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隠し味が人生を楽しくする

大統領の料理人(2012/フランス)
監督:クリスチャン・ヴァンサン
出演:カトリーヌ・フロ ジャン・ドルメッソン

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嫌がらせを気にしているヒマがあったら、やるべきことをやるわ。やりにくいのは私が女だから。でも私は、何があっても淡々とやり通すプロよ。大統領だってママンの料理を食べて育ったはず。私は料理人。南極でも人間がいればご飯を作るわ。

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1988年、フランス大統領官邸であるエリゼ宮殿の専属料理人に、初めて女性が任命された。彼女の名前はダニエル・デルプシュ。この映画はその実話に基づき、ミッテラン大統領のために料理の腕を振った彼女の2年間を描く。

田舎で小さなレストランと料理教室を開いていた彼女は、ある日突然大統領の専属料理人にスカウトされ、思いもかけない人生の転機を迎える。

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しかし新しい職場で彼女を待ち受けていたのは、堅苦しいメニューと規律に縛られた食事スタイル。そして、閉鎖的な男社会からの圧力(イジメ)だった。 

自分たちのテリトリーを侵そうとする女への嫉妬が、滑稽で醜い。

いつもご馳走を食べているのかと思ったら、 大統領が求めていたのは“おふくろの味”。激務で疲れ切った心身を癒してくれるのは、ごく普通の家庭料理なのだ。

そこで彼女は、旬の食材を使ったシンプルな料理を作る。厨房に革命を起こす。味方がいないという点で似た者同士の大統領としみじみ語りあう。

のちに彼女は、60歳で南極調査隊のシェフになったというのだからビックリ仰天。

宮廷料理人時代の孤軍奮闘する姿もカッコイイが、南極最後の1日を綴ったシーンには「隊員たちの胃袋と心を満たすお母さん」だった頼もしさと愛情が感じられて、ああ、料理っていいなあとしみじみする。

彼女を演じる女優カトリーヌ・フロが、背筋をピンと伸ばし、美しい足を見せながらヒールで颯爽と歩く姿にウットリ。彼女のように、何があっても冷静に迎え撃つタフさと、母性的な包容力を併せもつエレガントな大人の女性を見ることができるのも、映画鑑賞の醍醐味の1つである。

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