愛を知る時は今
だらだらと甘い香りに誘われて、
躊躇なく重なる唇に僕らは埋まっていた。
8月某日。
それはとても暑い日だった。
ポニーテールに揺れるピアスの彼女。
RPGで言えば、MPを大量消費するであろう言葉。僕はその日彼女に初めて使った。
「結婚してください」
飾りのない、気持ちが先走る。
普段あまり感じない間がとてつもなく長く感じる。
彼女は微笑みが溢れない程度のギリギリまで口角を上げて言った。
「最初で最後の結婚にしてください」
包み込み合う身体たちはまるでそれを求めていたかのように吸い付く。
その日家に着けば彼女は初めて、僕の名前を呼んだ。
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