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帰りたくない夜がある

家には帰りたくなくて、誰かに会いたくてたまらなくて。でもどこに行きたいのかも、誰に会いたいのかもわからないときがある。

そういう日は大抵、仕事が早く終わった日の夜で、なんとなく駅前のビルやアトレを覗いてみるのだけれど、だからと言って何かが満たされることはない。

目についたおしゃれなカフェでケーキを食べようが、どんなに胸が高鳴るワンピースに出会おうが、空っぽな夜は、それ以外の何物にもなりはしない。



そんな日には本当は、海や飛行機を眺めるために空港に行きたいのだと思う。たぶんね。
でも明日の仕事とか、Suicaの残高とか、疲れて寝たい気持ちとかに縛られて、結局どこにも行けやしないのだ。

わたしを縛る色んなことが、回り回ってわたしの自由を後押ししてくれることも知っているから、いつも最後はそれに従う日々。



わたしが生きる上では重要な「安定」とか「平穏」とか、もし捨てたとしたら、楽しいのかな、苦しいのかな。

一晩中さざなみの音に耳を傾ける時間や、静まり返った空港で飛び立つ飛行機を見送る些細な幸せは、「安定」とか「平穏」とは違うのだろうか。



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