集団催眠は嘘から。

小学3,4年生の時の話。


どこにでもいる活発ドッヂボールボーイだった私。

この頃小学校の図書室が新設されて、
新築の香り立ち込める、おNEWな空間に子供達が殺到しました。

全く本を読まない私は、
初めは見向きもしませんでしたが、

グラウンドで遊ぶ友達たちも
流れてしまったので、渋々通った記憶があります。


中でも人気だったのが、怖い話の本で
友人たちが輪になって、夢中で読んでいました。


そのころ何だかわかりませんが、
こじつけ系の心霊番組も流行っていて、
ちょっとした心霊ブームだったのではないかと今になって思います。


新設されてから何か月か経ち、
これまた何故か図書委員になった私。

相変わらず本は読みませんが、
静かに本を読んでいる人の姿を見るのが好きでした。


休み時間終了のチャイムが鳴って本の片づけが始まる頃。


同じクラスのリーダー格の子と他数名が、
図書室の掃除用具箱を指し、
私に向かって


「ちょっと入ってみて」

と変なお願いをしてきます。


私は別に毎日入ったり出たり
阿保みたいに遊んでいたので、
どうということもなく、
言われるがままに入りました。



すると少しの間があってから、



「なんか感じない?」



そう不思議な顔で聞かれます。




勿論私は全く何も感じません。



「いや、別になんにも…」



リーダー格の子が続けて言いました。




「いま幽霊と重なっていたよ」






私は正直なんか新しい遊びが始まったのかな程度にしか思っていませんでした。


取り巻きの子たちも、

「見えた、見えた」


としきりに言っています。



ここが、初めのきっかけだったように思います。


そして、数日が経つ頃には
クラスの男子ほとんどが突然窓の外を指さし



「いるいる…」


と言ってみたり、
とりあえずスペースを探しては


「そこに立ってるよね…」


と言ってみたり。


いわゆる霊能者ごっこが学年でブームになりました。


私は初めどうしたものかと思っていたものの
仲間外れになるのも嫌だったので、

話を合わせていました。


私も幽霊大喜利するような感じで
いそうなところに、また独特な姿(赤子、老婆)を思い描いて適当に



「そこに巨大な顔があるよね。」




等言っていました。

友人たちも


「いるいる」


と賛同してくれます。


それが何だか嬉しかったのか、面白かったのか、嘘で嘘を共感していく新しい感覚、遊びでした。



放課後にも薄暗いところに集まり、
心霊スポット巡りの真似事をして、
あじ塩を撒いたりしていました。



次第に馬鹿にしていた女の子達にも伝播し、
女子と男子で肝試しチックなことをして盛り上がっていきました。



そして、遊びがピークに達したころ



とうとう感受性の鋭い女の子が
休み時間中に泣き出してしまいます。


「もう…やめて!」




(そんな泣くこたないじゃない…)
僕らは遠巻きに見て思っていました。



がしかし、次々に
「気分が悪い、具合が良くない」等訴え
早退する子が大量に出始めました。



想像していた幽霊が具現化したかの様な惨事に、逆にこちら側が戸惑ってしまいました。




すぐに異常に思った先生達に、事の詳細を聴取されたのち、親御さん達にもこのことが伝わり、この遊びも終わりを迎えました。



怖い話の本の貸し出しも減り、
図書室に来る友達の数が減った頃。


未だに図書委員の私は
いつも通りチャイム終了後に本の整頓をしてから退出していました。


その日も一人で、授業の頭をサボりながら、
だらだら本の片づけをしていました。



昼間なのに耳鳴りが聞こえるくらいの静かな図書室。




怖い本のコーナーが偶然目に入って、
何故かドキッとします。



ですが、あの遊びも終わったばかりで、
TVで言う心霊なんて嘘ばっかりだなと思っていました。




紛らわすために鼻歌を歌いながら、
吹き抜けになっている
返却カウンターの扉を開けます。





「ただいま~♪」



静かな図書室にぽつり。
何となしに発した独り言です。









「おかえり。」






「!!」



それは女性の声ではっきりと聞こえました。



一目散に本を放り出し逃げ走る私。




以後私は図書室でテキパキと仕事をこなし、
他の子達ががいるうちに退出するようになりました。


それ以後一切何もそれらしきことは起こりませんでしたが、暫くは静かな空間自体が苦手になりました。



今でも本はあんまり読みません。


完。



あとがき


このことは友達にも話しましたが、
ブームが去った後でしたので、全く相手にされませんでした。

私は霊感的なものは全くない人生を歩んだので、なんでも大丈夫ですし、暗いところも大丈夫です。

ですが、このことだけが思い出深く
何故か頭に残っていたりします。



HAPPY!!


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