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建設業向け研修のテキスト・演習課題の作り方 -現場監督経験を活かして副業しよう-

研修講師になるには、独自の研修コンテンツを作成することが最初の一歩となり、その方法を紹介します。
弊社はその支援もしますため、興味ある方は私片桐にメールにてご連絡ください。

1. 基本構成

1-1. テーマを設定する

  • 最初に何を学ぶ研修なのか? テーマを設定します。

  • テーマ設定が狭すぎると対象が絞られ過ぎるため、多くの場合は原価管理研修、安全管理研修などの一般的な表題がつけられます
    これを「現場所長になるための原価管理の基礎研修」と修飾を付けたり、「建築の施工管理職が学ぶ設備工事の危険」などの副題を付けることで、独自性や専門性を表現します。

  • 建設業に限らず、あらゆる業種業態の職務を行う上での知識や技術や方法等は、それ特有のものは少なく、大部分は普遍的・基本的なものが占められます。
    そのため、研修も7-9割は概ねどの工種や立場や職種においても通じる普遍的・基本的な内容をとなり、残りの1-3割が専門的・独自的なものとなることが多いです。
    このように整理することで、つまり「このようなことは一般的にいわれていますよね」「でも、この部分が他とは異なるのですよ」と、整理して説明することで受講者は理解しやすくなります。
    対して、「あなたの業務はすべてが特別で、あれもこれも一般とは異なる考え方をしなければならない」という話を言われ続けても、結局何をどうしたらよいのかわからず、受講者が混乱するだけになってしまいます。

1-2. 5章5項に分解する

  • これはあくまでも私のやり方なのですが、研修を全体に5分割しそれをさらに5分割する、5章5項に構成することで、一般的な1日研修の長さである7時間の内容となります。

  • 例えば研修時間が9-17時、昼休み1時間除いて7時間とすると、第1章・2章で1.5時間ずつで午前中の3時間が終わる。午後は第3-5章でそれぞれ1時間強に設定すると、13-17時の4時間が埋まる。これにより、概ね1-1.5時間で内容が変わり飽きない。また、1章も5項に分けてさらに細かく内容を区切ることで間延びせずテンポよく進行するので、集中力を保てます。

  • また研修をつくる際、なんでもかんでも内容を詰め込もうとすると、なかなかまとまりません。よって、いかなるテーマでも5章5項に収めると決めると、この制約により強制的に取捨選択をせざるを得ず、これが受講者にとってのわかりやすさにつながります

1-3. 講義と演習で1つの章をつくる

  • 1つの章は、大きく講義と演習で構成します。講義だけだと講師が一方的に話し、受講者は聞くだけなので、学びの効果も小さく飽きてしまいます。

  • そのため、10-20分間講義して、30-60分間講義内容について議論・発表・講評など行う演習を行います。

  • このようにインプットだけでなく、アウトプットの機会も挟むことで、理解を深め、また日々の業務で実践できるように促すのです。


2. テキストの作り方

2-1. 章の見出しを設定する

  • テキストは、各章の見出しを設定することから始めます。

  • 例えばQCDSE管理研修であれば、第1章を品質管理とし、2章:原価管理、3章:工程管理、4章:安全管理、5章:環境管理と、取り扱う5つの内容を並列するような章立てが考えられます。
    安全管理研修であれば、第1章:安衛法、2章:災害数の推移、3章:労働災害発生の仕組み、4章:リスクアセスメントの方法、5章〇〇工事におけるリスクアセスメントの注意点というように、大きな話から小さな話へと具体化していく流れも考えられます。

  • 章の見出し設定と同様に、項の見出しを定めていきます。
    労働安全衛生法であれば、①労働安全衛生関連法規の体系、②労働安全衛生法の構成、③働安全衛生法の用語、④労災発生に伴う事業者責任、⑤労災発生の代償のような構成が考えられます。
    5章X5項、計25コの見出しができれば、テキストの大枠が定まるため、あとは中身を作成していくことになります。

2-2. 事実→分析・解釈→意見・経験の順で記す

  • 1項ずつテキストを書き記していく際に、私が重視しているのは事実・理論→分析・解釈→意見・経験の順で示すことです。

  • 例えば、事実:〇〇の労災が年々増えているという統計データがあります。分析:これは〇〇が原因と言われています。意見:私としても、〇〇や〇〇の点から、〇〇が原因であると考えています。
    例えば、理論:〇〇理論では、〇〇のように人に話すと伝わりやすいといわれています。解釈:この理論を協力会社への指示に応用すると、効果的と考えられます。経験:私の経験でも、〇〇の際には〇〇理論に沿って職長さんに自分の意図を伝えており、手戻りの発生を防いでおりました。
    このように、論理の筋道を整理することで、受講者が理解しやすくなります
    反対に、自分の意見や体験だけを話しても受講者には伝わりません。受講者はそれぞれの状況で日々仕事をしていますため、個別の例を並べるだけでは理解は難しいです。有名人の講演であれば自分の意見や体験だけでもよいですが、企業研修では成立しません。

  • 意見や経験は、受講対象によって示すべき内容が異なるため、テキストには記さず研修時に口頭で伝えたり、別資料として追加で配布したりすることが多いです。

2-3. パッと見で伝わるようにする

  • テキストの体裁で重要なことは、パッと見て概ねの内容が伝わること。
    テンポよく研修を進めるには、1ページに数分の時間しか費やせないので、読み込まないと伝わらないようでは、受講者は理解できません。
    そのため、文字であれば要点を太字にする、色を付けるなどし、ページを開いたときにそれが目に入るようにするなどの工夫が求められます。

  • 図表をつかって、理論・理屈を視覚的に表現することも、有効な技法です
    下記のような書籍が多数出版されているので、参考とすることをお勧めします。
    「外資系コンサルのスライド作成術 作例集: 実例から学ぶリアルテクニック」
    「社外プレゼンの資料作成術」

  • かつては講師がホワイトボードに書きながら話す形態の研修が主流でしたが、塾・予備校の映像授業やYoutubeなどで学習する世代には通用しづらいです。そのため、視覚的に伝わるテキストづくりの重要性は、ますます高まるといえます。


3. 演習課題の作り方

3-1. 自分の専門性を示す

  • 1-1で研修の7-9割は普遍的・基本的な内容で、1-3割が専門的・独自的な内容となると記しました。この専門的・独自的部分の多くは、演習課題で表します。

  • つまり、テキストは普遍的・基本的とし、比較的長く活用できるもの、仕事で困ったり行き詰った際に振り返るものとする。そして、演習は受講者のその場その時の実務に生きるようなものとする。このように役割を分けると、講師にとってつくりやすく、受講者にもつかいやすくなります。

  • 講師としては一度テキストを作成した後は、研修毎に演習課題をつくることが主な業務となります。

3-2. 理論・方法の実践の練習機会とする

  • 演習には、講義で伝えた理論や方法を試しにやってみる機会としての役割もあります。

  • いきなり「ピラミッドストラクチャーは論理的に簡潔に話をするために有効な方法です」と言われても、いつどうやって活用すればよいのかわからないものです。よって演習で実務に即した課題を提示し、受講者に体験させる。これにより、次の日から実践できるようにし、研修を学んだだけに終わらせず、着実に行動が変わるように促すのです。

  • 例えば、このような演習が考えられます。
    「来週朝礼で話す内容を、ピラミッドストラクチャーに従って構成し、は実際に班のメンバーに対して話してください。聞き手は、"話すときの姿勢"、"聞きやすさ"、"わかりやすさ"の3つの観点でそれぞれ5点満点で採点し、良い点、改善点を話し手にフィードバックしてください。」

3-3. 日頃扱えない課題の議論の機会とする

  • 演習には、忙しい日常の業務の中で、なかなか時間をとって考えることができない課題の議論の機会としての役割もあります。

  • 日本の生産年齢人口の減少や建設業の高い有効求人倍率のグラフを提示し、「建設業の人材確保は急務だ」「今後もっと人手不足が深刻化する」などと問題提起だけをされても、わかっているけど緊急性が高い仕事の対応に追われ、重要性が高い課題が後回しになるのは無理もありません。よって演習でこのような課題を提示し、受講者が考え、議論させ、何かしらの結論を得る。これにより、重要課題の解決のきっかけとなるよう促すのです。

  • 例えば、このような演習が考えられます。
    「当社の採用の課題は何でしょうか? どのようにしたら応募者を増やすことができるでしょうか? 班で話し合って、課題とその解決策を見出し、発表ください。」


ここでは私のテキストと演習課題のつくり方を記しましたが、その他様々な方法があります。
弊社は講師独自の研修コンテンツづくりの支援もしますため、興味ある方は私片桐にメールにてご連絡ください。