のサポートに取り組み始めました。実は新里さんには、社会人になってから心因性の繊維筋痛症に悩まされ、ヨーガと認知行動療法によって寛解させた実体験があります。そのリハビリ過程で確信したのが「思考を整えると、心は整う」ということでした。

新里さんは、こう語ります。「心とは脳のことです。悩みは、脳が混乱して情報処理が追いつかない、つまり思考を整理できないために起こります。スイッチマインドでは、思考を言葉にして整理し、課題を目に見える形にして、その処理をタスク化します。悩みと思っていたものが、未整理の情報だったと気づくと、人は心がすっきりするんです。また、悩みの原因が社会に押しつけられた常識だったと分かると『そんなことで私が悩む必要はない』と気づいて、手放すことができる。悩みの断捨離ですね。このスイッチマインドが自分でできるようになると、誰にも頼れない緊急時にも自分を救えるようになります。」

ただスイッチマインドも、こども または親に発達の偏りがあると うまくいきません。そこで、てらこやでは課題がどこにあるのかを読み取って丁寧なアプローチを行い、場合によっては医療関係者とも連携して細やかにケアにあたっています。また、ネウボラ(フィンランド語で「相談の場」の意)というお母さんのためのオンライン版てらこやをSlack上に設けて、いつでも相談に乗れるようにしています。

親子で てらこやに通うお母さんの一人は「親のためのこうした居場所があることを、お母さんたちに知ってもらいたい」とおっしゃっていました。まずは親が安心できることが、不登校の苦しさから抜け出す第一歩。リラックスという心の“あそび”が、前進のための原動力となるのです。

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こどもが自立のチャンスをつかめる、
包容力ある社会を、みんなで。

いま全国で不登校のこどもは小中学校あわせて18万1271人(2019年度 文部科学省調査)。小学校で0.8%、中学校で3.9%のこどもが不登校になっていますが、その中でフリースクールに通うことができているこどもは、たった7,000人ほどです。不登校の一歩手前にいるこどもを含めると、中学生の場合は約33万人に上るとされ(2018年 日本財団調査)、いつ誰が不登校になってもおかしくない時代です。フリースクールが大切な選択肢のひとつとして世の中に浸透することは、多くのこどもたちの救いにつながるでしょう。

ただ、フリースクールは民間運営であるため利用には授業料等が必要であり、家庭にかかる経済的負担が課題のひとつとなっています。国や地方公共団体が負担している教育費は、公立学校の児童生徒一人当たり、小学生882,000円・中学生105,200円ですが(2021年現在)、この税金はフリースクールに通うこどもたちへのサポートには充てられていません。通わせたくても授業料を払うのが難しい家庭は断念せざるを得ないのです。一方、こどもたちを支えたいフリースクールは国からの支援がないため、その多くが募金やボランティアで運営を成り立たせています。「福岡てらこや あそび」も財源が乏しく、2022年2月にNPO法人化を予定していますが、クラウドファンディングなどで一般からの支援を必要としています。

もうひとつの課題は、フリースクール情報が現場の教諭一人ひとりにまで必ずしも行きわたっていないことです。教育委員会が作成したフリースクール一覧は学校には配布されていますが、学校内での周知徹底がなされるかどうかは、校長や教頭の不登校対策への意識に左右されます。もし、フリースクール一覧が現場教諭の手元にない場合、こどもの不登校傾向に気づいたり、保護者から相談を受けたりしても、フリースクールという選択肢を提示できないこともありえます。

私たちおとなたちにできることは、フリースクールに対する意識や働きかけを新たにすることかもしれません。フリースクールとは、こどもが自分を肯定できる場所であり、自立のチャンスをつかむ場所です。こどもが安心して通いつづけ、その親も気兼ねなく通わせられるよう、周囲のおとなたちや先生たちが理解し支えていく必要があるでしょう。また、誰もが利用する可能性のある場所なのに国の支援がなされていないことについて疑問をもち、社会提案をつづけていくことも大切だと思います。


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福岡てらこや あそび  代表 新里 美帆さま

★ 「福岡てらこや あそび  概要

■ 開催日時
 月・火・木・金曜日 13:00〜18:00
■ 対象・定員
 対象:6歳から18歳のお子さまとお母さま
 定員:お子さま15名まで(2021年3月時点で 5名 受入れ可)
■ お問合せ・アクセス
 福岡市南区皿山2-1-57
 Tel. :092-511-4622
 Mail:teracoyaasobi5610339@gmail.com
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