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小樽は長崎とウラジオストクに似ている
この時期の北海道は閑散期。雪はなく、道には凍結予防の砂だけが残り、一番汚い時期だそう。
セイコーマートには北海道限定のキッチンタオルがあった。ご婦人のおうちには北海道のティッシュもあった。どうやら工場が北海道にあり、雪で買い物に出にくい道民のために大容量の紙製品を出しているらしい。
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小樽の気温は9度。東京の初夏のような気候とのギャップがすごいけども、とはいえ春なので構えていたほどの寒さはない。問題は霧雨で、張り切って散歩していたら歩いているうちに全身がしっとりしてしまった。おとなしく途中でバスに乗ったが、なぜわたしはこの気候で散歩をしようと思ったのか。
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室内に逃げ込むべく小樽市総合博物館へ。小樽のあたりは北海道の鉄道の起源。明治に入ってから開拓使が北海道に送られ、石炭運搬のために鉄道が作られた。最盛期には北海道に私鉄が50数社もあったらしい。
鉄道開拓は自然との戦いで、「人の姿を覆うほどの蚊」と説明がありぞっとする。熊や狼以上に蚊やアブに悩まされていたそう。絶対やりたくない。
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石炭を効率的に船に積み込むために作られた手宮高架桟橋は、橋の上の石炭車から下に停泊する船に石炭を直接落とし込めるようになっていて、1日最高4700トンもの石炭が運ばれたとな。
石炭を船に下ろした車両は連結を外し、自重で元の場所に戻るように工夫されていたらしい。本当に石炭のためだけの車両と橋で、賢い人たちの創意工夫がすごい。
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北海道の鉄道は雪との戦いでもあり、「キマロキ」という最強除雪車編成が紹介されていた。蒸気機関車、雪かき車、ロータリー車、蒸気機関車の編成で、雪かき車が雪をかき集め、ロータリー車がそれを吹き飛ばす。カッコいい。
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大正14年に発行された鉄道すごろくも飾ってあった。今でいう桃鉄。
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展示の説明書きは日本語と英語とロシア語で、こんなところにも北海道を感じる。
小樽の街並みも、どことなくウラジオストクに似ている。距離的にも近いし、何かしら影響を受けているのだろうか。
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ふと懐かしい匂いがするなと思ったら、しっとりした後乾いたマフラーがスキー宿の乾燥室の匂いになっていた。東京では感じたことがない雪国の匂い。
小樽名物のあんかけ焼きそばを食べる。食べても食べても減らない長崎の皿うどんと違って、食べた分だけなくなる。
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まだ余裕があったので近くのかまぼこ屋でパンロールを食べる。パンに魚のすり身を挟んで揚げたもので、長崎にはパンにえびのすり身を挟んで揚げたハトシという食べものがある。
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さらにぱんじゅうも食べる。パンが高価だった頃に気軽に食べられるおやつとして人気を博したらしい。
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博物館の別館へ。小樽は江戸時代後半からニシン漁で栄え、明治時代以降は鉄道と港湾整備によって発展した土地。1865年に人口1000人ほどだった小樽は鉄道開通により約40年後の1907年には人口9万人を超えたとあった。小樽がかつて北海道の経済の中心地だったとはつゆ知らず。
北前船の展示もあった。沖縄では取れない昆布を沖縄の人がたくさん食べるようになったのは、富山の薬売りが北前船から仕入れた昆布と沖縄の漢方薬を交換していたからだと知って以来、北前船のことが気になっていた。
期待したほどの情報量はなかったけど、北前船が春の大阪から西側の各地を経由して北海道に到着するまでに50〜60日かかっていたことがわかった。積荷は各地で売ったり仕入れたり。
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ぶん公という小樽のアイドル犬の展示もあった。火災が多かった小樽で、焼け跡で鳴いていた犬を消防士のおじさんたちが拾って育てた結果、ぶん公はおじさんたちの真似をするようになり、火災現場でやじうまを追い払ったりホースのもつれを直したりと大活躍。小樽市民のアイドルとなったえらい犬。
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ひと通り博物館を見たけど、開拓使が送られた明治以降の話が主で、アイヌの話はほとんどなかった。
わかったのは小樽にはかつてアイヌの人たちが住んでいて「オタルナイ」という名前だったこと、開拓使が送られる以前にアイヌ文化、さらにその前にオホーツク文化なるものがあるらしいことの2つ。
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内地から人が入ってきたことで日本に組み込まれた点で沖縄と似ているけれども、どうやら中身は全然違う。沖縄に今なお琉球時代の文化が根付いているのに対し、北海道にアイヌ文化はほとんど感じない。どういう違いがあるのだろうか。
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ご婦人が明日からオーストリア人が泊まりに来ると言っていたのでシミュレーションすべくドゥーユーライクビアー?などと呟きながら人のいない運河沿いを歩いていたら、植木だと思っていたものが大道芸人だった。盗み聞きされた気持ちなのだか、腹を立てるのは理不尽だろうか。
休憩がてら小樽ビールを飲み、そのあと飲みに行くつもりでいたけれど、寒いしお腹も空かないのでお風呂へ行く。寒い外からの熱めのサウナ、冷ための水風呂と入り、しっかり貧血を起こした。わたしは寒暖差に弱い。
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小樽と長崎は似ているとご婦人と話す。どちらも食べ物に共通点があり、かつての貿易の拠点で、住民は知らない人に対してオープン。坂も多い。
そういえば神戸なんかも坂が多いイメージがある。港町の地形の特徴なのかしらと言ったら「船を停められるだけの水深があるってことはその分陸上が迫り上がるから坂が多いのでは」とご婦人が名推理を披露してくださった。ご婦人は水産学科の出身である。
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この辺りではニシンの白子が売っているらしい。ニシンの白子と数の子を一緒に盛り合わせたら生命の息吹的なメッセージ性の高い料理になりますねと軽口を叩くもご婦人はピンときていない。よくよく聞いたらご婦人は白子が精巣だと知らなかった。繰り返すが、ご婦人は水産学科の出身である。
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