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大人になって気づいた、悟飯の不憫さ

久々にドラゴンボールを読み返した。もしかすると、社会人になって初めてかもしれない。子どもの頃に何度も読んだドラゴンボールは、今読んでもやっぱり面白い。

ただ、35歳の大人になった私は、悟飯の不憫さが気になって仕方がなかった。

4歳、たった一人荒野に放置

悟飯の初登場は、4歳。「大きくなったら学者さんになりたい」という、戦いからはかけ離れたおとなしい印象だった。

そんな悟飯は、父・悟空に連れられカメハウスに遊びに行ったところ、父の兄と名乗る謎の男、ラディッツに攫われ、気絶している間に父を殺される。35歳になると悟飯の「おとうさんをいじめるなー!」で泣いてしまう。

気絶から目が覚めると、突然の岩だらけの荒野。「ここで半年間、まずは一人で生きてみろ」とピッコロに放置され、まずいリンゴをかじりながら「中華まんが食べたいよ〜」とべそをかく悟飯。35歳はここでも泣いた。

見事生き抜いたのちの半年間、今度はピッコロからボコボコにしごかれるのだけど、つまり悟飯は1年間を荒野で過ごしたわけで、おそらく5歳の誕生日も荒野で迎えたということになる。一人か、もしくはピッコロと二人で……。

そんな過酷な1年を経て5歳になった悟飯は、地球の命運を左右するサイヤ人との戦いに参戦。5歳って、幼稚園の年中さん……?パンダ組とかさくら組とかのお子さんが、戦闘民族サイヤ人と生死をかけて戦う……?

しかも、この戦いは悟飯にとって初めての実践。ナッパを攻撃できないことをピッコロから責められ、恩師ピッコロを目の前で殺され、渾身の魔貫光殺砲は通用せず、最終的には大猿化し、尻尾を切られ、全裸で気絶。この時点で常人の一生分のしんどさを味わっているのではなかろうか。

なお、悟飯は母からスパルタ教育を受けており、4歳の時点で塾通いをしている。この点も大人になった今の私はひっかかってしまう。

5歳、首の骨を折られて死にかける

その後のナメック星への渡航は自分の希望とは言え、現地では予想外にフリーザ一味と遭遇。善良なナメック星人が惨殺される現場を目の当たりにする。

ブチギレてデンデの救出に成功するけど、悟飯は優しいから、あんな悲惨な現場に立ち会ったショックも大きかったのではなかろうか。もしかしたら、ナメック星人が殺される悪夢を見た夜があったのかもしれない。

さらに悟飯自身も、ギニュー特戦隊のリクームに首の骨を折られて死にかける。リクームにボコボコにされている最中、悟飯がつぶやく「お……おとう…さん……」で35歳はボロボロ泣いた。

ナメック星編のクライマックス、フリーザ戦ではクリリンが目の前で殺される。ずっと一緒に行動していた優しいお父さんの友達が木っ端微塵になるって、どんな気持ちなんだろう……。壮絶を通り越して、重度のトラウマで廃人になってもおかしくない。

10歳、自分のせいで父が死ぬ

地球に戻ってからは束の間の安寧。父が修行したいという理由で家に帰ってこないのはどうなんだ?というのはそれぞれ家庭の方針があるからさておき、ようやく悟飯が勉強に専念できる環境になって私はうれしい。

でも、それはわずか2年弱のこと。今度は人造人間との戦いが待ち受けている。3年間、また修行の日々。悟飯は学者さんになりたいのに……。

セルゲームでは最終的に、父から一方的に地球の命運を背負わされ、自分のせいで仲間がセルジュニアにボコボコにされ、ようやく本当の力を発揮できたものの、調子に乗ったせいで父が死亡。

ほんの少し、調子に乗ることすら許されない、悟飯。自分が原因で父が死ぬって、こんな最悪なことがあるだろうか。

ただ、この件については悟空があまりにも悟飯に対してひどいから、個人的にはそんな気にしなくていいんじゃないかと思う。地球の命運を息子に無断で背負わせるって、いくら悟空が能天気でもクソすぎるだろ。

※セルゲーム時点での悟飯の年齢は推定10歳だが、精神と時の部屋で1年過ごしているから、肉体的には11歳と考えられる

16歳、超人的な強さがアダとなる

ど田舎で暮らしていた悟飯は、高校生になって初めて学校に通い始める。イカれた強さの仲間たちとばかり接していた悟飯。異様な身体能力と社会性のなさから、学校では少し浮いた存在に……。

それでもどうにか馴染もうと頑張っていたのに、天下一武道会で正体がバレ、しかも魔人ブウ復活のためのエネルギーを吸われるダシにされ……。

宇宙船でのダーブラとの戦いでは「修行怠けすぎ」と悟空とベジータから呆れられ、学校にも、戦闘狂のサイヤ人の中にも居場所がない悟飯。

死にかけたところをキビトに救われ、界王神界で潜在能力を引き出され、めちゃくちゃ強くなるも、これといった見せ場はなし。

だからこそ、最終話で悟飯が念願の学者になり、ビーデルと結婚し、子どもにも恵まれたことを本当に、本当にうれしく思う。

見習うべきは悟飯

「よく健やかに、真面目なまま、人生に絶望せず、真っ直ぐに生きてこられたな……」

ドラゴンボールを読み終えて、悟飯に対してそんな想いを抱いた。

そもそも悟飯は、地球人とサイヤ人のハーフだ。戦闘大好き!誰よりも強くなりたい!というサイヤ人の中で、悟飯は戦いを好まない変人であり、気質としては地球人の色が濃い。

でも、身体能力は完全にサイヤ人。なんなら潜在能力は悟空以上と、気質と身体能力のねじれから、どちらのコミュニティーからもやや浮いてしまっている。

悟空は純粋なサイヤ人で社会性皆無、「オラはオラ!」な人だから、あっけらかんとしていてもまぁそうだよね〜という感じだけど、悟飯はハーフで、地球で生まれ育って、望まずして戦いに巻き込まれていった面が強いからこそ、この小根のまっすぐさは奇跡だと思う。

われわれが見習うべきは悟空の明るさではなく、ままならない人生を腐らず生き抜いた悟飯に他ならない。

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