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小説*カナデとウタ完

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歌手になりたい主人公、ウタと、幼なじみでちょっと抜けてる?カナデの物語。
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カナデとウタ1

「カナデー!」 ウタの元気な声が朝の住宅街に響く。ウタは女の子、カナデは男の子。2人は幼なじみでいつも一緒に遊んでいる。しかし、ウタの方がしっかりしているので、よくお姉さんに間違えられる。 今日、2人とも小学生になる。入学式の日だ。 「はぁい」 頼りなさげな声が聞こえる。 眠そうによたよたと歩きながらカナデが家から出てきた。 大きなランドセルを背負って。 ウタはカナデを見るとにっこりと笑った。 ウタはカナデのことが好きなのだ。 カナデは、、特に何も考えてないだろう。

カナデとウタ2

2人は大学生になった。 いつしか2人は親友じゃなくなっていた。 小学生のころはまだよかったが、2人は違う中学校に入学した。 すると、2人の世界はどんどん離れていった。でもそれは仕方のないことだろう。 ウタは、時々、母親からカナデの近況をきく。カナデと最後にあったのは小学校の同窓会だった。 それよりも、ウタは部活や友達と遊ぶことやおしゃれや、新しいお店や、音楽をきくことで忙しかったのだ。 「カナデくん、ウタと同じ大学よー」 へー 「へー、って、冷たいんだね」 そう

カナデとウタ3

➖ウタは歌手になりたかった 小学生からの夢だった➖ 高校 ♪〜 最近、ウタは、学校帰りによくタワレコに寄っている。 視聴コーナーで新曲がきけるのだ。 イヤホンを耳にあてる。 その瞬間、周りの世界が遮断され、私だけの空間ができる。ウタはこの時間が好きだった。 ボリュームを回して調整する。 イントロが流れ始めた。ギターの音。ドラム、ベース、そして、楽器の音の間にきこえる、ボーカルの息継ぎ。 このイヤホンできく音は、どこまでも鮮やかだ。 とウタは思った。特別なイヤホンなのだ

カナデとウタ4

ジャーン。 ギターの音が響く。 ウタは、ロックが好きだ。軽音部に入るまで、ギターとか、ベースとか、ドラムとか、別世界のものだと思っていた。 中学の時に、はじめてロックを知った。 オシャレな友達が貸してくれたCD。 それが、ウタがロックを聴き始めるきっかけだった。それまで、音楽は、Jpopしか知らなかった。安室奈美恵や、嵐、orange rangeなどが好きだった。(Jpopにもロックの要素はあるのかもしれない) それまで、音楽を聴くのが好きだった。けど、ロックを聴

カナデとウタ5

ただいまー!ウタは家に帰った 「遅い!」 母親がピシャリという。ウタのお母さんは厳しい人だ。 ウタが部活で遅くに帰ってくると、お母さんはいつもイライラしている。 ウタが部活に熱中しはじめてからだ。 ウタはお母さんがなぜこんなにイライラしてるのか分からなかった。 「学生の本業は、勉強。部活なんてやらなくてもいい」 というのが、お母さんの言い分だった。 「ほんとに? 私はこんなに部活、頑張ってるのに、、」 そう思っていても、 「ごめん」 と言って、自分の部

カナデとウタ6

入部して半年がたった。ウタは、充実した毎日を送っている。 中学からの親友のマキがいう 「ねえウター、今日、帰りにカフェいかない?」 「かわいいとこ見つけたんだあ」 「ごめーん!今日練習にいくの!」とウタ。 マキは「そっかあ」といった。 「なんか最近、ウタ、すごいよね」 「なにが?」とウタ。 「うーん、なんか輝いてるって感じ 笑 部活も頑張っとるし。」 いままで、ウタが自分からこんなに夢中になったことがなかった。友達に合わせるんじゃなくて、自分で新しく始めた

カナデとウタ7

ウタは楽しい毎日を送っていたが、お母さんとは仲良くなれないままだった。 部活のときに愚痴ることもあった。 「今日、練習のあとに、みんなでご飯食べにいこーよー!」 「ごめん、早く帰らなきゃいけないから」 「えーなんでー?」 「お母さんが怒るの。厳しくて。」 「えー、そっかあ、、    がんばって!」 「うん、、」 ウタの気持ちを理解できる人は、部活にはいなかった。 「ただいまー」 今日、お母さんはいつも以上にイラついているようだった。 「げー、めんどくさ

カナデとウタ8

「おはよー!」親友のマキがニコッと笑った。 部活に行かなくなって、友達が減っても、こうやって普通に接してくれるマキには感謝している。 「おはよ!」とウタ 「あ、そーいえば、ウタ、軽音部やめたん?」 いつもはノーテンキなマキが、心配そうな顔をしている。 「なんかあった?ウワサになってて、きいたよー」 「いろいろあって」 「ウタはそれでいいん?」 「え 私は、、」 放課後、やることもないので、マキと一緒に帰る。 廊下のむこうから、楽器を背負った人たちがくるの

カナデとウタ9

へー カナデはそういうと、コーラを飲み干した。 大学の近くのマクドナルド。 カナデとウタは、次の授業が始まるまで、時間を潰しているのだった。 「そう、私は逃げたの だから、みんなみたいに、大学を楽しめないよ。チャラチャラして」 「んー、でも今の話をきいてると、行きたくなかったから、行かなかっただけでしょ? じゃあ、しょうがなかったんじゃない?」 とカナデはいった。 「う、うん、、」でも 違う。 ウタは後悔していた 「ウタは大げさだよ」 カナデは笑った

カナデとウタ10

マクドナルドの時計を見たウタは、びっくりして言った。 「てゆーか!授業はじまるじゃん!!」 「ほんとだ!急ごう!」カナデも慌てて立ち上がる   2人で大学の中を走る ウタは、やっぱりカナデといると居心地がいいな、とふと思った。 ある日の授業おわり カナデがこんなことを言い出した 「ウタ、カラオケ行こう!」  いいけど カナデと2人でカラオケに行くのは初めてだ 「ウタの美声もききたいし」 美声、 そういわれると嬉しくてニヤニヤしてしまう ウタは以外と

カナデとウタ11

カラオケ 「ウタは、歌手になりたいんだよね」とカナデ 「え?」 「え、違うの?」 「なりたかったけど、いまは、、 わかんない」ウタは困ったような顔で笑った。 「そっか こんなにうまいのに、もったいないよ」 もったいない、か。。 「そうだ!一緒に文化祭に出ようよ!」 カナデは言った。 ウタは、 一瞬、わくわくした。 けど、すぐにうつむいて、いった。 「出なくて、いいよ」 帰ろ。 ウタは、帰る準備をし始めていた。 う、うん ちょっとまって!

カナデとウタ12

大勢の観客たち。 空は快晴。 野外ステージで気持の良い風がふいている。 観客たちの目は、ウタに釘付けだ。 ウタは、思いっきり歌っている。自由に。 思うように声が出ている。いつかの軽音部のライブとは大違いだ。とても、楽しく、のびのびと歌える。 まるでカナデといる時みたいにリラックスしている。 観客のみんなは、男の子も、女の子も、みんな笑顔でこっちを見ている。歓声を送ったり、リズムにのったり、みんな楽しそうだ。軽音部のみんなもいる。 ああ、よかった。 ぱちっ

カナデとウタ13

「ねえ、ウタ!聞いてる?」 「あ、ごめん.きいてなかった。」 「もうー、それで結局そいつ、15日行けないとか言い出してー、」 「へー、なんで?」 「知らなーい、仕事が入ったんだって。もうやめようかな、この男。」 「ユキは、その人のこと好きなんだっけ?」 「んー、好きだったけど、わかんなくなってきたあ。 グッチのカバンも買ってくれないし。」 「あー、じゃあやめたらー?」 ウタは、学食で、大学で友達になったユキと喋っている。 なんか、くだらないなぁ ウタは、

カナデとウタ14

文化祭前日 ウタは、サークルに入っていないので、何も準備はない。 高校の軽音部をやめて以降、なんだか新しく始める気も起きずに、だらだら過ごしてきたのだった。 文化祭に向けて準備するみんなを見てるのはちょっと辛かった。 みんな充実していて、やりたいことをやっていて、楽しそうだったから。 おーい カナデだ。 「あ、カナデじゃん。」 「おつかれ」とウタは言った。 「おつかれー」とカナデも返した。 「明日、きいてよね!」カナデはにっこり笑った うん!ウタもつられ