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カナデとウタ14

文化祭前日

ウタは、サークルに入っていないので、何も準備はない。

高校の軽音部をやめて以降、なんだか新しく始める気も起きずに、だらだら過ごしてきたのだった。

文化祭に向けて準備するみんなを見てるのはちょっと辛かった。

みんな充実していて、やりたいことをやっていて、楽しそうだったから。

おーい

カナデだ。

「あ、カナデじゃん。」

「おつかれ」とウタは言った。

「おつかれー」とカナデも返した。

「明日、きいてよね!」カナデはにっこり笑った

うん!ウタもつられて笑う。

カナデがいると、笑顔になれる。

カナデがいると、悩むのが馬鹿らしくなってくる。


文化祭には、中学からの親友のマキもくる。大学では別々になったので久しぶりに会えるのは嬉しい。

大学で友達になったユキは、文化祭には来ないといっていた。ユキいわく、文化祭なんてつまんない、らしい。










カナデのバンドがはじまる時間だ。

野外ステージには、たくさんの人が集まっている。

高校とは違って、本格的なステージだし、見にくる人も多い。カナデが舞台の上でメンバーらしき人と話しているのが見えた。

ウタはふらっとした。

なぜか、カナデたちの姿が、高校の軽音楽部の人たちと重なった





ウタは、軽音楽部のことを思い出した。





「見たくない」

目の前が真っ暗になった


なんで、私あのとき逃げちゃったんだろう

あのとき、なんで、みんなは、、









「いやだ」

逃げたい







そのとき、

「ウター!!」

マキが走ってきた。

「マキじゃん!」

  マキは、ノースリーブを着ていた。

「なんか大人っぽくなってる..」



「ウタ、大丈夫?顔が真っ青だよ?」

マキがいった。

「ウタさ、高校のとき、結構部活のことで悩んどったやん?心配しとったんよね。」

ウタは、マキの近くに行った。

そして、ウタは、舞台を見た。

カナデがいた。

カナデは、ウタを見つけて、笑いながら手を振った。

「ウター!!」

みんながウタのほうを見ている。

恥ずかしかったけど、つい手を振り返す。

あ、大丈夫だ。

ウタは、カナデを見ると、安心するのだった。

よかった。。





カナデたちのバンドがはじまった。

「オリジナル曲を歌います!!」

カナデが言った。

ジャーン

ジャーン

ジャーン


ギターが鳴る。



チッチッチッチッ

ドラムが入る。



それは、バラードのような疾走感のあるような、不思議なイントロだった。





"僕と一緒に     前に進もう"


"またゼロから    前に進もう"


"僕がついてるから     一緒に進もうよ"


"無理しなくていいからさ"


"僕と一緒に     前に進もう"


カナデの歌は、全然上達していなかった。

相変わらず、朗読のような。

でも、安心した。

カナデとなら、いけるのかもしれない。


私、もしかしたら、



前に進めるのかもしれない。






ほんの一ミリだけど、

小さな小さな希望の光

が見えた。



私、カナデとなら、

生きていけるのかもしれない

とウタは思ったのだった。






*おわり*











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