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Local Vitalization Cooperator④三条市で絵本屋さんを立ち上げるまで【絵本の店 omamori まるのさき】
はじめまして。2022年7月1日から新潟県三条市の地域おこし協力隊に着任したばかりのまるのさきと言います。私は三条市に暮らし始めて2ヶ月目、地域のみなさんに日々ご挨拶しながらここでの暮らしに少しずつ慣れてきました。さて、この場では改めて自己紹介させてもらいます。
私は生まれも育ちも埼玉。東京で就職し、会社員の傍ら絵本作家として活動してきました。今も絵本制作を行いながら、この地で新しい絵本屋さんを立ち上げようと移住してきました。地元を離れてまでもなぜ絵本にこだわるのか、と言いますと私自身絵本の可能性を信じていて。その絵本によって心の拠り所が生まれ、救われた一人だからです。
絵本業界は事実、出版不況とされる現在であっても規模と売上が好調に伸び続けています。絵本の多様化を機に、従来の子ども向けから大人の感情も揺り動かす作品が増え、たくさんの人たちにとって心の拠り所になっているからでしょう。今回、三条市を初めて訪れ、暮らした上でこの地に根付いて絵本屋開業に向けて決意した思いをお届けできたらと思います。
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絵本の店「omamori(店主:まるの)」SNSアカウントはこちら。
大人になるまで絵本は読まなかった私。
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一冊の絵本によって昔、苦しい日々を救ってもらえたので。だから、絵本屋を立ち上げたい、ではなくてね。私みたいに絵本の力で、誰かの心の拠り所ができたらと思うんです。
そう言いながら静かに語りはじめるのは、2022年7月から三条市の地域おこし協力隊兼「絵本の店 omamori」店主のまるのさき(以後、まるの)。柔らかな表情から読み取れない、その想いを過去を振り返ってもらいながら紐どいていこう。
もともとは子どもの頃から絵が描くのが大好きで。大学生、社会人となっても絵を描くことは、どこか身近なものでした。絵を描くのが好きであっても、もっぱら小説や漫画ばかり読んできて、絵本自体は何十年も読んでいませんでしたし。「絵本って、子ども向けでしょ」と思い込んでいたんです。
社会人1年目は自ら希望する企業に就職できて働くのが楽しかったというまるの。仕事にも慣れてきた頃、環境の変化に対する疲れがどっと出てきたそう。
当時を振り返ると会社勤めは楽しかったものの、怒涛に働く人たちが集まる会社だったため、人間関係を構築するための時間が足りず、知らず知らず疲れ果てていました。
「辛いし、寂しい」、仕事に対する小さな不安な気持ちを吐き出せれば良かったんですが、気を遣ってしまい相談するのも躊躇してしまう。不安がどんどん募る中で、知人が私の姿に心配して絵本をプレゼントしてくれたんです
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パトリック・マグドネル作の「おくりものはナンニモナイ」、今でも人生を変えた一冊だと思っています。2020年から続く、コロナ禍での閉塞感に対してもこの絵本で光を見出すことができました。
絵本好き暦は浅いものの、私にとって絵本はかけがえのない存在ですし、その力を100パーセント信じています。ただあくまでも一個人の感想であって、誰もが享受できる場はそう多くない。いろんな人にとって、絵本は意味があるものかを試したいと思い、三条市での活動を選びました。
誰かのために手を差し伸べたい。
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真っ直ぐな志を持ち、ファーストステップである三条市での絵本屋さんの立ち上げに奮闘するまるの。三条を訪れてからは、「誰かのために」と思い浮かべながら、絵本の魅力をどう伝えようかと取り組む。その行動力の原点はどこにあるのかと本人に聞いた。
大きな転機となったのが、大学1年時に初めての海外旅行としてインドを訪れたことです。
入学時は文学部を専攻し、あまり人と違うことはしない大人しい性格でしたし、海外を一人旅をするようなタイプではありませんでした。でもその頃、親に不幸があって家族の向き合い方をすごく悩むようになりました。死生観や有限な時間……考えても考えても答えが出ないことに悩み、悲しみから気をそらすため、大きく環境が異なる場所へ行ってみたいと思い、勇気を出してインドへ向かいました
インドに訪れて衝撃だったのが物乞いの文化。老若男女、道端で物乞いされる人たちが当たり前のようにいっぱいいて。小さな子からお年寄りまで居る中で、「もしも、物乞いしてる人たちが明日死ぬとしても、私はお金を渡さないのかな」って考え始めて。
なぜかというと、旅行時のガイドブックには「物乞いにお金をあげることは彼らのためにならないのため、あげてはいけない」と注意書きがあり、私はその”常識”を疑っていなかった。でも、物乞いの文化にふれてみて、ある種教科書的なマニュアルに従うのではなく、自分の目で見て考えることの大事さを知ることができました。
まるのは以後、国籍と異文化問わず多くの人や価値観との出会いを大切にしてきました。例えば、NPO法人や海外向けのボランティア団体に属し、現地でのインフラ整備(コンクリート舗装等)や貧困家庭を対象とするチャリティ活動に尽力します。その過程で、自分にとって本当に大事なものが見えてきたと言います。
大事なもの。誰かにとって心の穏やかな状態を保つには、自分にとって、支えとなる小さなお守りをいくつも見つけることです。
私にとっては絵本であって、家族のかたちであって、海外での体験で学んだ融通無碍(ゆうずうむげ)な文化であったり。すべてが私をお守りのように支えてくれていますし、一人っきりでは発見することさえできなかったことだと思います。
絵本の店 omamori ではお守りのようにささやかで控えめで、普段はただそばに置いてあるだけで。でも、しんどいときに読むと少しだけ心を守ってくれて、「大丈夫だ」と安心させてくれるような。そんな絵本をお渡ししたい。また、ゆくゆくは絵本を誰かに贈ることで生まれる、温かな想いの伝播をまちの文化として伝えられる場にもしたいと考えています。それが、誰かを支えるお守りを発見してもらうための、私なりの手の差し伸べ方だと思っています。
情熱の赤に包まれる、三条市と「地域密着型の絵本屋」の可能性
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ここまで読んでもらい、どうして三条市で行うのかと疑問に思われる人もいるでしょう。まるの自身、「三条市で無かったら、きっと独りよがりな絵本屋さんになっていた」と語ります。
三条市に暮らし始めて驚いたのが、新しいことにチャレンジする人たちがいっぱいいることです。直近では市街地に複合施設「まちやま」が誕生したり、新しいチャレンジに貪欲であって、しかも伝統や歴史をも大事にする二面性がある人たちばかり。
まさに情熱の赤のイメージ。エネルギッシュな人たちがあふれているまちだと思います。だから、私のような「絵本をきっかけに誰かに手を差し伸べたい」という想いを応えようとしてくださる人が多いのかもしれません。
日本各地では絵本屋さんを立ち上げることに対して、ポジティブな印象を持ってくれる地域ばかりではありません。しかし、まるのの想いに応えようと真剣に考えてくれる、チャレンジャーたちが三条市には多いのです。「でもね。唯一、三条市は苦手な虫が多いのがちょっと…ね」と茶目っ気に笑うまるの。
開業予定の空き家がようやく見つかって、これから私自身で手を動かし、DIYすることが増えてくると考えています。楽しみであって不安でもありますが、一緒に作り上げていく人たちがいることは心強いです。
開業(11月予定)までの準備期間を活用して、イベント出店をしようと考えています。やっぱり絵本の店 omamoriについても、たくさんの人に知ってもらいたいからです。例えば、8月28日に開催される「まちなかワークショップ」では、市民参加型の巨大絵本づくりワークショップを開催します。
正直、ワークショップを企画し行うのは初めてなので本番の日まで「本当に楽しんでくれるのかな」とドキドキしています。コロナ禍では閉塞感や孤独感が簡単に増幅してしまう環境下でもありますし、今回のワークショップを通して、自由に表現する楽しみや心の解放を伝えられたらと考えています。
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着任して2ヶ月目ですが、私自身は地域おこし協力隊の枠組みで三条に来れたことがすごく良かったと思います。正直、絵本屋の開業って地元や他地域でもできたと思うんですけど、独りよがりというか、私のための絵本屋さんになってしまう怖さがありました。
地域おこし協力隊では大前提として、地域のために自分ができることは何だろうと考えて進めることができるので視野が広がるんですよね。あと、誰かの心の拠り所を作りたいので、視野の広がりによって独りよがりな考えが薄れていくんです。
視野が広がるとさらに視座も高くなりますし、絵本の店 omamori
で提供したい価値が明確になってきました。その価値の根底って、誰かの笑顔を思い浮かべることができることであって。だから私にとって地域おこし協力隊はいい制度だと感じています。
「自分自身の可能性は自分でしか広げられないけど、地域の可能性ならみんなで考えて視野を広げながら乗り越えられるはず」と加えて話すまるの。背中をもう一歩押してもらわないと実現できない想いであっても、この三条市の土地なら叶えられるに違いない。
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絵本の店 omamori / 11月開業予定。
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2022年度、地域おこし協力隊の応募募集を開始します!
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NCL三条では2022年度の地域おこし協力隊について応募募集を開始いたします。今回、8月から同拠点内で「まちの編集室」を開設するにあたり、本づくりをきっかけに地域のクリエイティブなネットワークと、人や情報の循環を創出する編集者もしくはデザイナーを募集します。
応募募集に関する詳細についてこちらをご覧ください。
まちの文化を醸成する編集者/デザイナー<三条>のお問い合わせはこちら。
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NCL三条 はなし手:まるのさき 制作:水澤
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