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短編

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2023年9月の記事一覧

伝説の校正者

 小説家崎咲健之助は緊張の面持ちで編集長に原稿を差し出した。 「あ、昨日の夜からぶっ続け…

秋(空き)時間
7か月前
36

完全独占

 事を終えてからしばらく経ち、恍惚が引いていくのを感じた剛は、重なっていた花子の濡れ切っ…

秋(空き)時間
7か月前
9

某救世主の復活の真相はこれです!

 ナハレの聖者イエスマンはロールパン帝国のユズヤ属州総督ピラフにより邪教を布教した罪でゴ…

秋(空き)時間
8か月前
22

ドキュメンタリー映画『メタルファモーゼン』

 リヒャルト・シュトラウスの晩年の傑作である『変容(メタルファモーゼン)』の前奏が終わる…

秋(空き)時間
8か月前
19

カルテット 僕らの四重奏

 春が終われば、夏が来る。夏が終われば、秋に続いて冬が来る。それでまた春が来てお別れだ。…

秋(空き)時間
8か月前
15

名探偵コブゼックを探して

 先日若くして亡くなった人気推理小説作家グレン・ポプキングに『名探偵コブゼック』という人…

秋(空き)時間
8か月前
21

ギターしか愛せない

家庭訪問 「お父様、本日ご自宅に伺ったのは照山くんの事についてご相談をするためです」と教師は口を開くと、生徒の父は話を聞くためにテーブルの向こうからテカリ尽くした頭を教師に近づけてきた。窓ガラスから入る夕陽が父親の頭にあたりそれが反射して光が教師の目に当たった。教師は生徒の父の貫禄のありすぎる姿とテカリすぎた頭に気圧されて思わず顔を背けた。 「まぁ、先生遠慮しないで全て話してください。一体ウチの息子に何があったのですか?彼はこの間の期末テストで学年トップだったではないで

マッチングアプリ

 多分あなた私を誤解していると思う。あなたと私の認識は、五回まわしで醤油をかけるぐらい捻…

秋(空き)時間
8か月前
20

うどんについてぼくらが語ること

 別に大した用事はなかった。ただ無性にアイツに会いたくなっただけだ。女じゃなくてただのバ…

秋(空き)時間
8か月前
29

脳内会議

 一人の人間の中には無数の性格があり、人格とはその統合体である。それが今の精神分析の常識…

秋(空き)時間
8か月前
25

ドローン

 最近LINEでとある女の子と仲良くなった。かなり美人な子でセクシー女優の某によく似ていた。…

秋(空き)時間
8か月前
21

カップラーメンで夜を越える

 深夜にカップラーメンを食べるなんて不健康で、あまり褒められた行為ではない。だが空腹を満…

秋(空き)時間
8か月前
22

天かす生姜醤油全部入りうどんを草枕にして物語を綴る

 うどん屋でうどんを食べながら考えた。音を立ててうどんを啜ると煙たがれる。ならばと麺を噛…

秋(空き)時間
8か月前
11

船頭さん

「船頭さん、行ってらっしゃい!」  朝の漁港に女の妙に明るい声が響いた。しかし誰も声の主に返事をせず各々の舟のエンジンを吹かせて海へと向かった。  女は船が海へ向かっても漁港を離れずずっと舟置場のコンクリートに腰を下ろして海へ足をぶら下げでいた。その海には朽ち果てた船がプカプカと浮いている。この船は元々誰ぞの漁船だったらしい。  漁港で働くものはその女を遠巻きに見て憐れんでいる。昔は彼女に声をかけるものはいた。だが今は誰も声はかけない。  その女の元にいつものように村