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【オススメ小説10】盲目と逃亡者の不思議な感情『暗いところで待ち合わせ』

 ある日目が見えなくなったミチル

 殺人犯として追われミチルの家に潜り込んだアキヒロ

 ミチルは段々とアキヒロの存在に気付き始めて……

 こんにちは、名雪七湯です。10回まで続いた本紹介ですが、今記事では乙一さんの傑作ミステリー『暗いところで待ち合わせ』を取り挙げます。

 ミステリーを扱うのは初めての試みですが、言葉を選びながら書いてゆきたいと思います。ネタバレにはならないよう努めます。

1、本紹介、作者情報、あらすじ

 『暗いところで待ち合わせ』幻冬舎 2002 乙一

 2006年に実写映画化された今作ですが、乙一さんの代表作として今も多大な人気があり幻冬舎文庫より発刊され続けています。

 乙一さんと言えば、読書界隈では知らない人がいないほど有名であり、怪物のようなスピードで名作を生み出し続け、ほとんど全ての作品がヒット映画化するという天才作家です。デビュー作である『夏と花火と私の死体』(1996、集英社)は16歳で書き上げ、別名義でも多数の著作を出版しており、小説界にとって必要不可欠な存在です。他著作に、『GOTH』、『失はれる物語』、『ZOO』など多数。

 以下、あらすじです。

 前ぶれもなく、だんだん視力が無くなって行ってしまった本間ミチル。彼女は補助金を貰いながら一人、部屋の隅で暮らしを続ける。そして、彼女の家に潜り込んだ逃亡中の大石アキヒロ。彼は職場でいじめをしてくる松永トシオを殺した犯人として警察に追われていた。アキヒロの存在に気付き始めるミチル。二人の奇妙な関係が物悲しく切ない一作……。

2、内容について

 奇抜過ぎる設定

 目が見えないミチルはたらい回しされ、親戚の介護を受けられず一人暮らし。そして、警察から追われているアキヒロ。ミチルの家に転がり込むアキヒロの二人という関係と展開が癖になる作品です。

 ミチルはアキヒロにどう接触するのか。

 アキヒロはこれからどうなるのか。

 二人の距離が近付けば近づくほど、物悲しさと切なさが漂います。

 孤独とミチル

 ミチルは自身の目が見えなくなったことを悲しんでいません。ミチルは人間不信のような心理に陥っており、補助金を貰うだけで、人と関わらず部屋の隅で生きていける生活心地良さを覚えております。一人で生きていける楽さと人を関わるしんどさも作品で表現されています。

 孤独とアキヒロ

 アキヒロは働き始めるも仕事だけ熟し、人と関わることを苦手とし避けます。しかし、その結果、上司の松永トシオにいじめられます。

 この作品ではミステリ要素二人の奇妙な関係も見どころですが、「孤独」というサブテーマもあります。人と関わることにより被ると人と関わらないことにより得られる安心感と、そして孤独

3、形式について

 表紙怖すぎ問題

 表紙誰?

 という問題が前々からあります。私もあらすじをきちんと読むまで、ホラー小説だと信じて疑いませんでした。私には女性に見えますが、ミチルは目が見えないので目を閉じており、他に該当しそうな人もいないので。表紙が誰かについて考察を持っている人がいればコメント宜しくお願いします。

 文章

 乙一さんの文章は日本でもトップレベルに読みやすいです。6年近く読書を趣味にしていますが、乙一さんより読みやすい文章は見掛けません。語彙も簡単なものばかりで、一文も短いです。しかし、安っぽさはなく読書初心者にもオススメですし、文章を書く人にもお手本としてオススメします。

4、最後に

 乙一さんのベストセラーである今作は根強い人気がありますし、読書初心者や普段本を読まない人にもオススメできる一作です。そしてミステリーとしてのオチも秀逸ですし、二人の距離感が癖になります。

 またお会いできれば幸いです。


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