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ピチピチのTシャツ

20代の頃、人生で一番痩せていた時期に着ていた、ピチピチのTシャツをまだ持っている。実用ではなく、若かりし日の記念に。

これまでもたまに着てみては「あの頃の自分との体格差に絶望する」という自虐の遊びをしていたのだけど、今はここ数年で最も痩せている。2年に及ぶ筋トレの結果、自分比で割と体も良い感じ。

なので、久しぶりにピチピチのTシャツを着てみた。外出の予定がなかったので、なんと1日中の着用。

まず思ったのは、シンプルにキツい。まずは物理的な方のやつで、締め付けがすごい。ゆとりが全然ない。あまりにもピッタリしていて、体のラインが余すことなく拾われる。こんなにもごまかせない服があっていいのか。

ガッツリ体のラインが出る精神的な方のキツさも当然ある。20代の私は、本当にこの服を着ていたのだろうか。もはやどんな感じだったのか思い出せないけど、当時の自分とさほど体重計上の数字は変わらないはずなのに、明らかに「何かが違う」ということだけはわかる。

シンプルなTシャツだから流行は関係ないと思うけど、多分20代の子向けに作られた服なのだろう。鏡に映る35歳の自分を直視するのはつらいものがある。

そして、食後の絶望感。飲み食いすれば腹は出る。当たり前の事実から、目を背ける隙がない。あまりにもスパルタで、ちっとも優しさがない。飴がどこにも見当たらない。

今もビールを飲みながらこの文章を書いていて、Tシャツは締め付けをどんどん増している。もはや伸縮性が憎い。まとわりつかないでくれ。

酒のノリもあってピチピチのまま散歩にも行ってみたけど、姿勢に気をつけるというか、姿勢を崩すと途端に粗が出るから、背筋を伸ばす以外の選択肢がない。近所の散歩には不釣り合いな緊張感。自然と人通りの少ない道を選んだ結果、新しいお店を発見したのはうれしいけれども。

家に帰ってからも、まだピチピチのまま、今度はウイスキーを飲んでいる。腹が膨れる炭酸を避けたのはピチピチからの戒めか。

なぜこんなにもTシャツに行動を左右されなければならぬのか。いい加減腹立たしくなってピチピチを脱いでびっくり。なんて快適なのでしょう。

ピチピチをストレスなく着こなせるスタイルでピチピチを着る憧れがあったけど、それなりに自分で納得がいく体型で、行動を制限されない服装で暮らす方が楽しそう。今の私はそんな感じ。

ということで、ピチピチはゴミ箱へ。長い間お世話になりました。

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