満月の夜に(「公園の童話」より)
毎年桜の花が咲きだすと、公園の係の人たちが花見客のために、提灯の準備を始めます。
去年じいさん桜の周りには、花を下から照らし出すライトも取り付けられました。ますます見事な夜桜に、大勢の人がやって来て口々にじいさん桜を褒めて行きます。若い桜はそんなじいさん桜をいつも誇らしく思っておりました。
夜の花見の客が増えだすと、若い桜がうきうきするのに対して、じいさん桜がますます無口になっていくことは若い桜も気づいておりました。それでも前は ぼちぼち昔話なんぞを話してくれていたのに