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英語は<動詞>が鍵になる、という気づき。

安西洋之さんの昨日の記事を、またまたワクワクしながら拝読しました。

「いったい、コンテクストが分かるから言葉の意味が分かるとは、どういうシーンにおいて絶対条件であり、どういうシーンにおいてどうでもいいことなのか」

大きく首肯しながら、思わず唸ってしまいました。
そうだ、そこが謎なんだよなあ、と。(笑)

それから、もうひとつ……。

<動詞>というキーワードに、「確か Oxford English Dictionary では、英単語の半分は名詞で、4分の1が形容詞で、7分の1が動詞だったはず……」と考えたあと、しばらくして「あっ!」となりました。

(参考:https://www.lexico.com/explore/how-many-words-are-there-in-the-english-language

じつはわたしは、<大学入試用>として有名な英単語帳を数種類分データベース化していて、全部の語源をひとつずつ(大まかに)分解しております。

全2,697個の英単語のうち、名詞が1,122個(42%)で、動詞が917個(34%)、形容詞が584個(21%)、これだけで全体の97%です。残りの3%は、ほぼ副詞。

英語の品詞は8つありますが、英語の語彙体系は、じつは名詞と動詞と形容詞が9割で、最も多いのは名詞なのです。

211007_01_名詞動詞形容詞副詞

そんなわけで、当初は英語では<名詞>が鍵になるのでは、とずっと思い込んでいたのです。ところが調べてみると、名詞も形容詞も、じつはラテン語やギリシア語の<動詞>が元になっている派生語が実に多いのです。

英語やラテン語、ギリシア語は、語尾を変えれば品詞が変わる。そしてほとんどの名詞や形容詞は、もともと動詞、つまり<動き>なのですよね。

それを西洋の人たちはわかっている。でも、明治あたりの翻訳語を使っている私たちには、それが具体的にイメージできない。そういうことなのではないでしょうか。

まあ、そもそも名詞って、ヒト・モノ・コトの名前なわけで、意外と動きの主体や状態、結果を表すものの方が多いのですよね。形容詞も同様です。

だから、<動詞>が鍵になる、というのは本当だなあ、と改めて思いました!

「イタリア人も英国人も動詞として掴んでいる。でも日本語の世界では、やや遠回りした硬い漢字で理解しないといけないわけで、『これは極めて不利だなあ』」

この安西さんのコメントは、ほんとうにその通りだと思います。

ところで、かつて故・外山滋比古先生はご著書の中で、[英語の]名詞構文を[日本語の]動詞構文に変える」ということを述べられていました。

“A clear recognition of conditions as they exist proves essential to the cooperation of both the parties.“

という英文を訳す時、

「現状の明確な認識が双方の協力にとって不可欠である」

と訳しがちなところを、

「あるがままの状態をはっきり認めることが、双方が協力するのに不可欠である」

とすれば自然になるのではないか、というのです。

これを読んだ時、なるほどなあ、と思ったのです。なぜなら、おそらく英国人には、頭の中でそのようにありありとイメージできているのだろうなあ、と思ったからです。

でもこれ、言葉の経済原則(言葉は短い方が好まれる)には反してしまいますね。

とはいえ……
たとえば安西さんの記事の中で取り上げられていた expand も minimize も、今でこそごく普通の英語として認識されていますが、どちらもラテン語起源の動詞なのですから──前者は15世紀以降の中期英語、後者は19世紀頃につくられた比較的新しい英単語のようです──もしかすると初めの頃は「なんだそれ?」と思う英語圏の方もいらっしゃったのかも、なんて思います。なんと言っても、かつてイギリスでは、ギリシア・ラテン語起源の言葉を「インク壺言葉(inkhorn term)」なんて揶揄する時代もあったのだそうですから。(笑)

私たちが明治期の言葉を「なんだかなあ」と思っているのと、もしかするとあまり大差ないのかもしれません。

語源がわかれば、日本人でも、その辺りがうまくイメージできるようになるのですが……。それはわたしのお役目だと思っているので、これからも精進いたします。

日々是精進、無知の知。

感謝。今日もイイ日に。

◆参考図書

◆最終更新
2022年03月26日(土) 5:05 PM

※記事は、ときどき推敲します。一期一会をお楽しみいただければ幸いです。

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