【第1回】自分はどんな人間だと思いますか?|インサイトジャーナル
「自己紹介って嫌だよね」
いつか誰かとそう同意しあったことがあった。最近も、息子が「自己紹介は苦手」というので、「わかるわかる」と頷いた。
自己紹介とは、簡単にいえば「自分はどんな人間か」という紹介や説明だ。
仕事の面接などでは「自分はどんな人間だと思いますか?」という、とても抽象的な質問をされることはかなり多いのだとか。それにしては、すごく難しい質問だ。
でも、誰かに自分のことを知ってもらうためには、自分が自分のことをちゃんと知っていなければならない。
よく知りもしない商品を売ることができないのと同じで。
「自分はどんな人間か」とっさに考えてみた
まずは一発勝負のアドリブで、考えてみる。状況は、仕事で新しいチームに参加した、アウェイを想定する。
……こうして書いてみると、ひどいものだ。
たったこれしか浮かばない。もっと説明しようと思えば思うほど、どの情報を選択すべきかわからなくなって、頭が真っ白になった。
でも、このたった2文が、わたしの性格をちゃんと物語っている。
1行目は、自分が主に普段何をしているのかを端的に示している。これを仕事としているというのは、それが得意だということの表明である。
伝えるべきことであり、自信をもって言えることなので、まず先に出てくるわけだ。「事実」なので、わかりやすい。
しかしその次に「話すのは上手じゃないです」と出てくる。これは、本当にここ何年もわたしがコンプレックスに感じていること。
多分、話しながら自分で「うまく話せてない」と思うからこそ、これが出てくるのだろうなと思う。
そしてこのコンプレックスをわざわざ話す理由はもうひとつ。
保険をかけているのである。
「この人、話すの下手だな」「たどたどしいな」と思われた場合を想定して「自分でもわかってますんで」と、先手を打っているわけだ。
わたしは、コンプレックスが周囲にバレることより、欠点に対して無自覚なことの方が恥ずかしいという価値観を持っているんだろう。
「下手なのはちゃんと知ってます」
「言われなくてもわかってます」
そうやって、防御しているんだなと思った。
なんともプライドが高い…!嫌だわ~
しかも、それ以降何も浮かんでこない。人にどんなことを伝えればいいか、どのような項目をチョイスすればよいか、短時間で絞ることができないのだろう。
自己理解と自己PR
時間をかけてじっくり考えれば「自分はどういう人間か?」をはっきり整理して伝えられるのだろうか。
いや、そうでもない。
たとえば、わたしはフリーランスとして働いているため、自分の仕事用プロフィールを作ることがある。
以前はそのプロフィールがうまく書けないことで毎回悩んでいた。その度に「わたしは自己紹介とか、自己PRとか、苦手なんだよな~」とあきらめて、逃げていたんだ。
実績などは事実を忠実に並べたらよい。
しかし「わたしはどういう風に仕事に向き合っているか」とか「どんなことを実現できるのか」というのが、はっきしりていなかった。
それは、自分が何の、誰の役に立ったのかが理解できていなかったんだろうと思う。
「自分が仕事をもらえたか・もらえないか」「クライアントからどう評価された・何を褒められた」かしか、考えていなかった。
自分のことばかり考えていたから、相手に自分が提供できるものが何なのかわかっていなかったんだろう。
自己PRが書けなかったのは、それが苦手なんじゃなく、いわゆるTakerだったからかもしれない。
じゃあ、今それをじっくり考えてみよう。
具体的な実績や経歴意外に「わたしはこういう人間です」「わたしは何ができます」「こういうときに、お役に立てます」という説明があるほうが、興味を惹くし信頼感も増す。
そう思って、プロフィールにそれをちょっとだけ追加してみたら、スカウトの数が少し増えた。
「自分中心」の世界から「相手目線」の世界に切り替わった、大きな転機だったと思う。
「そうありたい」と「実際にそうであるか」
ここでひとつ引っかかるのが、「自分がそうありたい」と「実際そうであるか」の違いだ。
「そうありたい」と思っている人は、実際にそうであるのか?
最初は違ったとしても、そうあろうと心がけているうちに、実際にそうなっていくものではある。
マザーテレサの有名な言葉ではないが、言葉・行動・習慣・性格・運命はすべて繋がっている。
でもときどき、自己評価と他者評価が大きくずれている人がいたり、自分自身も「自分で思っている自分」と「人から見た自分」が違いすぎることがある。
これはメタ認知能力の問題だ。メタ認知能力が高い人ほど、自分ではなく他人の言動を観察したり、他者の考えを想像したりすることができる。
わたしが「自分のことしか考えていないせいで、適切な自己PRができていなかった」というエピソードと通じてくる。
理想と現実をごっちゃにしていたり、思い込みや偏った自己イメージが強いと「自分はこういう人間であるべき」と「こんな人間でいなくちゃいけない」に、置き換わってしまうことがある。
自己イメージと客観的な評価をすり合わせるためにも、いろいろな人と会話したり、こうして書いたり、時にはコーチングやカウンセリングなどを使って、振り返り「固める」機会を作るのも大事だと感じている。
自己理解の更新
こんな風にときどき、自分とはどういう人間かを振り返ってみよう。
そもそも、自分のことをよく知らなかったら、人に説明することはできない。そして、古い情報を伝え続けていることがネックになって、コミュニケーションがうまくいかないこともある。
自分は常に変化しているのだから、ときど自己認識の更新をしよう。
「自分がどういう人間か」なんて、数行の文章や、数分のプレゼンテーションのなかにはおさめられないという気持ちもある。
でもそれは、自分のエゴ。他人に自分をきちんと表現して、役に立ったり、円滑な関係を築いたりするためには「自分が」ではなく「相手にとって」の角度で、目の前のことを考えられる切り替えの技術も大事だなと思うこの頃だ。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?