夏野新(なつのしん)

ライター・執筆業をしています。noteでは個人的なエッセイを公開中です。自分や社会を知…

夏野新(なつのしん)

ライター・執筆業をしています。noteでは個人的なエッセイを公開中です。自分や社会を知ることの大事さ、言葉やコミュニケーションの重要性を痛感し、気づいたことや分かったことを文章にしています。索引:物書き/ HSP/ AC/発達凹凸/人間関係/家族etc

マガジン

  • 大好きな絵本の記録【読み語り・読み聞かせ】

    主に小学生の子どもを対象とした読み聞かせ・読み語りを行っています。お気に入りの本、自分の中で鉄板としている本などを中心に、絵本の記録と個人的な思いを書き留めています。

  • 人間関係・コミュニケーション

    うまくいかない人間関係、コミュニケーションのエッセイ

  • 思い出と雑記

    昔の思い出、雑記、ちょっとした記録文、感想文やレポートなど

  • 子育て親育て

    2人の男の子を育てを通じて体感したことをまとめたエッセイです。真剣な話からおもしろネタまで

  • 言葉とこころの解剖室

最近の記事

ものぐさトミー【読み聞かせ・読み語り】

この本の表紙を見て、何を感じるだろうか。わたしは「絵が古い」「特に惹かれるものはない」と思った。小さい本だし、並べていても決して目立つことはないだろう。 でも、この本はわたしが読み語りや読み聞かせをするなかで推したい作品のひとつである! あらすじとしては、電気仕掛けの豪邸に住んでいるトミーのお話。朝起きるところからシャワー、着替え、朝食に至るまでのすべての身支度が自動装置で行われる。 「めんどくさがり」という意味の「ものぐさ」とは、そういうことかと膝を打つような始まりで

    • かっこつけたかっただけ

      小学校のクラスを後にしたあと、静かな廊下をひとり速足で歩く。 この時間は、いつも、夢を見ているような気がする。「なんでわたしはここにいるのか?」「なんでこんなことをしているのか?」そんな気持ちになる。 しかし、どこか温かさに包まれているような感じもしていて、余計に自分のことがわからなくなる。 ◇ 昨年の夏から、わたしは小学校で絵本の読み聞かせボランティアをしている。週にいちど10分間だけ、持ち回りで各クラスを訪問して絵本を読むのだ。 昨年の7月、学校から息子が持ち帰

      • 「心が読めるようになりたい」

        「わたし人の心読めるようになりたい!」 ゆきちゃんはわたしの家に着くなり、唐突にそう言った。 「人の心読めればいいのにって思ったことない?」 「あるけど、人の心なんか読めたらたまったものじゃないよ。だから読めなくていい」 「そうなの?」 「そうだよ」 ゆきちゃんとちゃんと会話したのは、この日がはじめてだった。 その日は、息子の友達の男の子たち数人がうちに遊びに来ることになっていた。 公園で待ち合わせをしていたら、ゆきちゃんと男の子たちがばったり出会い、そのまま

        • 腹の底から笑ってくれ

          わたしには、自分を自分で褒めたくなる瞬間、自分を誇らしく思う瞬間がある。 それは、人を笑わせたときだ。しかも「もうやめてくれ」と言うほど、腹の底から笑わせたとき。 最近になって急激に「人を笑わせたい」という欲求が強くなり始めた。 息ができなくなるまで笑ってほしい。自分が言ったことで人が笑うのが嬉しくてうれしくて、しょうがなくなり始めた、34歳である。 芸人を目指すわけでもないし、ギャグ漫画を描こうと思っているわけでもない。「夏野さんっておもしろい人だね」というレッテル

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          時空がゆがむほどの「よろこび」

          洗面台の鏡の前で、わたしは茫然としていた。目の前にいる人は、誰なんだろう。わたしの髪の毛を梳かしているこの人は、いったいどこから来たんだろう。 14歳になるわたしの息子は、少し前から自分の髪型のことで頭を悩ませていた。いっぽん一本が太くて硬い、クセのある髪。ツヤがなくて、広がりやすい。ちなみに、うちの家族は全員同じ髪質だ。 若い男子の流行りは、さらさらのボブカット。マッシュの子もいれば、センター分けにしてさわやかな雰囲気にしている子もいる。 一方、息子の髪は硬くてごわご

          時空がゆがむほどの「よろこび」

          大好きな仕事を6ヶ月間離れて

          わたしは、14年以上前からWeb記事を書くライターをしていた。この間には、出産や子育てなどで休業していた時期もあったが、ほとんどの期間は、何かしらを書いて過ごしてきた。 今年の3月ごろだったか。以前からお付き合いのある企業で、ディレクターをやってみないかという話をいただいた。 実を言うと、わたしはずっと「ディレクターには絶対ならない」と決めていた。業界では「ライターは経験を積んで、いずれディレクターにステップアップしていくのがこの世界で生き残るひとつの方法だ」とかいう話を

          大好きな仕事を6ヶ月間離れて

          【第9回】気持ちは観測によって証明される~そこにあるものとないもの~

          言葉から人の心やコミュニケーションのヒントを紐解きたい。その思いから『言葉とこころの解剖室』というシリーズものを書いています。 無意識に使う言葉や、言葉に対する感覚から「自分」を知り、言語コミュニケーションを通じて「相手」を知ることができます。決して正解のない世界ではあるものの、言葉という高度な道具をできる限り大切に、そして有用に使いたい。 執筆業に携わる者としても、いち人間としても、言葉と心をもっと追求したい!ここは言葉やコミュニケーションを分解、分析して明らかにする「

          【第9回】気持ちは観測によって証明される~そこにあるものとないもの~

          「そういう時期だよね」って、どういう時期?9歳の壁・中間反抗期のまとめ

          長男が小学校3年生のころ「中間反抗期」という言葉に巡り合ってだいぶ楽になった記憶がある。 しかし、そのあともうひとつ重要な概念である「9歳の壁」という時期があることを知って「なんだ、もっと早く知っておきたかった」と思ったことも、鮮明に覚えている。 どちらも、小学校中学年~高学年にかけての重要な成長過程であり「難しい時期」と呼ばれる期間だと思う。 ……いや、子育ては、休みなくずっと難しいとは思うんだけど「最近やたらぶつかる」とか「どうもうまくいかない」ってときは、やっぱり

          「そういう時期だよね」って、どういう時期?9歳の壁・中間反抗期のまとめ

          自分の「好き」を人と共有しない理由

          わたしはどうも、好きなものを誰かと共有することがあまり得意ではないようだ。 家族や友達と、好きな音楽や映画の話をすることもあるし「わたしもそれ好きだよ」「これいいよね」って言い合うことは、もちろんある。むしろそんな話ばかりしていたい。 しかし、ふと、自分の中で本当に強い「愛着」を感じるものについて思いを馳せてみる。 すると、それらはみんな、誰かからの影響を受けていないものや、誰かと共有したことのないものばかりだった。 好きなものを誰かと共有すると「相手」の印象が強く残

          自分の「好き」を人と共有しない理由

          「指摘しあう関係」か「容認しあう関係」

          「相手のためになるなら、言いにくいことも指摘したほうがよい」という考え方がある。 言いたいことを率直に言える関係性がよいとか、悪いところを言ってあげるのが本当の優しさであるとか。 けっこう昔から、この考え方は推奨されてきたと思うし、言いたいことが言えない関係はそもそもマズイ、という見方もある。 一方で、相手の困ったところも、めんどくさいところも、すべてひっくるめて容認し「それがこの人である」と容認し合う関係もまた、素晴らしいとされることがある。 人間関係には「指摘しあ

          「指摘しあう関係」か「容認しあう関係」

          「好き」はひとつじゃない。感情の種類と探求のはなし

          最近「好き」という気持ちについて深く考えるできごとがあったので「好き」にという感情とその力について、あれこれ考えている。 わたしは、最近になって「好き」という言葉をたくさん使うようになった。昔は、自分が好きなものについて話すのが恥ずかしかったり、好きという言葉を発するのに強い抵抗を感じたりすることがあった。 というより「好きなのか・そうでないのか」が、よくわからないことも多かった。 それが、最近では自分の感覚がよりクリアになってきて、好きなものには迷わず好きと言い、表現

          「好き」はひとつじゃない。感情の種類と探求のはなし

          愛するとは?相手の生きる世界を認めること

          愛するとは何なのか。 わたしが思う、人を愛するとは「その人にはその人の感じる世界がある」と知ることである。 一般的には「一人の人間として尊重する」という言い回しがよく使われる。わたしにとって、他人を尊重するというのは「その人にはその人の感じる世界がある」という認識で接することだ。 たとえば親子間では「子どもを一人の人間として尊重することが大事」といわれる。でも、これって実はけっこう難しいことで、なかなか本質的に理解して実践するのは難しい。わたし自身、できている自信はない

          愛するとは?相手の生きる世界を認めること

          「絵本を読む」こと「活字を読む」こと

          「絵本を読む」とはどういうことか、考えたことはあるだろうか。 わたしは絵本の読み聞かせが好きで、毎日ほとんど欠かさず子どもと絵本を読んでいる。本好きが高じて、今年からは読み聞かせボランティアの活動にも参加するようになり、以前にも増して絵本に触れる機会が増えた。 そんななか、友人に一冊の絵本を勧められた。 『ぽんたのじどうはんばいき』という絵本。幼児向けの絵本で、可愛らしい絵柄、自動販売機というワクワクするような題材が魅力的だと思った。幼稚園や保育園でのオペレッタやパネル

          「絵本を読む」こと「活字を読む」こと

          「悩み」にはハイセンスな名前をつける

          特定の状態に名前をつけると、すごく気持ちが楽になることがある。 とくに、人は目で確認できないはっきりしないものにすごく恐怖を感じるものだ。だからこそ、その現象や状態に名前をつけて安心しようとするところがあると思う。 たとえば今パッと思い浮かぶのは「産後クライシス」「ひきこもり」「〇〇ハラスメント」「カサンドラ症候群」「コミュ障」など。 精神疾患名や発達障害、HSPなどもそうだろう。「目に見えないつらさ」に名前がつくことでホッとするという意見はとても多い。 わたし自身、

          「悩み」にはハイセンスな名前をつける

          感受性が強いって結局どういうことなの? 〜13歳の息子と話したこと〜

          「あぁ~おもしろかった。さすがにもう寝よう。今の話本にしたら絶対おもしろい。お母さん『息子と話したこと』って、何か文章書きなよ」 2時間近く話し込んだ後に、息子がそう言った。 この話は、思春期の息子のいらだちから始まり「感受性の強さって何なのか?」という話題に発展して、無事着地するまでの話。 「中学生って本当にイヤ!」息子は昔から学校に足が向かない日がある。最近はそこまで頻繁ではないが、ときどきバッテリーが切れたように動かなくなるときがある。そうかと思えば、フルスロット

          感受性が強いって結局どういうことなの? 〜13歳の息子と話したこと〜

          自分が過去に書いた「読み返したくない文章」

          過去に書いた文章を「読み返したくない」と思うことが、わたしにはよくある。 けっして、自分が書いたすべての文章を読みたくないわけではない。「あ~なんだっけ!昔こんな記事書いたよな~!」と、懐かしく愛おしい気持ちになって、わざわざ探してまで読み返すものもある。 でも、すぐそこの本棚にあるのに「なんとなく嫌~な感覚がして、読み返したい気持ちにならない。正直、見たくない」というものがある。 この違いは何なのかというと、「書いているときの感情や感覚」なんじゃないかなと思う。 読

          自分が過去に書いた「読み返したくない文章」