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kyo_2020
頭がクラクラする瞬間
クラッときたらご用心。そんな張り紙をチラ見して僕は駆けた。朝から三十度を超えた夏真っ盛り。今日もムルソーたちが地下から大量に巣立ち始める。だけど僕はムルソーじゃない。ただの恋する平凡な男さ。彼女とはいつも駅で会う。駅で一緒に並ぶだけの短い逢瀬さ。夏の強烈な光に照らされて僕らは輝いている。ああ!恋ってなんて素晴らしいんだろう。多分僕らは周りには滑稽に見えるんだろうな。だけど恋する人間って側から見ればみんな滑稽なんだよな。ほら、周りの連中がまた僕らの陰口を言っているよ。
「あの人多分熱にやられてるんだよ。いつまでも橋本環奈のポスター見てさ。時々ポスターににっこり笑いかけるんだよ。熱にやられてなきゃそんなキモい事しないでしょ?」
「どうする?駅員さんにこの人熱中症ですって伝えて駅から追い出そうか?」
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