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ふりかえりをより良くするために工夫していること

この記事は、NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2022の21日目の記事です。

こんにちは、こーhey! です。
ナビタイムジャパンで経路探索エンジンの開発を担当しています。

私が所属するチームはスクラムを採用しており、毎スプリント欠かさずふりかえりが行われています。私は昨年チームに配属されたばかりなのですが、配属1年目から「ふりかえり運営担当」の一員として、より良いふりかえりを追求してきました。
私たちはこの1年間で、特にふりかえりの準備を工夫することが、より良いふりかえりを行うために重要であることに気づきました。
本記事では、日々のふりかえりの準備で私たちがどのようなことを工夫しているのかをご紹介したいと思います。

はじめに

本記事の対象読者

  • 自分のチームのふりかえりに何かしらの課題感がある方

  • 自分のチームに新しくふりかえりを取り入れたいと思っている方

  • 他社のふりかえり事情が気になる方

以上のような方々は、本記事を通して何か良いヒントが得られると思います。

大前提として

これからお話するのは、あくまでも私のチームで実施していることであり、すべてのチームにおいて有効とは限りません。
試行錯誤を繰り返しながら、自分のチームに合った方法を探していくことが非常に重要だと思っています。

私たちのチームのふりかえりスタイル

本題に入る前に、私たちのチームのふりかえりスタイルについて簡単にご紹介します。

  • 1週間スプリントで、毎スプリントのふりかえりに90分、ふりかえり準備に30分の時間を使っている

  • 現在は対面でふりかえりを実施している

  • miro (オンラインホワイトボードアプリ)を使う

  • 準備/ファシリテーションはふりかえり運営担当で行う

ふりかえり準備で工夫していること

1. 明確な理由を持ってフレームワークを選定する

ふりかえりのフレームワークを選ぶ際に、「何となく」や「このフレームワークは最近やってない」などの雑な理由で決めてしまうと、出てくる意見の量や質が低下してしまうことがあり、非常にもったいないです。

私たちのチームでも、ふりかえりで出てくる意見が明らかに少ない時がありました。こうなってしまうの理由の一つとして、チームの状況と使っているフレームワークがマッチしていないということが考えられます。

このようなミスマッチを起こさないために、私たちのチームでは、フレームワークを選ぶ際に以下の2点を必ず考えるようにしています。

  • どんなスプリントだったか(チームの現状)

  • 何をふりかえりたいか(ふりかえりの目的)

これら明確にすることで、出てくる意見の量や質を安定して確保できるようになります。

例えば、上手く行かなかったスプリント(スプリントゴールを達成できなかった、ベロシティが著しく低下してしまったなど)を考えてみましょう。
このようなスプリントでチームメンバーがふりかえりたいと思っていることは、「現状の問題点」と「それをどうやって改善していくか」だと考えられます。
このような時に、FunDoneLearn(※1)などのフレームワークを選んでしまったら、どうなるでしょうか?
スプリントが上手く行っていないため、おそらくFunとDoneに該当する意見はあまり出ないはずです。Learnや枠外にも意見を出すことができますが、本当に話し合いたいこと(すなわち、チームの問題点や改善点)と完全にマッチしている枠ではないため、少し出しづらさを感じることも多いです。
一方でKPT(※2)を採用した場合は、現状の問題点と今後のアクションを出す枠があるため、メンバーが本当に話したいことに沿っており、出てくる意見の量や質は上がるでしょう。

逆に上手く行ったスプリントについては、KPTよりも、良かったことや成果をふりかえることができるFunDoneLearnの方が有効な場合もあります。

このように、チームの現状やふりかえりの目的に合ったフレームワークを選んでいるかどうかで、出てくる意見の量や質が大きく変わります。

 ※1 FunDoneLearn

楽しかったこと(Fun)、実施したこと(Done)、学んだこと(Learn)の3つの軸で意見を出し合う

※2 KPT

続けたいこと(Keep)、問題点(Problem)、Try(次からやっていくこと)の3つの軸で改善のためのアイディアを出し合う

2. フレームワークは適宜チームに合った形に作り変える

どんなによく考えてフレームワークを選んだとしても、チームとフレームワークの相性が悪いなどの理由で、上手くふりかえりができないケースもあります。
このような時は、思い切ってフレームワーク自体を作り変えてしまうことも有効です。

例えば、一般的によく使われるKPTですが、私のチームでは以下のような課題点がありました。

  • KeepとProblemのどちらにも含まれないような意見が非常に出しにくい

    • 例えば「〇〇やってみてどうだった?」などの、単純にチームメンバーの話を聞きたい系の意見など

  • Problemに出てきたものが実際はKeepだった(もしくはその逆)などが起こる可能性があり、深堀りなしではそれに気づけないことがある

  • チームの傾向として、深堀りしてからTryを出すほうが得意

私たちのチームが既存のKPTを使い続ける限り、上記の問題はどうしても避けられませんでした。そこで、KPTの内容を以下のように変更してみました。

  • KeepとProblemを明確に分けない

    • Keep寄りの意見は上の方に、Problem寄りの意見は下の方に貼るような形式

    • どちらにも当てはまらない意見は真ん中あたりに貼る

  • Tryを出す前に、KeepとProblemで出た意見を深掘る時間を設ける

これに合わせて、miroボードのテンプレートも以下の通りに変更しました。

KとPの区切りがなくなり、深堀りの項目を追加しました

このように、自分のチームとフレームワークの相性が悪い場合は、相性が良くなるように作り変えてみることで、
これまでは拾えなかった意見が拾えるようになったり、より本質的なふりかえりができるようになったりする利点があります。

3. 時には、長期的な視点のふりかえりを行う

私たちのチームはスクラムを採用しているため、スプリント単位で物事を考えることが自然と多くなります。しかし、時には目の前のスプリントのことばかりを意識してしまい、長期的な視点が抜けてしまうことがありました。

上記の問題点に対する解決策は色々とあると思われますが、私たちのチームでは日々のふりかえりでこれを解決しようと試みています。

普段のふりかえりでは、タイムラインでスプリントの思い出しを行ってから、KPTなどを用いて次へのアクションを考えることが多いのですが、
月に1回程度、「熱気球(※3)」や「象、死んだ魚、嘔吐(※4)」などのフレームワークを用いて、スプリントに範囲を限らない長期的なふりかえりを行っています。

これらのフレームワークを使うと、長年続いている根本的な課題や近い将来の懸念点など、普段のふりかえりでは見られない意見が出てくるようになりました。

※3 熱気球

チームを熱気球に喩えて、荷物/上昇気流/雲に該当する要素を挙げながら、どうすれば気球を更に高く上昇させることができるのかを考える

※4 象、死んだ魚、嘔吐

チームの課題について、3つの軸で意見を出し合う

本記事のまとめ

  • より良いふりかえりを行うためには、準備を工夫することが重要

  • 私のチームでは特に以下の3点を工夫している

    • 明確な理由を持ってフレームワークを選定する

    • チームに合わせてフレームワークを作り変える

    • 定期的に長期的な視点のふりかえりフレームワークを採用してみる

終わりに

本記事で紹介したふりかえりの工夫点はいかがだったでしょうか?
もちろん、チームによって最適なふりかえりの方法は全く異なるため、今回紹介した方法がすべてのチームで活用できるとは限りません。
冒頭でもお話しましたが、重要なのはトライ&エラーを繰り返しながら、自分のチームに最適な方法を模索し続けることだと思っています。

最後になりますが、本記事が皆様の日々のふりかえりのヒントに少しでもなったのであれば幸いです。最後までお読みいただきどうもありがとうございました。

参考文献

森一樹(2021).『アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット』.翔泳社.

98lerr(2020).『「ふりかえりの手法をたくさん学ぼう」で紹介された手法まとめ』. 
https://qiita.com/98lerr/items/423a3e8ee44e118091bf#%E8%B1%A1%E6%AD%BB%E3%82%93%E3%81%A0%E9%AD%9A%E5%98%94%E5%90%90

Gebski, S. (2018). "Elephants, dead fish & vomit". https://no-kill-switch.ghost.io/elephants-dead-fish-vomit/