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恥かき人狼。
二十代、何度も転職していた私。
その度に会社からのお達しで、
新入社員セミナーに参加していました。
「前の会社で行きました。」
これが言えません。
毎度毎度出席していました。
![](https://assets.st-note.com/img/1699323458112-nt9KzQfOlO.jpg?width=800)
~
そして何度目か、
そこそこ規模のあるセミナーに
参加している時のこと。
今回もいつも通り始まりましたが、
皆フレッシュな若い人たちばかり。
恐らくですが、偽新入社員は私だけ。
ちょっと自分だけ老いてます。
そして皆消極的。
誰も進んで挙手したり、
シミュレーションをしようとはしません。
講師の残念そうな顔を見ると、
毎回忍びなく思います。
よし。
ここはベテラン新入社員の自分が、
一肌脱ぐしかないか…
私「はい!やります!」
そして頭真っ白。
大失敗。
ややうけ。
(あえてね。雰囲気をよくするために。)
そう自分に言い聞かせて。
今までの経験から
何も学んでいないことを、
無にします。
![](https://assets.st-note.com/img/1699173162747-JkW39MSLlF.jpg?width=800)
そして、
こうなったからには
面白兄さんモードでやっていくと決意した私。
すかさず挙手をし、
大失敗。
ややうけ。
(あえてあえて。)
変なスイッチが入って止まりません。
こうしたやり取りを繰り返し、
会場が変に柔らかくなってきたところで、
セミナーも終盤を迎えました。
~
講師「それでは最後に人狼をやりましょう!」
(…?)
(人狼ってなんだっけ…?)
周りの様子はどこか楽しげ。
ヘーッドショルダーニー&トー
ニー&トー!
みたいなやつだっけ…?
記憶の欠片を集めても、
ヤムチャの狼牙風風拳しか出てきません。
講師「ルール知らない人いますか?」
(ルールあるの…?)
全く分かりません。
ここは完全に挙手のタイミング…
私「ん…」
どうしたことでしょうか。
"人狼"は知っている面白兄さん
でいたかったのでしょうか。
私は手を挙げることが
できませんでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1699236807396-xk29gYZnWC.jpg?width=800)
私の心の焦りも空しく、
質問ゼロで始まってしまいました。
20人規模2グループの人狼です。
勿論みな初対面。
この圧倒的劣勢感、圧倒的アウェイ感。
脇汗ギュンギュンです。
(多分何か議論するゲームなはず…)
…よしまずは、あれだ。
ゲームを壊さないように努めよう。
「ここは"見"(ケン)だ!」
役割のカードが一人一枚ずつ配られていきます。
(ゴクリ…)
実はここが最大の正念場。
特別そうなカードを引くとすべてが台無し。
「すみません。ルール知りませんでした。」
の大白状。総スカン。刑事告訴。
頭が沸騰しそうです。
謝るときはしっかり謝ろう。
そう覚悟し、ゆっくりとカードに手を掛けます。
ペラリ…
"村人"
どうやら私は「村人」らしい…。
(うん…たぶん…多分…安牌。)
"その他大勢"な感じがするぞ!
やった!
沈黙を貫いてゴールまで突き進む。
これでよし。
勝利の方程式を確信したところで、
ほっとしながら、周りに目を移します。
ん?…
皆が私を見ている。
(何?何!?何かするの?)
とにかく笑顔を切らさないようにする私。
「笑顔が最大のコミュニケーションです。」
そうさっき言ってました。
ばれたのか?
ルール知らないことがばれたのか?
カードを隅から隅まで凝視し、
どこかにヒントがないか探します。
刹那、賢そうな青年が、
第一声をあげました。
「占い師の方いますか?」
(えっ?)
(占い師って新入社員セミナー来るの?)
はいはい。嘘嘘。
ゲームの役割ね。
知ってた知ってた。
私の泉ほど湧き出る脇汗を横に、
どんどん進みだす人狼。
しばらくして段々ルールが見えてきました。
どうやら話し合いを行い、
潜む人狼を探し当てる(処刑)というものらしい。
それを数ラウンド繰り返していく。
処刑された人はおしまい。
遠くのベンチに移動し、眺めるのみ。
活発に議論が進んでいく中、
とにかく沈黙でニコニコを貫く私。
当初の作戦を忘れてはいけません。
そして最初の投票が始まりました。
ざわざわ…ざわざわ…
「始めは全然分からないよね。」
「一斉に指差しで決めようか?」
「それじゃせーのでやりましょう!」
「ニコニコ。」
「せーの!」
![](https://assets.st-note.com/img/1699321803304-RqmGhybnUq.jpg)
私が何をしたというのでしょうか。
私の指だけが震えて空を指しています。
そうか。
これは端から決まっていたのか。
間違いなく出来レース。
セミナー序盤に目立ち過ぎた、私。
人狼云々関係なく、
最初に指すのはあいつにしよう。
そう皆が第六感を超えて、
心を一つにしたのです。
あいつを指しておけば、角立たないしょ。
そうそれが最適解。
寂しい!
講師「それでは、退席される方一言!」
私「へへっ(ニコニコ)」
ややうけ。
あとがき
兎にも角にもゲームを壊さずに済み、
ほっとしました。
遠くの席でケータリングを
ポケットに詰め込んでから、帰りました。
今も詳しく知らない人狼。
本当の人狼はあなたなのかもしれません。
(?)
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