綿毛の空 たんぽぽのユメ(「公園の童話」より)
さくらじいさん 素敵なお天気ね。
ねぇ、見て 綺麗な まあるい ふわふわ頭になったでしょ?
もうすぐ タネ 飛んでいくの。風にふうわり飛ばされて 新しい命 広げるの。
あ、でもね 誰かにぷぅって 吹いてもらう、そういうのも 好きよ。
どうしてって?
あ、誰か 来た。見ていてね、さくらじいさん。
* * * *
さくらの木さん さくらの木さんお久しぶりですね。あなたを見にやって来ました。
子ども達が小さかったころ それはしょっちゅうあなたの下でシート広げ お弁当を食べたんですよ。覚えておられません…よね?
あなたを訪ねて たくさんの方が来られますものね。
あら、タンポポの綿毛ね。可愛らしいこと。
そうそう子どもたちが小さい頃 タンポポの綿毛をふぅって飛ばすのが大好きだった。
子どもって気に入ると いつまでもやりたがるでしょ?
もう おしまいにしてちょうだい。早くしなさい、もう行きますよって何度も何度も声かけた。
待つ時間って 長く長く感じたものだわ。
何をそんなに急ぐことがあったのかしらね。ふふ なんだか懐かしい。
ひとつ ふぅってしてみようかしら。
ひとが見ていたら ちょっと恥ずかしいけれど。
* *
ねがいごとして ふーってするんだよ
ぜんぶいちどにとばすと かなうの
うそだよそれ ろうそくだよケーキの。
うそじゃないもん ほんとだもん。
じゃ、オレこっち でっかい方。
ねぇ 何おねがいしたの?
ないしょ。
おかあさーん、おかあさーん、おかあさんもやろうよー。
*
おばあちゃん チビどこにいったの?
チビとあそんだところね、タンポポいっぱい咲いてた。
今見たらね、ふわふわの綿毛がいっぱいだった。
フーってしたら お空まで飛ぶ?
チビのいるお空、タンポポ咲く?
* *
さくらの木さん さくらの木さん
あなたのそばにいると 何だかとてもゆったりした気持ちになります。
タンポポの綿毛、キラキラ飛んでいく中にひとつひとつ 大事な思い出が見えた。
今日は あなたに会えて嬉しかった。
ありがとうさくらの木さん。実はね、もうすぐひ孫が生まれるの。
* * * *
さくらじいさん、いい風吹いてるね。
わたしね、 ときどきユメ見るの。
仲間の綿毛がいっぱいいっぱい飛んで 白く見えるくらいの綿毛の空のユメ。
そしてね、
次の春 一面のタンポポ野原になるユメ。
ね、すてき でしょ?
〈綿毛の空 たんぽぽのユメ〉 了
季節外れで申し訳ありません。
コロナと長い雨で気持ちが沈みがちな時は こういうのもいいかなと思います。
いい春が 巡ってくると信じたい。
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