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140字小説【見えなくても、そこに】

「このオシャレな空瓶、何か入れないの?」
「そこには空気を詰めてるんです」
「空気? ああ、富士山とかの?」
「いえ、父の空気です」
「チチ?」
「父は私が生まれてすぐに蒸発したんです。蒸発したってことは、今も空気としてこの世のどこかを漂ってると思うので、それで――何で泣いてるんですか?」

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