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ジュピター モーツァルトのいる惑星

 かつて木星がガス惑星ではない事は世界の一部しか知らない秘密であった。しかし最近宇宙ジャーナリストのバッハヘンデルが膨大な機密資料を公開して木星が地球と同じ岩石惑星であり、人間以上の知的生命体が存在する事を暴露した。

 バッハヘンデルによると我々が木星と認識しているガスは実は惑星本体を包む太陽光のようなものであり、惑星本体はそのガスの中心にある岩石惑星だという事である。惑星は周りの太陽光ならぬ木星光で一定の温度であり、その空は光り輝く黄金であり、地には銀色の海と、翡翠色の大地があるという。その大地には地球人と瓜二つの知的生命体が存在し、地球と同じかそれ以上の文明を築いているという。バッハヘンデルによるとこの木星人は音楽をこよなく愛し一日中音楽を奏でているという。

 バッハヘンデルは木星人の写真を示して彼らはもとは地球人であったのではないかという事を語った。木星人の姿がどれもかつて地球で活躍した音楽家にそっくりだったからである。しかも彼らは揃ってモーツァルトを得意とした演奏家だった。モーツァルトにはあの不滅の名曲『交響曲第四十一番:ジュピター』があるがこの音楽家たちもモーツァルトのこの名曲に導かれて木星にたどり着いたのかとバッハヘンデルは語った。しかしどうやって彼らは木星にまでたどり着いたのか。バッハヘンデルは流石にわからないと首を振った。

 めんどくさくなってきたので作者の私がその真相を語ろう。我々が惑星だと認識している木星は実はあの世の一部の姿である。そしてこのあの世の一部である木星を管理しているのがあのモーツァルトなのである。モーツァルトは知っての通り地球では散々いぢめられまくったが、死んで木星にきたらなんと神様になってしまった。神様になったモーツァルトは地球では全く受け入れられなかった自分の音楽をここで普及させまくってやると言って地球で死亡した自分の曲の演奏家たちを残らず引っ張ってきて木星の音楽を俺色に染めてしまったのである。他の作曲家の魂はモーツァルトを羨み自分たちも木星に入星させてくださいと申請を出したが、神であるモーツァルトの入星審査は度を超して厳密だった。彼は自分を崇める作曲家しか入れなかった。あのベートーヴェンさえ弾かれたのだ。「お前俺を不真面目だって馬鹿にしたよな。そんな奴木星に入らないから」モーツァルトはベートーヴェンに向かってこんな冷淡なセリフを吐いて彼を追い払った。

 そんなモーツァルトの木星に入星したいとなんと恥知らずにもあのサリエリが申請してきた。モーツァルトは当然大激怒した。許せねえ俺を散々いぢめ抜いたこの野郎だけは生かしておかねえ。長年木星の神として生きてきてすっかり権力者の悦びを知ってしまったモーツァルトはサリエリをどうしていぢめてやろうかと考えた。というわけでモーツァルトは自らサリエリの元に現れて彼に銀河系の中心にある中性子星に住む事を勧めた。

「中性子星はすっごく綺麗な星なんだ。渦みたいに光がとぐろ巻いててさ。近くに体がパン粉になるぐらい吸い込まれそうなほど暗い穴があるんだけどこれが絶景でね。住んだら君は天国よりさらに上の天国に行けるよ。僕のジュピターなんか問題じゃないぐらいにさ」

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