「重力ピエロ」読み切った
ネタバレありありです。
まずこの本を読みきっての感想。複雑だなあ。という感じ。
これは物語が複雑でわかりにくい、というわけではなく、世の中のなにが正しくてなにが間違いなのか考えさせられるストーリーに加えて登場人物のバックグラウンドや事件の真相、表現の仕方が複雑に絡み合って読み応えのある作品でした
でも、この本の主題となるのは、大切なものは見た目では判断できない、ということです。
タイトル
まず、タイトルにもなっている「重力ピエロ」という言葉。
主人公家族がサーカスを見に行った場面で、ピエロは重力を忘れさせるためにメイクをして空中ブランコを飛ぶ。
それと同様に、泉水と春は父親に深刻なことを陽気に伝えることで規則や法律や罪を忘れさせたいと考えた。
バックグラウンド
次に、泉水と春の出生の秘密だ。
春は母と強姦の子供で、周囲にもそのせいで嫌な目を向けられたが、確かに春と父親は親子だし春と泉水は兄弟だった。
周りからの見てくれは春は強姦の子だったかもしれないが、泉水たちと家族であるという事実は確かだった。
最後の泉水と春の嘘をつく時の癖や、父親の「やっぱりお前らは俺の息子だ。」というセリフもとても良かった。
細かな比喩
あとは、ちらほらな比喩というか伏線だけど、最初の泉水が同期と飲んでるシーンで同期が連れてきた女の人。
それも、主題を表してると思った。
最初はその女の人の胸がかなり開いた容貌らしく「えー、なにそれ、わかんなーい」という感じで2人の話を聞いていたのですが、最後で2人よりももっと詳しい知識を披露して去って行く。
それがそういう女の人ってこういうこと言いがちだし男の人もそれを求めているよね、でも本当にそうじゃないこともある。
っていう表し方だなと思った。
そしてその女性、女目線で言ったらめちゃめちゃかっこよかった。
好きなシーン
そしてもうひとつ、わたしの好きなシーンがある。
大体の人は浮浪者は不潔で攻撃的だと思うが、そうでない場合は哀れだが優しい、と思っている。でも実際は、攻撃的な浮浪者もいれば優しい浮浪者もいる。人はひとくくりにするのをとても好む。
みたいなかんじのとこ。
ほんとにその通りだなって思った。
たしかに見てくれはみんな浮浪者だったとしても、そのひとりひとりに人生があって歴史がある。
ネットの世の中だってそうだ。
顔の出していないアカウントにもひとつひとつその人生があるし人柄や性格がある、だからネット社会での言葉には気をつけなければならない。
と、これはかなり脱線したとしても、ここのシーンはわたしの考え方にコツンと響いた。
伊坂幸太郎
わたしは伊坂幸太郎の作品はゴールデンスランバーに続いて2作目だ。
でも、小説の面白いところは同じ作者の別の作品を読んだ時、少しだけ作者の考えやバックグラウンドが垣間見えるところだ。
例えば、この2作品でいったら、整形美女が出てきたり、殺人には理由があるという考えの父親が出てきたり、、。
伊坂幸太郎本人がもしかしたら整形したとしても中身は変わらない、罪には犯した人の背景がある、というのを考えているのかもしれない。もしかしたら。
こういうのを想像するのが楽しい。
だから小説はやめられん。
さいごに
ここまで読んでくれた人、もしいたら、本当にありがとうございます!!
以上です!
もうすぐ春休み終わってまう。
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