顔面作家~これから書こうと思っている小説のためのプロローグ その2

 ボクチンには有り余る才能があった。どんなものでもかける文章力があった。ボクチンの書いた小説の原稿を読んだ編集者はいずれ君はベストセラー作家になれるよと褒めてくれた。しかしボクチンは才能以外何も持ち合わせていなかった。女の子を夢中にさせるルックスも、ルックスの悪さを補うトーク力も何もなかった。それはボクチンの小説を褒めてくれた編集者も残念そうに言っていた。
「君はなんてもったいないんだ。天は二物を与えないとはまさにこのことだ。しかし今の時代、才能だけじゃとてもやっていけないんだよ。どんなに素晴らしい小説を書こうが今の時代付加価値がなきゃ誰も読まないんだ。その付加価値とはなにか。それはルックスだよ。ハッキリ言って君のルックスは君の小説にもっともふさわしくないんだ。なんだそのニキビ顔は!ちゃんと毎日顔を洗っていたのか!それになんだその自堕落に肥えた体は!顔がブサイクなんだから、せめて体ぐらいなんとか出来なかったのか!だけど君がブサイクで、とてもひと目に出せないルックスをしているからといって君の小説を捨てるにはあまりに惜しい!ああ!君がもっとイケメン、いや君の小説は男の子より女の子を描いたほうがずっといいから、女性……モデル顔でセクシーボディでツルンツルンのお肌をしている女性だったら!」
 ボクチンは編集者の話を聞きながら自分でも全く奇妙なアイデアを思いついたのだ。それはブサイクなボクチンの代わりに可愛いプリンプリンの女の子に僕を演じてもらうことを。



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