バチェロレッテで感じた対話力と多様化する組織を束ねるニューノーマル
バチェロレッテ1stシーズンを先々週に見終わり、見事にバチェロス(そんな言葉が世に溢れているか分かりませんが…)になったクラウド・シップのナカノヒトです。
バチェロレッテ・ジャパンをご存知ない方のために少しだけご説明をいたします。
もともとは「The Bachelor」というセレブな男性が、複数の女性の中から結婚相手を探すというアメリカで人気の恋愛リアリティ・ショーで、日本ではバチェラージャパンという番組名でAmazon Prime Videoにて配信されています。その男女逆転版、セレブな女性が、複数の男性の中から結婚相手を探すのがバチェロレッテです。
様々な職業、生い立ち、個性あふれる17人の男性の中から、バチェロレッテである福田萌子さんが、真実の愛を探して未来の結婚相手を見つけるため毎回、アクティビティーやデートなどを経て、ローズセレモニーとよばれる選ばれし男性だけがバラを受け取り次のステップに進める、逆に言えばバラを受け取れなければゲームオーバーとなるセレクションを重ね、最終的に人生のパートナーに辿り着けるかどうか・・・という番組です。
今回はナカノヒトがバチェロレッテ・ジャパンの素晴らしさを語る回・・・ではなく、バチェロレッテである福田さんと、男性17人の男性陣との関係性に垣間見た、参考になるマネジャーとしての対話力(あえてコミュニケーション能力と言わず、対話力といいます)、多様性ある組織マネジメントに少し触れたいと思います。
経済メディアのNewsPicksのオリジナル配信で落合陽一氏の番組「Weekly Ochiai」でも「バチェロレッテとリアリティショーの魅惑」という特集がさされるほど、恋愛だけに止まらずビジネスでも注目されています。
1.一人ひとりに敬意をもつ
私は恋愛については語れないので、ビジネスの場でよく見る上司・部下との間でのコミュニケーションの課題と照らし合わせ、彼女・彼らの対話から参考になるなぁと思った点をお伝えしていきます。
まず一つ目の相手の「あるがまま」を受け止める力ですが、バチェロレッテが男性1人ひとりを「You're Special=あなたは特別な人だから!」と捉えているという点です。
第一印象とか、その人の肩書、経歴、過去の事象に囚われず、その人が「今どんな人か」を大事にし、その人の内面・外面に関わらず敬意をもって接しているのが、随所に現れているのです。彼女は、過去に自分が接した男性像をもとに、カテゴライズしたりラベリングしないんですね。正直、びっくりしました。(以下は一部、友永構文)
だからこそ男性陣も自分の過去・現在・未来や、良いところも悪いところも率直に話せる一つの要因となっているのかなと感じました。
こんな仕事をしていると悪い癖で「~のタイプ」、「おそらく~のような思考を持っているはず」とかフレームに当てはめて、やってしまいがちだったり、例えば人事評価の面談で上司の方が「だから君は~」とか「どうせ~と思ってるんだろ」のような言葉を部下の方にするケースを目にしますが、コーチングなどの技術的なところ以前に、向き合い方というスタンスの大事さを再認識しました。
2.「起こったこと」に自分の解釈を加えず、「経験値」と捉える力
バチェロレッテには様々な経歴の方がいます。国籍による幼少期のいじめ、離婚をした人・・・。そんな男性の過去の話を受け止めるわけですが、自分なりの解釈を加えないわけです。過去に自分の不倫で離婚した方が、その事実を告白したことに対して
「結婚するまでのストーリーも知らないし、不倫をしたというストーリーも知らない、何かが夫婦間の中であったのかもしれないし、ただ不誠実だったのかも知れれないし分からない、ただ言えるのは、その経験値を持ってるよねってことだけ。結婚した経験値があるし、そこで人を傷つけてしまったという経験値がある」(一部、分かりやすいよう編集)
と、女性側に立つわけでもなく、その男性に根掘り葉掘り原因追及をする訳でも、また自分と結婚しても同じことを繰り返すのではないかと不安を口にするわけでもないんですね。
すると男性は「勇気を出して、言ってよかった、まずは受け止めてもらった」と思っているわけです。その恋が成就するかどうかではなく、過去の自分のしがらみを断ち切ることができた感の顔がそこにある・・・不思議と。
これも「1.一人ひとりに敬意をもつ」にも通じるんですが、「いま、ここ」が彼女にとって大事で、過去と現在との課題を分離しようとする姿勢が垣間見れます。
彼女の芯の強さがどこにあるのか、メンタルコーチでいるんでしょうか?またはバチェロレッテなだけあって心理学とかも様々な分野を勉強していらっしゃるのか(あっ、悪い癖が・・・)
若干の違和感は「経験」ではなく「経験値」というところ。RPGのようだ・・・。経験やキャリアにはプラスやマイナス、掛け合わせや偶発的または突発的だったりするので「経験」という表現を個人的には好みます。
あぁ「あるがまま」を受け止めることが大事と書いているのに、そのそばから分析的になってしまってる・・・。
3.「Why」で目的や自身の価値観、それと現状とのギャップに気づかせる
受容的な愛情を示す一方、物事の価値観、考えるレイヤーが異なる人には、オープンな性格も相まってズバッと切り込みます。
例えば取り巻きの人間関係に不安があり、自分にコンプレックスがある男性には「~さんのなりたい自分、理想像ってどこにあるの?」と問いただすと、その男性は後に「後ろにできた道が自分の道だから、こうなりたいか正直、思ったことがなかった」と価値観の違いに気づくわけですね。
自分の仕事にこだわりを持っていて前の彼女とは意見が合わずお別れしたという男性には「それだけ情熱あるお仕事を、2か月休んできてもらっている訳じゃないですか、その心境の変化って?」
「私のことどうやって見えてる?」という質問に、男性が「パーフェクト」と答えると「なんで私のコト完璧だと思ったの?」と・・・
時に本質的な質問で、曖昧な考えや、価値観の違いを明らかにして、直接的にバチェロレッテが指摘するのではなく、本人に気づかせる。
相手のあるがままを受け止め、敬意をもって接し、相互の信頼があるからこそ、ここぞという時の質問で気づかせる。ギャップや自分の考えの浅さに気づいた本人も嫌な気がしない。
そのやり取りを常に丁寧な言葉と語り口で伝えていく、正直、その立ち振る舞いに嫉妬しました。
4.「強み」や「弱み」ではなく「個人の特性」に合わせたディレクション力
あるがままを受け止めながらも、思いを寄せる男性へのバチェロレッテの洞察力や、相手の行動・言動が「自分へのどういう思いとして表現されているのか」自分事に置き換えるフィルタリングが凄いんです。
例えばある男性がローズセレモニーという、アップ・オア・アウトの場で、バチェロレッテと必ずと言っていいほど目を合わせない姿を見て、「私と目が合うと、私の決断が鈍るから、目を合わせないんだよね」みたいなことを言うわけです!
男性からすると「え!気づいてたの!俺よりも俺のことをわかってるよね」っとなるんですね。
これは観察するだけではなく、その行動を相手の立場になり「なぜ、そんな言動をするのか?」と考え、過去の経験やらと照らし合わせ(おそらく)「Aという行動をするのはBだ」と分析して仮説を立て、その仮説を相手に嫌味なく伝え、上記のような共感を得る。
そんな場面が随所にあって、限られた機会にしか会えないのに、よく短い時間でそこまで観察して、一人ひとりの特徴をとらえてるよね?と、唸るばかりなんですね。
そしてバチェロレッテは彼らの持ち味や特性を活かせるデートプラン、ロケーション、シチュエーション、そして自分の服装まで練りに練って(ある程度、制作側の関与もあると思いますが)、相手と向き合う・・・。
いくら一生に一度の真実の愛を語れる相手を見つけるためとはいえ、常に相手が最大限、パフォーマンスを発揮できる場をつくる姿勢は圧巻でした。
そしてそれに応えるように、男性陣が成長したり、自分の壁を壊したり、時にヒトデを拾ってやらかしたり・・・
就活本の自己分析でよく「強み」や「弱み」を知りましょうという、分析シートがあると思いますが、大事なのは強み・弱みと分けて考えるより、自分の持ち味や特性を知り、どういう経験をして、そのような価値観や特性を持つに至ったかという、自分自身の軸をしることで、その先に、それを受け入れて活かせる場(時に職場やコミュニティー、恋愛相手も?)と出会うことが大事なんじゃないかと感じました。
どのような環境、タイミングで、相手のパフォーマンスを最大限発揮できるのか?
エンタメとして楽しみながら、サーバントリーダーシップの一端を垣間見ることができる、なんとも素晴らしい作品でした。(個人的な感想)
正直、バチェロレッテこと福田萌子さんには感謝しかないですね。そこに関して何の嘘もないです。ホンマにありがとう。
5.多様性あるディレクションの妙に見る近未来?
最後に多様化する人材における組織マネジメントの観点についてです。バチェロレッテでは洋の東西を問わない国籍、脳の左右を問わない職業(現代アーティスト、シンガーソングライター、映像クリエイター、事業家・・・)、丈の高低を問わない身長・・・いろんな男性が参加したわけですが、参加者の一体感が凄いんです。部活のノリ?
最後の一人に選ばれるというアップ・オア・アウトのゴールにも関わらず、上記のように多様な背景を持った人たちが、仲間としても支え合ったりする。アップ・オア・アウトの要素を除くと「あれ?多くの企業でもある、多様化しつつある組織の縮図を垣間見てるのかな?」と感じました。
ティール組織に触れて以来、ティールの3つの要素は非常に刺激を受けましたが、この感覚はティール組織の共通の目的と、ホールネスが表現されているのではないか?とも同時に感じたわけです。
上記の記事が非常に分かりやすくまとめて頂いているので参照させて頂きますと、ティール組織に重要な3つの要素として、以下があります。
① 進化する目的(存在目的)
② セルフマネジメント(自主経営)
③ ホールネス(全体性)
その中でも①と③を組織の中で当たり前に機能させることは、非常に難しいまたは時間を要すると個人的には感じています。組織によって歴史や成熟度が異なりますし、1人ひとりが異なる背景や価値観を持っているためです。
その超え方の一端をバチェロレッテに見たような気がしたのが、ロスを生むほどまでにハマった要因ではないかと、この記事を書きながら感じました。
バチェロレッテは「結婚する、真実の愛を探す」という目的に向かって、男性と女性がお互いを高め合いながら、特殊な場ではあるけれども、それぞれのストーリーを歩んだわけです。
経営目的やビジョンに置き換えると、ストーリーを語り、組織としてのストーリーだけではなく個人のストーリーとして、一人ひとりと向き合いながら、対話を通して落とし込んでいく。会社側のmyストーリーを、社員も含めたourストーリーにする。
(余談になりますが、現代アーティストの男性が、うまくメタファ(比喩)を使いながら、自分の思いを表現するわけです。このメタファの力もストーリーを共感する力には必要と再認識。サイエンスとアートね。)
お互いの未来のために同じ価値観をもって歩める部分には共感し、異なる価値観の部分には率直に対話して更に深め合っていく。お互いにあるがまま晒し、時に受け止め、衝突しながらもそれは、お互いを知るための一つのプロセス(あえて言うなら経験値)としてとらえ、時間をかけながら理解をしていく・・・。それこそホールネスを発揮できる環境に繋がっていくなと。
マネジメントに関わる方にとって、見方によっては参考になりますので、興味がある方はご覧になってください。純粋にエンタメとしても面白いですし、いまAmazon Prime Videoは、アカの他人とワイワイチャットしながら視聴できる機能もあるので、「そこで、それ言う?」とか楽しんではいかがでしょうか?
あれ?結局、バチェロレッテを熱く語る記事になってしまいました。