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流転の宴 (るてんのうたげ)

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身近な自然と日々の生活で感じたことを記しています。ふとした合間にご覧いただければ幸いです。
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2021年8月の記事一覧

大沼・駒ケ岳

大沼・駒ケ岳

ゆるりと横たえた上体が
新緑の湖面に映る

青天を仰ぐ横顔は
幾千年と
降臨を待ち続ける
晴れやかな佳人のまどろみ

遠雷

遠雷

貨車が過ぎると
暗闇に鉄路が浮かび
甲虫の羽音が飛び交う

雷鳴が上空を駆け
穂波が沸き立つ

深夜
滲む汗の奥で
怒涛の予感が続く

洞爺湖

洞爺湖

薄紫の空が湖面にティアラを映し
とりどりに輝きを放す

戴冠式を待つ玉座のように
羊蹄山が凛として

桜

子らが帰り
校庭は土曜の昼下がり

柔らかい日差しの青空に
桜の花びらが
追いかけっこで舞い遊ぶ

有珠善光寺

有珠善光寺

浦里の春の日は浅く
港は早朝の作業を終え
しばしの休息

石割桜の花びらが
時折の風に舞い上がり
眠りのままの噴石に
降り積もる

千年の森

千年の森

残雪の山並みを背に
千年の森は
誰憩うことを待つのか

青空を広げ
山稜の切っ先から
うす雲がたなび続く

白樺並木

白樺並木

雪解けの風が
耕地を吹き抜ける

微かに温もる日差しのなかで
ニーソックスの少女のように
白樺並木が
終日、さざめきあっている

石狩川

石狩川

浜風が止み
朝霧が螺旋に上昇を続ける

陽が昇ると
鳶が翼を広げ
青空の淵を巡る

俯瞰するその褐色の虹彩に
金色の光を放ち
石狩川が蛇行する

早春

早春

大陸の砂塵が
海を渡り
石狩の残雪に舞い降りる

微かに積もった黄砂から
封印された西方の記憶が
うらうらと解き放たれていく

初漁

初漁

陽が雲間から差し込み
海峡の波が沸き立つ

岩を叩く波を避け
女は海苔を摘む

みぞれが頬を打ち
凍えた手をかざせば
潮にせり上がる5t船

男は
うねる波の峰を越え
早春に海路を開く