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【音楽】デュオ成功の秘訣はお互いのリスペクトがお客さんにも伝わること

明けましておめでとうございます。
今年も演奏会の感想は続けますぜ。

1/6に年明け一発目の演奏会に行ってきました。
昨年笠井誠一展記念コンサートの記事を書かせてもらったチェロ奏者の山口徳花さんと、ピアノ伏木唯さんのデュオで、お二人は十年来の親友とのこと。

1.今回の演奏の感想

今回は「ベルリン発デュオ ドイツ音楽を巡る旅」というテーマで、バッハ、メンデルスゾーン、ブラームス、ベートーヴェンの作品を堪能しました。

全曲に触れると長くなるので、今回は最初の2曲のみだけにします。
1曲目のバッハの無伴奏チェロ組曲は、今回はよく耳にする第1番ではなく第3番から3曲。第3番はブーレが有名ですね。
ブーレは私もチェロとヴァイオリンの両方で弾いたことがあります。

無伴奏は演奏者の個性が出やすくて面白いです。軽めに弾く人もいれば低音部を十分に響かせる人もいる。テンポもけっこう差があります。
この方はこういう解釈なんだなということも感じ取ることもできますし。
今回はオーソドックスな演奏で、安心して響きを楽しむことができました。

メンデルスゾーンのチェロソナタは、特に第1楽章の疾走感(グルーブ感?)が良かったですね。お二人の息が合っていないと生まれないものなので、楽しかったですよ。

卓越した演奏を堪能できたのは言うまでもありませんが、今回特筆すべきは、チェロとピアノの音が非常に溶け合っていてとても心地よかったこと。しかもそれぞれの音に集中すれば、はっきり聞き取れることです。

というのも個人的見解ですが、チェロとピアノのデュオというと、音域によってはチェロがピアノの音に埋没してしまうことがあります。それが気になりだすと、チェロとピアノがバラバラに聞こえ出すんですよね。ところが今回はそれを全然感じず、至福のひとときでした。

2.そもそもデュオは難しい

詳しい音楽的な感想は別のブログで書くとして、noteという場では音楽以外の例えで、デュオを分析しようと思います。

これも個人的見解ですが、デュオってそもそも1+1>2の世界を創り出し難いような気がするのです。
いや自分で弾いたり吹いたりしている時は楽しいんですよ。
ただ客として聴く時は、正直なところデュオの場合、いつも少々不安を抱きながら会場に足を運んでいます。

どういうことかというと、
例えばヴァイオリンとチェロのデュオってあまりないですよね。

私もやってみたことがあるのですが、どうも音が上手く溶け合わないのです。いやもちろん私の腕がヘボなのが大きいのですが、音域が離れすぎていてふたつをつなぐ音が足りない感じ

まあ弦楽器とピアノの組合せなら、ピアノは音域が広く複数の音を出せるので、その心配はないはずです。ただ第3の音色まではカバーできない。

要は物理的に2は不安定で、3点で支えれば安定するというアレです。それが楽器の編成にも言えるのではないかと。

ヴァイオリンとチェロにピアノを加えればピアノトリオになり、音に立体感が増して格段に安定します。またヴイオラを加えるだけでも違うでしょう。

演奏者側もそれが分かっていて、それぞれのソロ曲を挟んだり、ゲスト奏者を招いたりして単調にならないようにしています。

3.僭越ながらラーメンに例えてみる

ではデュオ成功の秘訣は何でしょうか。
演奏家の方には怒られそうな例えですが、食べ物でいえばデュオはラーメンのようなものではなかと思っています。

ラーメンで最も大切なことは、麺とスープのバランスが取れていることです。

ところが美味しいラーメンを作ろうと思えば、まずそれぞれの質を上げようとしがちです。演奏家であれば各人が腕を磨き、自分の最高の演奏をするってことですね。

もちろんそれは大前提だし大切なことです。

しかし単純に質が高い麺とスープを組み合わせても、全体的としては一体感が無い美味しくないものができがちです。それは当然で、それぞれ相手のことを考えていなければ、相手の良さを引き出すことはできません
この太麺にあっさりスープじゃ、いくらそれぞれが美味しくても弱すぎるだろうみたいなことです。

実際そのようなラーメンに出合うことが少なくなく惜しい。ラーメンマニアからは完成度が低いと叩かれがち。
その結果、例えばお店の塩ラーメンのほとんどは、インスタントのサッポロ一番に負けてしまうのです。(極論です)

お客様に商品として提供するには、質云々の前に当該ラーメンのコンセプトに合う麺やスープの調整が大切になります。

そしてさらにいうと、麺とスープの魅力を引き出す役目がトッピングです。調味料でいえば砂糖でしょうか。
こう考えると実質的にはトリオに近いですね。

4.ではデュオでトッピングに相当するものは何?

デュオにおいても、麺とスープの調整に相当することは念入りに行
っているはず
です。
ただしトッピングに相当する第三の楽器はありません。

ではデュオをより輝かせる要素は何でしょう?

なかなか思い当たらないのですが、お互いをリスペクトする気持ちがお客さんに伝わるとかどうかということではないでしょうか。
あとは気合い(けっこう重要)と人格など総合的な雰囲気

といっても人格はこちらが勝手に感じるもので、本当のところはよく分かりません。
でも何となく感じるんですよね。極めて商売的な人とか、逆に自分の納得できる演奏ができればよしという人。どちらも自分の場合、二度目は無い(笑)

ちなみに独奏楽器はよきパートナーを見つけることが、人生の一大事とか。
プロはもちろん、音大の学生も学内で優れたパートナーを探すのが大変とのこと。優秀なピアノの人は1年生の終わりになると学内で評判になるので、ひっぱりだこになるらしいっす。

5.もちろん会場選びも大切です

今回の会場は杉並区下高井戸にあるスタジオピオティータでした。
住宅街の中にあるスタジオで、こじんまりとしていますが音響は抜群でした。角が取れた音とでもいいましょうか。

演奏の良し悪しって、特に響きの部分に関しては会場や座る位置によってかなり左右されるのはよく経験することです。
今回はこのスタジオの選択が、デュオの魅力をさらに引き出したともいえるでしょう。
その意味で、編成に応じた会場選びは大事ですね。

長くなってしまいました。最後まで読んで頂き有難うございます。

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