忘れたふりをして過ごす

 なんて出来るのだろうか。僕は在りし日の君を思い出して考える。君は去り、僕は一人になった。人生にとって別れはつきものだが、別れの辛さもまた同時について来る。まぁ、人生とは光と影であり、我々の歩くところには影がある。在りし日の彼女はいつも早めに出勤していたものだ。その彼女の足元には必ず影があった。影は陽の角度によって短くもなり長くもなったりする。彼女は時々後ろを振り返り誰かつけていないか注意深く見る。そして誰もつけていないのを見て安心したようにまた歩き出す。だけど当時の彼女は知らなかった。その影が僕だったとは。僕は彼女を愛していた。愛していたからドラえもんに頼んで道具を出してもらったんだ。誰かの影になれる道具を。僕はしばらくそうやって彼女の影になり一日中彼女に張り付いていたが、ドラえもんにオチがあるように僕らの物語にもオチがある。ある日彼女は影の僕を思いっきり踏んづけていった。

「お久しぶり、ストーカーさん。あなたこんなところで何やってるの?」

 そして痛さにたまらず影から出てきた僕の道具を奪い、さらに僕のドラえもんをどら焼きを餌に自分のペットにしてしまった。そのペットのドラえもんに彼女は言った。

「ねぇドラえもん。大嫌いな人間を分子以下のレベルまで砕く道具持ってない?あったら今すぐ出してちょうだい。コイツを分子以下のレベルまで砕きたいの」

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