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牧野 一志
2021年8月19日 14:11
ゆるりと横たえた上体が新緑の湖面に映る青天を仰ぐ横顔は幾千年と降臨を待ち続ける晴れやかな佳人のまどろみ
貨車が過ぎると暗闇に鉄路が浮かび甲虫の羽音が飛び交う雷鳴が上空を駆け穂波が沸き立つ深夜滲む汗の奥で怒涛の予感が続く
2021年8月16日 11:26
薄紫の空が湖面にティアラを映しとりどりに輝きを放す戴冠式を待つ玉座のように羊蹄山が凛として
2021年8月14日 14:45
子らが帰り校庭は土曜の昼下がり柔らかい日差しの青空に桜の花びらが追いかけっこで舞い遊ぶ
2021年8月8日 16:51
浦里の春の日は浅く港は早朝の作業を終えしばしの休息石割桜の花びらが時折の風に舞い上がり眠りのままの噴石に降り積もる
2021年8月5日 09:23
残雪の山並みを背に千年の森は誰憩うことを待つのか 青空を広げ山稜の切っ先からうす雲がたなび続く
2021年8月4日 08:40
雪解けの風が 耕地を吹き抜ける微かに温もる日差しのなかでニーソックスの少女のように白樺並木が終日、さざめきあっている
2021年8月3日 12:24
浜風が止み朝霧が螺旋に上昇を続ける陽が昇ると鳶が翼を広げ青空の淵を巡る俯瞰するその褐色の虹彩に金色の光を放ち石狩川が蛇行する
2021年8月2日 16:14
大陸の砂塵が海を渡り石狩の残雪に舞い降りる微かに積もった黄砂から封印された西方の記憶がうらうらと解き放たれていく
2021年8月2日 16:13
陽が雲間から差し込み海峡の波が沸き立つ岩を叩く波を避け女は海苔を摘むみぞれが頬を打ち凍えた手をかざせば潮にせり上がる5t船男はうねる波の峰を越え早春に海路を開く