ナズナ

本職は医師。kindle作家・翻訳家もやってます。2023/11/1にkindle初出…

ナズナ

本職は医師。kindle作家・翻訳家もやってます。2023/11/1にkindle初出版。kindle翻訳家として、皆さんの作品を英訳して世界中に広めるお手伝いができればと思っています。 体外受精で2021/12男児出産。アメブロで不妊治療ブログもやってます。

最近の記事

結婚指輪を失くした話⑦

仮病(といっても具合悪いことは悪かったのだけど)を使う日は前もって決めた。 この日は〇〇の手術があるから、この日は〇〇だから、などなど考えて、消去法で12月の最後から2番目の月曜日だけ休むことにした。 1日でも接触を減らさないとメンタルが危ない、という危機感はありつつも、 迷惑かけてもいいから3日くらい休んでやれ、と思えるほど不真面目ではなかったというか、 後期研修医としての成長のチャンスの方を優先したというか。 実は、このズル休みのことは今まで1人にしか話したことがな

    • 結婚指輪を失くした話⑥

      続き 吐きはしなかったが、大きくえずいた。 丈夫が取り柄で、それまで一度も病欠というものをしたことがないくらい。 特に消化器系はめちゃくちゃ丈夫で、消化器症状が出ることなど滅多にない。 来なくなった生理と突然の吐き気。 …まさか妊娠? と一瞬だけ思ったが、こんなテキトーな夫婦生活で妊娠なんてうまい話があるわけなく。 どちらもストレスによる症状だったらしい。 ストレスで生理が止まることはよくあったが、吐き気という分かりやすい身体症状が出るのは初めてだった。 そ

      • 結婚指輪を失くした話⑤

        続き いよいよ出向研修がはじまった。 基本的に午前は一般外来、午後は手術や専門外来やラウンド。 月に1、2回、魔女部長が昼から外病院に行って専門外来をやる日があり、そういう日は私も一緒についていった。 午前の一般外来は、最初は魔女部長の外来を見学するだけだった。 魔女部長の後ろに座り、魔女部長の診察のあとで私も診察させてもらう形式。 午後の手術は助手を務め、専門外来とラウンドは基本的に見学、時々診察もさせてもらう。 こんな感じで、最初は「自分で何か判断する」「自

        • 結婚指輪を失くした話④

          続き 初日の朝。 魔女部長に挨拶したが、魔女部長はにこりともせず私を一瞥すると、無言で背中を向けてさっさと歩き出した。 「向こうでは何先生についてたの?」 「〇〇先生です」 「〇〇…?〇〇って誰だ?」 冷たい、吐き捨てるような言い方だった。 魔女部長の背中を追いながら、 こういうことかー と思った。 あと、私の大事な〇〇先生を呼び捨てにするな!とも思った。 そして、魔女部長は私の名字が読めなかったし、最後まで正しい読みを覚えてくれなかった。 「なんでそ

        結婚指輪を失くした話⑦

          結婚指輪を失くした話③

          続き 出向した若手のメンタル破壊率ほぼ100% そんな絶望的な数字を聞いても、こちらに拒否権はなかった。 少し上の先輩たちがこぞって出向を断固拒否して押し通したらしく、それで部長が意地でも今年は出向させる!と固く決意した という噂を聞いたが本当かどうかは知らない。 でも仮に「ゴネれば出向しなくて済む」状況だったとしても、大人しく出向したと思う。 打率ほぼ100のメンタル破壊神のところに向かうのは、確かに気が重い。 まるで生け贄の気持ちだ。 一方で駆け出しの後期

          結婚指輪を失くした話③

          結婚指輪を失くした話②

          関節をすり抜けるほどにブカブカになってしまった結婚指輪に衝撃を受けた。 指輪自体のサイズは変わってないのだから、正確には痩せてしまった指に、なのだが。 そんな状態にも関わらず指輪をして出かけた私が100%悪いのは分かっている。 でも、3ヶ月の出向研修がなかったら、こんなことにはならなかったかもしれない。 少し時間をさかのぼって、結婚指輪を失くした間接的原因である(と私が勝手に思ってる)3ヶ月の出向研修について書いていこうと思う。 これは別に、 「私、こんなにつらい目

          結婚指輪を失くした話②

          結婚指輪を失くした話①

          ここ数年間、年末になると思い出すことがある。 2018年12月28日、結婚指輪を失くした。 結婚する時、指輪は別に要らないと言った。 でも、親からの勧めと、意外とロマンチストの夫の希望で指輪を買うことにした。 要らないと言ったものの指輪選びは楽しくて、とあるお店でビビッと来たものに決めた。 とても素敵な名前とコンセプトの結婚指輪で、同じ名前の婚約指輪と重ね付けできるデザインになっていた。 私の結婚指輪と婚約指輪を夫が、夫の結婚指輪を私が買った。 結婚指輪をしている医師

          結婚指輪を失くした話①