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【オススメ小説22】胸が熱くなる本物の言葉の力『本日は、お日柄もよく』

 スピーチライターを目指す二ノ宮こと葉

 政治家を目指す、幼なじみの厚志

 言葉の力を信じるお仕事小説の金字塔

 こんにちは、名雪七湯です。今回のオススメ小説は有名作を生み出すことでお馴染み原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』を取り挙げます。

1、本情報、作者情報、あらすじ

『本日は、お日柄もよく』原田マハ 徳間書店 2010

 名作を並べると枚挙に暇がない原田マハさん。キュレーター(美術館などで資料を研究する人)の素養を活用し、芸術系の小説が多い彼女。2005年に『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、デビュー。以降、意欲的に作品を生み出し続け、メディア化も多数。今作も連続ドラマ化される。最近だと、志村けんさんが菅田将暉さんとW主演の予定だった『キネマの神様』が注目を浴びた(公開日未定)。

 以下、あらすじになります。

 幼なじみの厚志の結婚式に出席したOLの二ノ宮こと葉。そこで彼女が出会ったのは、伝説のスピーチライター久遠久美だった。彼女の言葉に魅せられたこと葉は言葉の力を信じ、自分もスピーチライターになることを目指し始める。それと同時に、父が議員だった厚志は政治家を志して……。言葉の力と仕事への熱量が心躍せる、笑いと感動の重厚な小説。

2、あなたもスピーチがしたくなる言葉の力

 作品の魅力は、やはり言葉の力にあります。

 伝説のスピーチライターという分かりやすいとんでも人物、久遠久美。彼女の強気な態度と冷静ながら愛想のあるキャラは魅力的であり、彼女の説くスピーチのノウハウはストーリー抜きに純粋に興味深いものです。

 言葉の力。それは本を読む私たち、また映画なりアニメなり、なり、尊敬する人なりに人生を動かされた人はよく知っていると思います。今作ではその力を再認識させられます。スピーチという形を取り、言葉を紡ぐ方法、言葉を聞いてもらう方法、言葉で人を動かす方法が力強く語られます。

 さらに今作の魅力語り手のこと葉のキャラにもあります。

 作品の開始早々、馬鹿なことをやらかす彼女ですが、率直素直で、猪突猛進ではあるものの底なしの明るさを持った彼女が作品を彩ります。彼女もまた言葉の力に魅せられた一人なのです。彼女の快活なキャラからして、展開はポップに進み、コメディのような読みやすさがあります。一方で、厚志の選挙が進むと、専門的な知識が盛り沢山になりリアリティが増します。

 読者を休ませずにツイストに次ぐツイストで読み始めたら手が止まりません。専門的な話も多いので頭は一杯一杯になりますが、一気読み推奨の作品です。ラストも綺麗に計算されており、感動すること間違いなしです。

 典型的な直向きおバカキャラのこと葉と伝説という肩書を持った久遠久美の掛け合いもどんどん好きになってゆきます。読者が入りやすいように大袈裟な設定もありますが、全体としては社会問題に向き合ったリアリティ緊迫感に満ちた、本物の感動へ誘う長編小説になっています。

3、最後に

 原田マハさんはどれも名作揃いでどれから手を出すか迷ってしまいますが、今作はとっかかりにオススメの一作です。この一作に手を出すと、止まらず彼女の著作を集めるようになってしまいます。

 最後までお付き合いありがとうございました。

 またお会いしましょう。


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