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流転の宴 (るてんのうたげ)

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身近な自然と日々の生活で感じたことを記しています。ふとした合間にご覧いただければ幸いです。
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#北海道

森のロッジ

森のロッジ

ダイヤモンドダストが
キラキラと流れ
連なる微かな響きは
オレンジ色に灯る
ロッジのつららが
そっとハグしあう音

日勝峠

日勝峠

あの日の峠では
多くのトラックが
ペケレベツ岳を横切るときに
トナカイ橇のようにそっと飛ぶらしい

クリスマスの夜は
歓喜の歌に満ちた清水の町から
峠を超える照灯が
稜線に連なり見える

ゆうらっぷ川

ゆうらっぷ川

ねこやなぎが芽ぶき
瀬にたゆとう小石の
かすかにふれるめざめの囁き

夏に
ゆたかな藻をはみ
早瀬に躍る

秋に
新たな命をそっと託し
抗う力もなく静かに流れに落ちる

高く見えるすじ雲は
紛れもなく
遠い記憶に広がるゆうらっぷの空

ナイタイ高原

ナイタイ高原

広がり続く山すそを
風が吹き渡り
霧が駆け下る

冷涼な大気に
牛は点々として紛れ
斜面の草を食む

美瑛

美瑛

刷毛引きされた畑が
波打つ丘の連なり

斜面は大きなうねり
牧草ロールが漂い浮かぶ

陽が落ち
丘陵の空高く
星々が瞬き拡がる

白神沖

白神沖

漁り火が揺れ
うねりを照らす

巻き上げられた烏賊は
飛沫を上げ
甲板で身を捩る

その流線体に浮かぶ星々の集散
投象は激しく変化し
太古の記憶を次々と

鹿鳴春飯店

鹿鳴春飯店

朱色の円卓に
冷えた桃の産毛が濡れている

旗袍の給仕は
陽炎が渦巻く大陸の巫女

蜃気楼に揺れる落日が
小窓を透し
その横顔に朱を放つ

初夏

初夏

高く蹴り出し漕ぐブランコ
風が耳元でなにごとか囁く

迫る青空にバラが香り立ち
身を乗り出せば
ノームの庭の初夏が

例大祭

例大祭

どんどこ太鼓が響き
風を呼ぶ
囃子の音が賑やかに
裸電球がでこぼこ揺れる

カルメ焼きや綿飴の出店の境内を
親子がそぞろ歩き
木立がざわめく

犬は頻りに吠え
猫は無関心に石堂の陰を忍び足

父は少し酔い
母は微笑み声をかけるが
何事か思い出せず
潮騒だけが遠くで

飛翔

飛翔

機影が閃き
一直線に天空を遙か

青空に溶解する金色の極点
星座は陰に休み
こだまする鳥の声

回廊

回廊

大岩をくぐると
背後は苔の壁

狭隘な砂地を踏みしめ
風の道を巡る
わずかに壁を這い伝う水滴は
まだ止まない驟雨

明るみを奥に回廊は続く

支笏湖

支笏湖

夜に木々は湖底で眠る

朝霧が吹き払われ
樹林は青空の底で
さざ波の音を聞いている

八幡坂

八幡坂

ワインの赤い滴りが
石畳の坂を静かに流れ
陽炎に微かに香り漂う
旧市街の昼下がり

冬雷

冬雷

夜空に玉随の雪雲が軋み

切り火を放す


閃光は四方に散り

青く凍えて原野に舞い降りる